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第135話 出やがったよ邪神!


 気が付いたら異質な空間に私たちはいた。

 さっきまでいた山の中である事には間違いないのだが、なんというか空間が捻じれているというか、通常の状態ではないのだ。


「何ここ」

「みんな警戒した方がいいよ、モンスターかも知れない」


 モブ男君の声にパーティーメンバー全員が戦闘態勢に入る。

 さっきの久しぶりだったモンスターに続いて、連続で現れたか。さては出番待ちしてたモンスターも多かったのに違いない。


 モンスターに警戒する姿は、歴戦の冒険者パーティーという感じである、ただ単に美味しい物を食べ歩く会ではなかったのだ。


「美味しい物探求会かと思ってたよリン」

「わ、私も忘れてたけどね」


 パーティの何たるかを再認識していると、私たちの目の前で何かが出現したではないか。

 こ、この感じは!


「うわ、出たああ」


 出ちゃったオバケ出ちゃった! 一瞬気配でわかったもん。何となく実態がふわふわあやふやな相手な気配がしたもん!

 気絶しそうになるのを必死に堪える、頑張れ、頑張れ私。オバケがなんだ!


 勇気を出してそっと目を開けてそいつを目視する。

 当然だけど、モブ男君とモブ太君とメガネ君の後ろからだ。


 そいつはなんと、真っ黒のガイコツじゃないか!


「なんだ骨か」


 私も持ってるし怖くないな。

 緊張のあまりフィギュアちゃんを握りしめちゃってたよ。


 オバケは白いふわふわしたものと相場が決まっているのだ。

 オバケじゃなければ、単なる黒いヤツだ。黒いヤツは丸めた紙でパーンと叩いておけばなんとかなるのである。


『目覚めて早速人間どもが余の生贄にと参ったか。ところでその小娘は何故紙を丸めたのだ』


 それは人の形をしているが、真っ黒な存在だった。

 それは人の形をしているが、時折タコのようにもなった。


 タコのお刺身食べたいな。

 新鮮なタコはプリプリしてて美味しいんだよねえ。


『何故この小娘は余を見て涎を垂らしたのだ?』


 失礼ね! 乙女はそんなものを垂らさないわよ!

 よしんば何か垂れてたとしても、それはお水なの!


「で、このモンスターは何?」

「リッチに似てるけど何のモンスターだろ」


『ははは余をモンスターと抜かすか木っ端の人間ども。余は混沌の闇より生まれし者、名は御主たちの言語では発音できぬが、邪神と呼ばれておる者』


「さて帰るわよ」


 もうアホかと。

 邪神? そんな物に遭遇する予定はこれっぽっちも無かったんだから、あんたは世界のトップスターを相手にしてなさいよ。


『逃げられると思うたか。御主たちは余の供物であろう?』


 離れようとしたけど、変な空間からは出られなかった。

 外への出口っぽい空間を押してみる、ぼよよーんと跳ね返って来た。変な空間に閉じ込められてるよ。


「リン、戦うしかな――」


 モブ男君がそう言いかけた所で声がしなくなり、何かが倒れこむ音がする。

 振り向くとモブの衆三人が倒れているではないか。


「どうしたのみんな! あんた何したの!」

『何で御主は何ともないのだ? そ奴らが昏倒したのは混沌の中に引き込まれたからだ』


「混沌したから昏倒したの?」

「こらこら、そんなおっさんみたいな事言っちゃだめ、フィギュアちゃんの洗練されたセンスが台無しになっちゃうから」

「危なかったよ、このおっさんみたいになるところだった」


『なんか腹立つなこいつら』


「ちょっと起きてよモブ男君」


 モブ男君たちを揺すってもピクリともしない。

 モブ太君の頬を叩いたら一瞬幸せそうな顔をしたけど気のせいだろうか。


 混沌の中に引き込まれたってどういう事だろう。


『余が復活したのは実に二百年ぶりであるな、賢者は息災か』

「二百年前の人間が元気なわけがないでしょう、何言ってるの? 常識が無いの?」

「きっとアホの子なんだよ、可哀想」


『なんか腹立つなこいつら』


 まあ、賢者はついこの前まで元気に国を滅ぼそうとしてたけどね。

 でもあれはリッチだしね。


『ほう、もう賢者はおらんのか。一応ヤツを警戒してしばらく様子見をしておったのだが、杞憂な事であったか』


 この邪神、姿や雰囲気が賢者が変化したリッチに似てるわね。

 何となくわかるよ、賢者はせっかく邪神を封印したのに裏切られて死んだんだ。


 だから自分が苦労して封印した邪神の姿で、国に報復しようと思ったんだね。


「あんたを倒す為に、今頃この世界のトップスターが集まってる頃じゃないかな」

『そのような者どもは恐るるに足らぬ、ゴミだ。もはや余に仇なす者は皆無というわけだな、まあ賢者の奴とて生きておっても何もできなかったであろうがな! はははは!』


 少し大きく膨張したように見える黒い邪神が高笑いを始めた。うるさい、とてもうるさい。

 トップスターがゴミ扱いって、邪神からしたら人間が結集したってびくともしないんだろうか。厄介だな。


『はははははは!』


「うるさいな!」


『うむ、邪神にうるさいというやつなんか初めて見たわ、なんだこいつ』


 何でこの場所で様子見なんかしてくれてたかな、うるさいどころか邪魔くさいなあ。

 迷惑だからハーブティーが関係ない、どこか端っこの方で復活しなさいよ。そうすれば出会わなくて済んだのに。


『さあ、世界を闇で覆ってやろうではないか! 光の無い世界はいいぞ!』


「あんたは一体何をする気なの? 世界はもう放っておいてもらえないかな」


 邪神は私を見下ろした。

 間違いなくさっきより大きくなってるなあ。


『余はこの世界から夢を奪い混沌の中に引きずり込む者。世界から全ての光を奪い闇に引きずり込む者』


 何を言ってるのこの黒いの。

 夢を奪う?


 光を奪う?


 次回 「めんどくさいなこの邪神!」


 フィギュアちゃん、話の腰を折る



 本日、最終話まで投稿します

 残り4話

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― 新着の感想 ―
[良い点] モンスターではない!神だ!! [気になる点] 賢者を邪険に扱ったツケか [一言] 邪神、タコ。 タコ邪神。 うーん。
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