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第18話 ついに私たちパーティーにヒロインが!


 お肉を手にして呆然と佇む。

 鉄の剣やフィギュアで喜ぶメンバーを尻目に、何だろう、私だけ納得できない。


「リンの貰ったお肉、よく見たら霜降りのお肉だね、A-5はありそう」


 簡単に納得した私は、満面の笑みでお肉をリュックに仕舞いこんだ。

 今晩は霜降りのステーキが楽しめるのだ! ここはなんて素晴らしいダンジョンなのだろうか。


「ねえ、メガネ君が貰ったやつはどんなメガネなの? ちょっとかけてみてよ」


 上機嫌になった私は、気になっていたメガネの謎に迫る事にしたのだ。

 メガネ君がそれをかけて『ハっ』という顔をした。


「何が起こったの? メガネから魔法光線が発射されるとか?」

「そ、それが」(メガネくいっ)


 ごくり、緊張の一瞬である。


「メガネくいっが、とてもスムーズにやりやすいのです」

「はい解散ー帰るわよー」


 せめて今までよりハッキリ見えるようになったとかで、今までレンズの度が合ってなかったんじゃないのとかの掛け合いをさせなさいよ。


 脱力して帰る準備をしていると、さっきからメガネ君がじっと私を見ている。


 あ、赤くなった。


「はっ! まさかそのメガネ、透視能力があるんじゃないでしょうね!」

「さすがリンさんですね、全てお見通しとは恐れ入ります」(メガネくいっ)


 こいつさっきから私の裸を見てたのね! 飄々(ひょうひょう)としたメガネ君でも女の子の裸を見て赤面したりするのは、ちょっと可愛いというか意外だったけどさ。

 でも黙って裸を見るのは、乙女に対してエチケット違反なんじゃないのかな!


「すみません、私も一端(いっぱし)の男なのでつい。リンさんの頭蓋骨から背骨肋骨、骨盤から大腿骨、実に興味深い」


 透視しすぎて骨ぇ!

 違う意味で乙女としてキツイ!


「あんた骨を見て赤面してんじゃないわよ! いやああああああ! ノートに図解しないでええええ!」


 何とかメガネ君がノートにリンちゃん大図解を描くのを阻止したところで、私は別のメンバーにもつっこまざるを得ない。


「ねえ、モブ男くんはいつからメガネキャラになったのかな?」

「ち、違うんだよ。個人限定装備なのか、他のメンバーでも使用可能なのか、ちょっとパーティーリーダーとして確認しようと思っただけだよ!」


「あ、私も見たいです、リンさんの骨盤」

「やめてえええええ!」


 こんな私たちのやり取りの横で、モブ太君は新しく手に入れたフィギュアで夢中で遊んでいる。

 骨を見られるのも嫌だけど、女の子としてフィギュアに魅力で負けた気分だ、涙が出る。


 とその時だ、部屋の入り口で大きな音がしたので振り向くと、なんとストーンゴーレムの集団が入ってくる所だった。


 まずい、まずい、まずい! あの団体様はまずすぎるでしょ!


「リン!」

「は、はい!」


「「「「お願いします」」」」

「無理に決まってるでしょ!」


 何で活動停止したのかもサッパリなのに、あんな集団にかかったらペチャンコにされまくった挙句に粉になるわ!


「でも入り口をゴーレムたちに塞がれちゃったし、どうしようもないぞこれ」

「皆さん! この奥に通路があるみたいです!」


 村娘ちゃんの声で全員で飛び込んだその通路は、人間が通れるくらいの穴で図体がでっかいゴーレムは入って来れないみたいである。

 とりあえず安全地帯のようなので、ホッとしながら進んだ先に岩の扉があった。


「どうやら出口みたいだね」

「でもびくともしないよこの扉、ねえ私たちもしかして閉じ込められた感しないかな?」


 戻ればゴーレムにペチャンコ、でもここから先には進めない。

 数年後、全員ここで白骨死体となって発見されるのだろうか。やだなあ、他人に私の骨を見られるの、さっきメガネ君に散々見られた後だけどさ。


「あの、皆さん、この崩れた奥に何かレバーみたいなのがありますよ。あれを引いたら開くんじゃないですかね」


 戦闘の指示といい通路発見といい、さっきから有能な女の子である。

 村娘なんかにしておくのは惜しい、索敵役として使えるんじゃないだろうかこの子。


 女の子が私一人なのも寂しいし、パーティーに加入してくれないかなあ。できれば女の子メンバーはもう一人欲しいんだよね、女子トークが夢なのよ。


 しかし崩れた部分はとても人が入れるような隙間が無くて、手も全然届かなかった。


「ここは私の出番だね! マスター!」


「えーと今喋ったのは誰かな? 女の子の声みたいだったけど、因みに私じゃないよ」

「私も違いますね」


 きょとんとした顔で村娘ちゃんも不思議そうだ。

 当然男の人であるその他メンバーたちでもない。私のお腹の虫でも喋ったのだろうか。


「違う違う、違うって! 私お腹の虫じゃないし! ここだよっ、ここだもん!」


 声がした方を全員で注目すると、人形みたいな小さな物体が『えっへん』と胸を張っているではないか。


「何でフィギュアが動いて喋ってるのよ! これさっきモブ太君が宝箱から貰ったやつだよね!?」

「魂を入れる儀式をしたら、動き出したブヒ」


 入魂の儀式だと――!!


「物に魂を込めるなんて、とてつもない魔術じゃないの! モブ太君はそんな技術を持ってたの!? そんなの全然モブっぽくないけどそんな事して大丈夫?」


「フィギュアのパンツにレースの模様を書き込んでみたブヒ」


 何の魂を入れてんのよ!


「とにかく私が行ってあのレバーを倒してくるねっ」


 モブ太君によって謎の魂を込められたフィギュアちゃんは、もそもそと崩れた隙間の中に入って行き無事レバーに到達する事に成功。


「うーん、これ重いー。うーんうーん」


 頑張れ! フィギュアちゃん頑張れ!


『ガコン』という音がして、フィギュアちゃんは遂にレバーを倒す事に成功。

 ゴゴゴゴと派手な音を出しながら岩の扉が開いた。


「やったー! 開いたよー!」


 ドヤ顔でこちらに手を振るフィギュアちゃん、くそ、可愛いな。

 我がモブパーティーに遂にヒロインが爆誕した瞬間なのではないだろうか。


「うわーっ外の空気美味しい――!」


 いや、フィギュアって空気を吸うのかと問い質したい。


 とにかく外に出る事が出来た私たちは、そのまま少女を村まで送り届け村長から感謝状を貰った。

 少女の母親はポーションを飲んで元気一発。その日の内にモリモリ畑仕事にせいを出したのである。


 その日は一晩村に泊めて貰う事になり、村ではご馳走を用意して感謝の宴を開いてくれた。特に若鶏の香草包み焼きが絶品でおかわり必須なのだ。


 美味しいご飯のお礼にと、私も霜降りのお肉を村に提供して皆と堪能した。

 とてつもなく美味しかった、美味いぞあのダンジョン。


 その後、噂を聞きつけた冒険者やグルメ家たちが、果てしないお肉の探求の為にあのダンジョン攻略を目指すようになったと、風の噂で聞く事になる。


 いや、もっと有意義な物に利用しなさいよあのダンジョン。


 次回 「ボロボロの勇者パーティー再び」


 勇者とその一味、自分たちがやった行いで真っ青になる

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