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第134話 ハーブティー、全滅してた

今日はラストまで行く予定です


 第一村人が逃げ込んだ広場に、次々と村人たちが集まって来た。


「とうとう出おったか」

「今年はもう出んだろうと思ったのに」

「そんな季節になったのか」

「出ると思うから出るのだ」


 いったい何が出たんすかね?

 クマ?


「お嬢ちゃんたちはハーブティーを飲みに来たというのかい?」

「そ、そうですけど。ハーブティーを夢見てやって来ました」


「あああなんてこったああ」


 だから頭を抱えるのは絶望した時だけにしてもらえるかな。

 人はそんな簡単に絶望しちゃだめなんだよ。


「すまんのうお嬢ちゃん、せっかく来てくれたのにハーブティーはもう無いんじゃ」

「あああなんてこったああ」


 私は頭を抱えた。


「隣国の軍隊にハーブを根こそぎ持って行かれてしまったんじゃ」

「ハーブティー職人も連れて行かれたわ」

「猫も連れて行かれた」


 猫は毎回巻きぞえ食ってるね。

 どうせそんな事だろうと思ったんだけどね。


 隣の工芸村は何の被害も無かったのに、食に関するとこの大被害。

 隣国の食事事情が悲惨なだけに、納得せざるを得ないのが悲しい。


「どうするの? また隣の国にカチコミに行くの?」

「あ、起きたんだねフィギュアちゃん。行ってももう文句言っちゃったし、意味ないよねえ」


 連行された人たちは返してくれるって言ってたんだし、もう私の出る幕はないよね。

 そして何より、生のお芋の丸かじり大会に参加したくないんだよ。あの国は私を不幸にする。


「皆さん安心してください。しばらくしたら、連れて行かれたハーブティーの職人さんは戻ってくると思います」

「へーそうなんだー」

「ふーん」


 随分反応薄いなおい。


「ええ、隣国の王様が約束してくれましたから」


「猫は?」

「猫も帰ってきますよ」


「うおおおおおおおお!」

「猫帰ってくるううう!」

「神様が奇跡をくれた!」


 猫とハーブティー職人とのこの差はなんなのよ!

 ハーブティー職人は怒っていいんじゃないかなこれ!


「良い知らせをありがとうお嬢ちゃん」

「せっかく来てくれたのにハーブティーが無いのは残念だが、山でハーブみたいなもんを適当に摘んで飲んでくれたらええ」


 随分(ざつ)いなハーブティーの扱い。


「ハーブティーじゃ腹は膨れんからのう」

「わしらその辺の水とハーブティーの区別もようつかんのじゃ」


 味覚音痴にも程があるだろう。

 この村の名物なんでしょうに。


「知らせてくれたお礼に、この先にある水源でハーブティー用の水を汲んで行ってもかまわんぞ」

「その水がちべたくて美味いんじゃ」

「聖なる泉と言うてな、本来なら村人以外は立ち入り禁止だがあんたは特別に許そう」

「その水がちべたくて美味いんじゃ」


「ありがとうございます」


 お爺さん、大事な事なので二回言ったのかしら。

 村の衆たちにお礼を言って、早速村の水源という泉に向った。買ってから早くも新しい水筒の出番が来るなんて、ちょっとわくわくだ。


 辿り着いた水源はとても清らかな泉だった。

 泉に白い女神像が置いてあって、まるで水浴びでもしているかのよう。


 泳いだら気持ちよさそうだなあ。

 水源で水浴びなんかしたら間違いなく怒られるので、水筒に汲ませてもらうだけにしよう。


 買ったばかりの水筒に水を汲む。フィギュアちゃんも小さな水筒を沈めてぶくぶくお水を入れていた。

 なんと微笑ましい光景だろうか、フィギュアちゃんも水に沈んでぶくぶく言ってるよ。


「ハーブティー用の水は汲んだし、後はハーブを摘めばいいんだよね」

「その辺の適当な草でいいんじゃないの?」


 飲むの私たちだよフィギュアちゃん。そんなのは絶対にありえない行為だよ。

 とはいうものの、山中は植物だらけでどれが何かわからない。ここは私の研ぎ澄まされた直観に頼るしかなさそうである。


「これなんて、いかにもハーブですって顔してるよね。間違いなくこれハーブでしょう」

「それ毒草だよリン。しかも猛毒」


 モブ男君の答えに、何も無かったという顔をして毒草を捨てる。


「ちょっと間違えちゃったよ、これこそがハーブだね。ふふん」

「それは泣き草だね。食べたら涙が止まらない、そして死ぬ」


 毒草じゃないのかな。


「じゃこれは?」

「笑い草」


 それ知ってる! 笑いが止まらなくなる伝説の草だよね。

 今までに数多のチャレンジャーが笑顔になったよね。


「笑が止まらなくなって死ぬ」


 やっぱり毒草なんじゃないのかな!


 まだ諦める時間じゃない、草はいくらでも生えているのだ。数撃てばどれか当たるだろう。


「作り笑い草」

「泣き笑い草」

「馬鹿笑い草」

「にが笑い草」


 笑い草しかねーのかよ!

 この辺はだめか、笑いで統一してきている。ある意味幸せな一画かも知れない。死ぬけど。


「じゃあこっちの方かな」

「この辺りはメガネ草エリアですね」(メガネくいっ)


 メガネ草って何かな。


「これは食べるとメガネが止まらなくなる草ですね」


 内容を理解できないんだけど! もしかして私がバカだから?


「あーもうめんどくさい、これでいいよね」


 その辺の適当な草を摘んどけばいいよね。

 何となくハーブっぽいし、もうハーブも笑い草も大した違いじゃないだろう。


「うーん、この草は見た事無いなあ。珍しい草なのかも」


 よし決定、モブ男君が知らないのならこれは新種のハーブに違いない。


「これで飲めるの?」

「生ハーブで飲むか乾燥させてから飲むかのどっちかだね。フィギュアちゃんはどっちがいい?」


「じゃあもう飲もうよ! 早く新しいコップ使いたい!」


 新しい水筒を使った後は新しいコップの出番だね。

 欲張りだねえフィギュアちゃんは、といいつつ私も同じくわくわくしてるんだけどさ。


 とりあえずここで飲むのも味気ないし、移動して景色がいい所に行こう。

 見晴らしのいい場所を探して歩いていると、モンスターが出た。


 なんというか……ひさしぶり、元気だった?


 モグラモンスター以来かな、最近ドラゴンしか見ていなかったら懐かしい気すらするのだ。

 しかし今回の私たちの目的はハーブティーなので、モンスターには用事はない。


 というわけで――


 全力で逃げた!


 だってあのクマモンスター強そうなんだもん。体長が人間の三倍くらいあったよ。


「まいた? 居なくなった?」

「居なくなったね、というより最初から追いかけて来なかったけど」

「なんだか向こうもビビってたブヒ」


 ふーやれやれ、一安心。


 と思った瞬間、空間がぐにゃってなった。


 次回 「出やがったよ邪神!」


 モブパーティー、ほぼ壊滅



 本日、最終話まで投稿します

 残り5話です

 見直し修正しながらなので二時間おきくらいの投稿になります

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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎の笑い草コンプリート [気になる点] 隣国ホントにいい加減にしとけよ [一言] ハーブティーならずか
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