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第21話 お前、勇者にクビにされたんだってな


「たっだいまーおばば様! リンナファナ帰還いたしました!」


「おう、リンナファナ。勇者にクビにされたんだってな」

『ブヒュ』


 私が血を吐いた音だ。いきなり先制パンチを食らってしまった。


「アレンタたちと会わなかったか、ちょっと前に出て行ったんじゃが」

「知らなーい、それより聞いてよおばば様。あいつら酷いんだよ、私を役立たずだって放りだしたんだから」


 まあ、実際役に立ってる記憶は無かったけどね。


「でも酷いよね横暴だよね」

「ふむ、そこの冴えないモブ顔どもは誰じゃ。新しいモブ芸人かなにかかな、どれお前ら何か芸を見せてみろ」


 モブ男君を紹介しようと振り向いてギョっとなった。

 いつの間に合流してたのよメガネ君とモブ太君は、ニンジャになれるよきっと。


「この人たちは私の新しいパーティーのメンバーだよ」

「ふーむ」


 おばば様がじっとパーティーを見る。


「なんともつかみどころの無い顔をしとるな、いいモブ構えじゃ」


 モブ構えって何?


「モブ男、じゃなかったロクトと言います。ひょんなことからリンとパーティーを組みました、よろしくお願いします」

「そうかモブ男はリンナファナの事をどう思っておるかな?」


 えーといきなり何を聞いてくれるのかなおばば様は、ほらモブ男君ちょっと困ってるじゃない。


「た、大切な仲間です。モブ太とモブ助、じゃなかったプーとロドガルドもそう思ってるはずですよ」

「ほう、モブ太とモブ助もとな」


「顔も可愛いし足も可愛いいブヒ、とても目の保養ブヒ」

「まあ足が目の保養という点については否定できませんね、とてもよい大腿骨をしています」


 メガネをくいっと語ってるけど、あなたたちはモブと言われてる事を気にしなさいよ、てかそこじゃない、私が今気にするのはそこじゃない。


「くれぐれもリンナファナを大切にしろよ、お前たちの未来はこの子にかかっておる、手放すではないぞ」

「はい絶対に僕がリンを守ってみせます」


 キリっとしたモブ顔になんだかドキっとしてしまった。

 他の二人の頷きながらのブヒとメガネキラーンには、さっきの発言のせいでもやもやしかないけど。


「ところでリンナファナ、カナにはもう会ったのかの?」

「え……いえ……」


 やっぱりその話になったか、そうだよね。


「まだ気にしておるのか、会いに行ってやれ、カナは喜ぶぞ」



 謎のおばば様ハウスを出ると、モブ男君たちが心配そうに着いてくる。


「リン、カナって人は知り合い?」

「へへ、私のお母さん。といっても本当の親じゃないんだけどね、私を育ててくれた人なんだよ」


 そう、カナは私がこの村で一番お世話になった人だ。

『ちょっと座って話そうか』そう言ってモブ男君たちとベンチに座った。目の前ではフィギュアちゃんがケンケンパをして遊んでいる、可愛い。


「私は親が無くてね、この村で拾われた子なんだよ」

「両親は誰かわからないの?」


「よくわかんないんだよねー。カミナリと一緒に落ちて来たとか、キャベツ畑で収穫したとか、竹を割ったら中から出てきただの、桃を割ったら種の代わりに私がいただの、みんな言う事が違っててさ、私は一体なんなのよって」


 まあ村の皆は冗談で私の気持ちを軽くしようと思ってるんだろうけどね。

 一番メルヘンチックだったのは天からふわふわ舞い降りてきたっていう、隣のゲン爺さんの説よね。貝に乗って誕生したっていうウメ婆さんの説もなかなかいいわね、実に私の美しさを表現できている説だと思う。


「なるほど、色んな説があって実に興味深い。全部ノートに記録しよう、特に土から引っこ抜いたらギャーって泣いたって説が興味深いですね」


 誰もそんな説は唱えていないわよ、どこの植物妖怪だ私は。


「リンは何も覚えてないのか?」

「私が覚えてるのは、一人ぼっちでいた時に女の人が来てさ、その人の手をずっと離さなかった小さな思い出。なんだかとても暖かい思い出。それがカナなんだけどさ、カナが言うには気がついたらガキが一人増えてて飯食ってたって、自分で連れて来て酷いよね?」


「あはは、リンらしいね」


 どういう意味だこら。


「リンはカナって人が苦手なの?」

「大好きだよ! めちゃくちゃ大好き! 世界で一番好き!」


 つい大声で叫んでしまったが、これがいけなかった。


「おうおう、こんな所で大好きだと叫ばれるとは、私もちょっと照れたわ」

「わわわ、カナ!」


 私の目の前に立つ女性は紛れも無くカナだ。私が会いたくて、でも会いたくなかった相手。

 三十代後半のカナは、まだ若々しくて綺麗でスっと姿勢を正して立つその姿は――


「わああ、踏んでる踏んでる、カナ踏んでる。フィギュアちゃん踏んでる!」

「もう! なんなのこのオバチャンは! 楽しく遊んでたのに!」


「ごめんごめん、ちっちゃくて気がつかなかったわ、でも次にオバチャンって呼んだら首をもぎり取るからね?」

「申し訳ございませんでした、お姉さま」


 可哀想にフィギュアちゃんが固まっちゃったよ。そうやって動かないと本当にフィギュアにしか見えないね、まあフィギュアなんだけどさ。


「ようし、それじゃあお詫びに、あなたたちを私のお家に招待してあげよう。ほらリン、どした? 久しぶりの我が家だぞー?」

「う、うん」


「今日は久しぶりにリンの大好物の、ハンバーグステーキを作っちゃおうかなー?」


 なんですとおお――!?

 これは一刻も早く家に帰らなければ! ほらキミたち! 何してるの遅いよ!


「何? 何それ、食べる私も食べる」

「はいはい、フィギュアちゃんにもご馳走するね。それとリンが大好きだった、私の肩たたきと足揉みをさせてあげるぞー」


 そんなものを大好きだった記憶がありませんが。


 次回 「リンのフルパワー」


 リン、フルパワーで能力を発揮

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