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第28話 頑張れ刀根四号ちゃん


 オーガが飛龍隊に岩を投げつけている、当たらないものの風圧で吹き飛ばされていく妖精たち。

 それでもまた纏まってオーガに石を投げつける。みんな決死の攻撃なんだ。


「妖精のみんな! 聞いて! 飛龍隊がオーガの注意を引きつけている間に、私の所に集まって!」


 何度も何度も繰り返した。私の声と、通信係の子の送信だ。

 バラバラになった妖精たちをなんとか集めて最後の反撃を行うのだ。


 航空戦力が壊滅した以上は、残る攻撃はもうあれしか残っていないのだ。


「たあ!」


 向こうでオーガに木の実を投げつけているのは、利根四号ちゃんだ。皆必死に戦っている。

 私は泣きながら叫び続けた。


「早くみんな集まって! お願い! 私の所に!」


 早く集まって! 飛龍隊がもたない!

 私の必死の呼びかけと通信で、散っていた妖精たちが少しずつ集まってくる。


 集まった妖精たちは私を取り囲み、私の背中で一つの塊になった。

 そしてそれはどんどん左右にのびて――


 バサッ――!


 私の身体が宙に浮き上がる、そう、妖精たちが集まって羽を形成しているのだ。

 妖精たちと私とで、一人の戦闘妖精を作り出しているのである。


 えーとメガネ君、メガネ君。

 下から見上げてノートに何を記載しているのかな? 内容次第によっては後でそのページは焼却しますから、わかってますね?

 モブ太君も、モブ男君も、もう! みんなして真下に来ないで! 見上げるの禁止だから!


 オーガがこちらに気がついた。新たなる敵の出現に反応したのだ。

 だがもう遅い、もう準備は整っているんだよ。キミは負けたのさ。


 バチバチと私の身体から放電する。そう、一人一人の電力は弱くても、固まって集まれば巨大な力になるんだよ。

 航空戦力がやられても、私たちにはまだこれがあるんだよ!


「雷撃戦用意! 目標オーガ! 距離二○(ふたまる)、航空隊退避!」


 私たちの電撃は雷のごとし!


「って――!」


 ズッドオオオオオオオオオオオオオオンッ――!


 真っ白な閃光で一瞬目がくらむ。

 まさしくオーガに雷が直撃したようだ。巨大な電撃はオーガに襲い掛かり、その身を焦がし貫いた。

 オーガの真後ろにあった木が縦に裂けていた。何て恐ろしい力だろうか。


 煙を吐きながらゆっくりとオーガの身体が倒れていく。


「やったー!」


 喜んだ妖精たちが私の背中から四散した。

 そのお陰で私は地面に墜落である。お尻を思いっきり打ったのである。涙が出たのである。

 慌てた妖精たちが舞い降りてきた。


「ご、ごめんね、後でお尻に花の蜜塗ってあげる」

「それは効くの?」

「ううん、効かないけどお尻がいい匂いになる」


 とりあえず遠慮して自分のお尻に初等治癒魔法だ。

 こんな魔法でもこういう時は頼りになる、ちょっとでも痛いのはごめんだから。


 その時だ。


「オーガがまだ動いてるよ!」

「起き上がろうとしてる!」

「なんてしつこいのあいつ」

「でもフラフラだよ」


 なんてこった、一撃必殺の雷撃をお見舞いしたのに、それでもオーガは死ななかったのだ。


 オーガは強力な治癒回復力を持っているので、このまま放っておいたら再生してしまう。でも今ならボロボロの状態だろう、まだ間に合う、まだ試合終了じゃない。


「やっておしまい!」


 起き上がろうとしていたオーガは、モブパーティーの三人の男性メンバーが寄ってたかってボコボコにした。

 鉄の剣と魔法のステッキとメガネでボッコボコだ。


 メガネが一番効いてるっぽいんだけど、メガネなんかでボコられている精神的ダメージだろうか。

 そして遂に私たちは宿敵オーガを仕留めたのだった。




 その夜はオーガ討伐記念パーティーで盛り上がった。

 オーガの素材とお肉を回収して私たちはお肉をモリモリ食べ、お肉を食べない妖精たちにはありったけの勇者まんじゅうをプレゼントだ。


「お肉なんか食べてお腹壊さないの?」

「へーきへーき」

「いろんな妖精の子がいるのね」


「木の実も取ってきたから食べて食べて」

「ありがほー」


 因みにフィギュアちゃんもお肉をモリモリ食べている。

 深く考えてはいけない。この場合フィギュアちゃんもお肉を食べたせいで、私だけが変な子扱いの目で見られなかったのは幸いなのだ。


 お肉を食べられて私も満面の笑み、勇者まんじゅうを貰って妖精たちも満面の笑み。ついでに言うと、勇者まんじゅうを妖精たちに体よく押し付けられたせいで私は身軽にもなった。

 皆が幸せになった夜だった。


 次の日出発しようと思ったけど、食べ過ぎで動けない。

 もう少し村にいなよ、遊ぼうよという妖精たちの声に甘えて三日も村に滞在してしまった。この三日間遊び倒したよ、楽しかった。


 そしていよいよ出発の時が来た。


「行ってしまうんだね」

「寂しくなるよ」

「また遊びに来てね」

「バイバイ」

「オーガを倒すのを手伝ってくれて本当にありがとう。大きい子ちゃんとその従者のモブ族の人たちの事は、この村で語りついで伝説にするね」


 またもやモブパーティーの伝説が生まれてしまったか。


「伝説の為に、大きい子ちゃんの証明に何か残して欲しいな」

「と、言われてもねえ」


「じゃ、これをこの村にプレゼントするブヒ。これは勇者の村で買った姫のフィギュアだブヒ」


 なんだかモブ太君の声を久しぶりに聞いた気がする。

 ってちょっと待って、私のフィギュアだと!? そういやそんなの売ってたっけあの村!


「うわーこれ大きい子ちゃんそっくりだね、昔はこんなにちっちゃかったんだ」

「きっとお肉を食べたから大きくなったんだね」


 あなたたちはお肉食べちゃだめだからね。お腹壊すからね。


「これキャストオフ仕様に魔改造しておいたブヒ。こうやれば服が外れるブヒ」

「すごーい」

「お花の柄のパンツ丸出し」

「お宝にするね!」


 こいつとんでもない物を村に置いて行きやがった……

 宝物にすると言われたら、回収も破壊もできないじゃないか。


「じゃあ行くね! またね!」

「モブ族の皆さん! バンザーイ! モブ族バンザーイ!」


 妖精の村のみんなに見送られて出発だ。

 この見送られ方もそろそろ慣れて来たわね。


「面白くて可愛い村だったねえリン、でもリンがあの村の結界内に入れるのはなんとなく分かるんだけど、どうして僕たちも入れたのかな」


 いや私が入れたのも今ひとつ分かってない謎なんだけど。


「みんなが言ってたよ、妖精の子が持ってる付属品は村に持ち込めるんだって」

「ふ、付属品って……」


 フィギュアちゃんが教えてくれた事は忘れた方がいいよ。

 深く考えたら悲しくなるわよ。


 その後聞いた話によると、近隣の村や町に妖精たちが訪れてお饅頭をねだっていくらしい。

 お饅頭をあげた店は大繁盛、そして妖精たちは私とその仲間のモブパーティーがいかに素晴らしかったか雄弁に語ったという。


 次回 「モグラ大好き幻覚ちゃん登場」


 リン、例の枕と再会する


 本日投稿します

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