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第3話 あなたたち、その内見てなさいよ!


 頭のネジが飛んでる王侯貴族様とは金輪際近づかないでおこう、どーせ名前も覚えてないし。

 私はそう固く心に誓いながら冒険者ギルドの扉を開けた。


 なんだかギルド内にいた冒険者たちの視線が突き刺さる。無言の圧力である。

 冒険者ギルド内は食堂も併設されているので、そこそこな数の冒険者が普段から出入りしているのだ。


 もう早くも勇者パーティーをクビになった事が知れ渡っているのか……さすが情報が命の冒険者だけはあるかな。

 酔っ払いとボンクラ共の集まりかと思ってたけど、意外としっかりしてるのか。少し見直したわよ。


 えーとどれどれ、薬草むしりの依頼は、と。


 視線を無視して掲示板を見て仕事を探していると、近くの冒険者たちが『ヒソヒソヒソヒソ』と私を見て陰で何かを言っている。


 無視に努めたが何人かは私を凝視しているのだ、そんなに見つめられて穴でも開いたらどうしてくれる気なんだ。


 あーうっとうしい!


「ヒソヒソとうるさいな! どーせ勇者パーティーをクビになりましたよ、ええ、詰まんでポいされたわよ! さあ、あざ笑うがいい!」


「ち、違うんだ。いや、スカートの裾がリュックに引っかかってパンツが……」

「ひゃ」


「俺たちオッサンが指摘するとセクハラになるだろ? なんというか、ご馳走様でした」

「ゴチになりました」

「ありがとうございました」


 どいつもこいつも満面の笑みでお礼言いやがって。

 うわああああ、それがセクハラだってのよ!


「おいこらオッサン、人のパンツ拝んどいてご馳走様だけで済ませる気じゃないでしょうね。ご馳走様と言える良い目に遭ったんなら、私にもご馳走様をよこしなさいよ」

「は? え? はい」





「ところであんた今、勇者パーティーをクビになったって言ったか?」


 ちくしょう、自分で墓穴掘ったー。

 でも今はそれどころじゃない、冒険者のオッサンから仕留めたソーセージをお腹に放り込む作業で忙しいのだ。


 ソーセージより優先されるものが、この世の中にあるだろうか。なんせ十数時間ぶりのご飯なのである。


「ふー、食べたー。ご馳走様でした!」


「人はこんなに幸せになれるのかってくらいの満面の笑みだな」

「俺、ソーセージを奢っただけなのに世界を救った気分になったわ」


 うるさいなあ、なんならもう一回世界を救わせてあげてもよくてよ?

 冒険者のオッサンがやれやれといった感じで腰に手を当てる。


「いやー、それにしても勇者パーティーをクビになったかー、やっぱりなー」


 やっぱりなーって何よ。

 そのやっぱりなーは私が一番思ってる事なんだけど。


「ちくしょう、あと一月はもつと思ったんだけどなあ、十ゴールド俺の負けかー」

「はい、まいどありー」


「ほらよ、こっちも十ゴールドの負けだ」

「まいどありー」


 冒険者たちはお金のやり取りを始めた。

 おいこらそこの抜け作ども、人の人生で賭け事やらないでもらえますかね。その半分よこしなさいよ。


「まあ、あなたたちが私がフリーになるのを、今か今かと待ち侘びた気持ちもわからないではないわね」

「いや全く待ち侘びてないけど」


「さあ、どこでもいいわよ、私をパーティーに誘いなさいな。こんな美少女の加入権を得られるなんて、ついてるわよあなたたち」


 皆が私から視線を外して席に付いた。いそいそと食べかけていた食事を再開し始める。

 何故こちらを見ない。見ろ、私を見ろ。


「ほ、ほら遠慮しなくていいから。ねえ、何でそんな気の毒そうな顔で俯いてるの?」


 一人の冒険者をゆっさゆっさ揺らしても反応してくれない。もしかしたら(しかばね)かもしれない。


「あ、あなたでもいい。三人パーティーはきついから増員したいって言ってたじゃない」


「あー俺、酔っ払っちゃったから、よくわかんなーい」

「あんたが飲んでるの水じゃないのよ!」


 うぐぐ、水で酔えるとかなんて羨ましい。酒代が浮くじゃないか。

 遠くでチラっと私を見た冒険者がいたのでズカズカとそこまで突進する。


「うわしまった、目があっちまった」

「そこのあなたたち! 私を仲間にしてみない?」


「いやー俺たちのパーティー、ハゲしか入団できないんだ。あんたの綺麗な金髪じゃ無理だ、いやー残念だなあ」

「え? 確かにハゲ率は高いけど、だってこの人ハゲじゃないじゃない」


 私が比較的フサのパーティーメンバーを指差すと、全員がそのメンバーの髪の毛を毟り取った。


「こいつカツラだったんだよ」

「イデデデデ、そ、そうなんだ、俺、今日からハゲなんだ」


 ハゲパーディは慌てて冒険者ギルドから脱出して行った。

 隙を見てこっそり逃げようとした他のパーティーにもアタックしてみる。


「ねえ、あなたたちのパーティーで美少女メンバー募集してない?」

「いや俺たち財政難でホントカツカツなんだ、許してください。あんた全然役に立たないって言うしさ、ほ、ほらビール大ジョッキ五杯券やるからこれで勘弁して」


 うわーちくしょー!

 はっきり言われて涙目で冒険者ギルドから走り去る。外に出る時に一応薬草むしりの依頼書は剥ぎ取っておいた。


 あんたたち全員、後でやっぱり入れとけば良かったって後悔しても知らないんだから!

 見返す日が来るなんてまったくこれっぽっちも思えないけど、覚えてなさいよ! 首を洗って待ってなさいよ!


 半泣きで走っていると、冒険者ギルドに入ろうと向かっているパーティーとすれ違った。


「ハゲ男んとこのパーティーさ、勇者パーティーをクビになった女に頭の毛毟られたってよ」

「うわ怖ぇー。そいつ悪魔なんじゃねーの?」


 何で私が毟った事になってんのかな!


 次回 「あらやだ、私の全財産が食べられた」


 リン、晩ご飯代に薬草を毟りに行く

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