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第32話 コカーコッコッコッコ


「最近近くの岩山に一体のコカトリスが住み着いて、危険な状況にあります。当初は本体討伐依頼が出ていましたが、危険な為に誰もその依頼を受けずにそのまま放置されていました。このまま放置が続きますと、玉子が孵って個体数が増えて手が付けられなくなります。そこで討伐が無理でもせめて玉子を奪取して現状を維持し、その間にコカトリスに挑む強力なパーティーが来るのを待つ事になったのです」


 とは、依頼を受けた時の受付のお姉さんの説明である。


「本来なら、あなたたちDランクパーティーに依頼するのは酷なんですが……」


 もうそんな悠長な事も言っていられないという事ね。

 てっきりどこかの金持ちがコカトリスの玉子を取ってくる依頼を出して、貴重な玉子焼きに舌鼓を打つというグルメ的なお話かと思ってたのに。


「蓋を開けたら町の危機に繋がるお話だったね。僕たちの任務は重いよ、リンは何もかもお見通しだったんだね」


 いえ、それどころかどうして今、岩山にいるのかすら理解できていないんですけど。


 そうである、私たちパーティーは現在コカトリスが住み着いている岩山に侵入しているのだ。

 玉子料理に思いを馳せていたら決まっていたのだ、何故だ。


「情報ではコカトリスは頂上にいて、玉子を温めているらしいよ。姿を見られたらスキルを撃たれて石にされるから、岩に身を隠しながら進もうと思う」


 岩から岩へ、こそこそこそこそと進む我がモブパーティー。


 もしかしたら彼らのモブ(ぢから)をもってすれば、岩に紛れて気がつかれないのではないのか?

 という思いもしないでもないけれど、もしもの事があったら取り返しがつかない。


 モブ男君たち三人が石にされるなんてとんでも無い事だ。だってそんな事になったら、私一人で三人の石を持ち帰れないじゃないか。


「分解すればリンでも持てるよきっと」


 なるほどフィギュアちゃん頭いいって怖いわ!


「おやこれは珍しい形の岩が、これは是非ノートに記録しないといけませんね」

「もう、そんな岩の形なんかどうでもいいでしょうメガネ君。後にしてよ」


「いえでもほら、丸ごとイノシシの形をした岩なんて珍しいじゃないですか」


 ひいいい! それコカトリスの犠牲者ぁ!

 よく見たらあちこちに鳥の石だのネズミの石だのが落ちているぅ!


「落ち着いてリン、この向こうにコカトリスがいるみたいだ、ほら」


『コカーコッコッコッコ』


 ホンドだゴガドリズの声がぎこえるうう。

 でも迂闊に確認できない。


「この位置からクロスボウや魔法攻撃できないの?」

「無理だよ、矢だろうが魔法だろうが、相手に狙いをつけている時が一番無防備なんだよ、一瞬にして石にされる。それに……」


「それに?」

「そもそも魔法攻撃できるメンバーがうちにはいない」


 そうでした。

 どの道魔法をかけようと相手を見た時点で石になってちゃ、魔法使いなんかいてもいなくても同じだわ。


「ふふ、ついに私の出番がきましたね」(メガネくいっ)


 メガネ君がクロスボウを取り出してメガネをキランキラン光らせている。


「ねえ聞いてたメガネ君。あなたのクロスボウは悪手なんだってば」


 しかしメガネ君はドヤ顔である。


「私はメガネ師ですから」


 メガネ師関係あるのかな!


「これですよこれ、私のこの透視メガネを持ってすれば、この岩を通してコカトリスの姿が見えるのです。当然向こうからはこちらは見えません」


 すっげええええ! ダンジョンで貰ったそのメガネ、ただのアホメガネだと思ってたけど、考えて見たら凄いマジックアイテムじゃないの!

 玉子どころかコカトリス本体をキメられるじゃない!


「これで岩の後ろから狙撃すればいいのです」


 そう言いながらメガネ君がクロスボウの矢を発射。当然矢は岩にブチ当たって折れた。


 直接照準で撃ってどうすんのよ! 見えて無くてもそこに岩があるのよ!

 どんなマジックアイテムでも使う人間がアホだと、単なるアホアイテムにしかならないわね!


「リンさん」

「な、何よ」


 メガネ君がじっと私を見つめている、ちょっと言い過ぎたかな。

 なによ悪かったわよ、それともこんな所で告白? いくら私が魅力的だといっても、時と場所を考えてよね。


「右の奥歯が虫歯になりかけてますね」

「私の骨を見るのやめてもらえるかな!」


 半泣きで奥歯に治癒魔法をかけた。ある意味酷くなる前に助かったともいえるけど、感謝しないからね。


「早く岩の横からクロスボウだけ出して、コカトリスを狙っちゃってよ。さっさと倒して帰ろう」


「無理ですね、最後の一本が折れました」(メガネくいっ)

「補充しとけよおおおおお」


 メガネ君を揺さぶる私の肩をモブ男君が押さえる。


「まあまあリン、どーせその作戦は無理だよ。どうしても手がコカトリスから見えてしまうから、石にされる」

「もうどうしようもないブヒ、どうするブヒ? このままここに待機して、コカトリスがどこかに行くのを待つブヒか?」


「そんなの、あいつが動くかどうかすらわからないじゃない。待つのは却下だけど、一応やりようがあるわよ」


 私だってたまには作戦を考えたっていいはずだ。

 こんなところで何時間も何日も玉子を狙って待機なんて、絶対にお断りだ。さっさと帰って今日は玉子料理を食べるのだ。私のお腹はもう玉子になっているのだ。


「メガネ君、コカトリスまでの間にいくつか岩があるよね」

「ええ、大きいのから小さいのまで、その岩から岩に身を隠せば近づけそうですね」


 ふふん、私が普段伊達に泥棒スタイルでいたと思わないでよね。ここで活躍する為にほっかむりがあったのよ!

 ドヤ顔で花柄の手ぬぐいを頭に巻く、単なる偶然だったのだが細かい事はどうでもいいのだ。


「リン無茶だよ、ここは僕が行くよ」

「身体が大きいあなたたちじゃ、小さな岩には隠れられないでしょ。大丈夫、私は逃げ足だけは早いんだから」


 うん、あんまり自慢にならないねこれ。


 私の作戦、うまくいきますように!


「リンの泥棒スキルがいよいよ炸裂するね!」


 いやそんなスキル持ってねーわよフィギュアちゃん。


 次回 「あらやだ、コカトリスがコカってしまったわ」


 リン、腰が抜ける

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