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第133話 工芸品とは実用と美術の合体だね


「さ、フィギュアちゃん、私たちは向こうで工芸品でも見てこようか」

「うん」


 お店には色々な商品が並んでいて見ているだけでも楽しい。


「ねえリン、工芸品て何?」

「実用品だけど美しい品物だよ。実用と美術の合体だね」


「なるほど、キメラだね」

「そ、そうだね」


 そんな発想は無かった。


「リン、あそこにキメラの像が売ってるよ」


 本当にあったよキメラ。

 でもこれは彫像で、工芸品とは違うよね。


「らっしゃい、これは尻尾のヘビがペンになってるから、立派な実用品でい! ほら、お嬢ちゃんもこれで文字を書いてみな」


 言われたのでクソでっかいキメラ像を抱えて……抱えて……どんなバケモノが使うペンなのよこれ!

 一文字書いただけでふらふらになったわ!


「じゃこっちのキメラはどうだ、これは尻尾のヘビが爪切りになってるから、これこそ立派な実用品でい! ほら、お嬢ちゃんも爪切ってみな」


「ま、まあこれなら置いたまま使えるからまだましか……って爪切りの部分が動かないんだけど?」

「作動レバーは反対側の頭の先にある」


 届かねーわよ!


「それじゃこっちのキメラはな」

「何でキメラにこだわってるのかな!」


「何でって、うちはキメラ屋だからな」


 ああ、そうですか。

 何故そんなややこしい物で、実用品にチャレンジする人生を選んでしまったのだろうかこの人は。


「このキメラはなんと、漬物石になる実用品でい!」

「あーやっちゃった。用途説明で文鎮とか漬物石とか言い出すオッサン出ちゃった」


 フィギュアちゃんやめてあげて、キメラ屋のおじさんちょっと涙目だから。

 会心のギャグが滑ると人は死にたくなるのだ。


 おじさんが成仏しますように……そう願いながらキメラ屋から離れて他の店を見に行く。

 ちゃんとした工芸品が見たいんだよね。


「面白い商品が一杯あるよ、あれ何? あっちは? ねえリン、この変なの何?」


 ああ、可愛いなあフィギュアちゃん。

 よし、ここは近所でも博識で名高いこの私が、フィギュアちゃんの疑問を解消してあげようじゃないか。


「この道具はね……おじさんこれ何?」


「へいらっしゃい。これはなスポイトと言って、中に液体を入れて少量を落とす道具だよ」


 へー薬とかに使うのかな。フィギュアちゃんみたいな小っちゃい子だと、一滴を出せる道具は必要なのかもね。


「これおもしろーい、お花の蜜を集めるのにも使えるね」

「おじさんこれ下さい」

「へい毎度!」


 勘違いしてはいけない、フィギュアちゃんが気に入ったみたいだし、フィギュアちゃんのオモチャとして買うんだから。


「リンありがとう」


 オモチャを抱きしめるフィギュアちゃんは可愛く喜んでいる。

 たまにでいいから、それでお花の蜜とか蜂蜜を集めて遊んでくれれば私も大喜びだ。


「ねえリン、水筒売ってるよ」

「へー工芸品というだけあって綺麗ね。私の水筒は四年も使ってもうボロボロだし、いい機会かな」


 色んな種類の水筒があるようだ。

 大きな植物の実や竹、動物の皮で作られた水筒に丹念に手作業で模様がつけられていた。


「ユー買っちゃいなよ」

「そうだね、おじさんこれください」


「へい、いらっしゃい」


 私が買ったのは、大きい丸くて平べったい木の実を利用した水筒である。

 蝶の絵が描いてあって気に入ったのだ。ゴージャスな私にピッタリの一品だよね。


「お嬢ちゃん、可愛いからもう一つオマケだ」


 そう言っておじさんは水筒を一つオマケしてくれた。

 それは小さな木の実を利用した水筒で、フィギュアちゃんにぴったりな商品なのだ。ちっちゃなちょうちょの絵が可愛い。


「ありがとうおじさん、ほら、これでフィギュアちゃんも水筒持ちだね」

「一介のフィギュアから、私は遂に水筒持ちにまで出世したんだね! これで他のフィギュアには追随を許さない格段の差がついたと思うよ」


 フィギュアちゃんはとっくのとうに、他のフィギュアが到達できない次元にいるんだけど。


「リン! 向こうにコップも売ってるよ!」


 さすがフィギュアちゃんだ、水筒と来たらコップだよね、乙女が水筒から直接ガブ飲みなんてできるわけがないもの。

 今までしてたけどさ。


 一応コップは持ってたけど、この前縦に割れちゃったんだよね。


「へい、らっしゃい」


 目の前には色々なコップが売られていた。

 陶器や木をくり抜いた物、金属を叩いて作った物、それらに工芸品らしい綺麗な細工が施されている。この村の技術の高さを窺わせる品々だ。


「どれも可愛いね」

「どれも? 果たしてリンは、この店のオッサンの顔の絵が付いたコップも可愛いと思うの?」


「ごめんなさい、私が愚かでした」


 何故自分の顔のコップが売れると思ったのか、店主を問い詰めたいところだ。


「これなんかどう? リボンの柄だよ」

「こっちのお花の柄も可愛いよね」


 両方とも可愛くて綺麗で、どっちにしようか迷ってしまうよ。


「ユー二つ買っちゃいなよ」

「そうは言うけどフィギュアちゃん、旅に嵩張る品はね」


「お嬢ちゃん、そのコップは取っ手が外れるようになってるから、仕舞う時は重ねて仕舞えるよ」

「なんという素敵ギミック、両方頂きます」


「まいどあり、お嬢ちゃん可愛いからもう一個オマケだ」


 そう言っておじさんがくれたのはフィギュアちゃんにぴったりのコップだった。


「すごい、これ私専用のコップなの?」

「お茶にシロップやミルクを入れる時のピッチャーだね」


「おじさんありがとう。すごい、これで私もとうとう一介のフィギュアからピッチャーになったんだね! フィギュア界のエースだよ!」


 今一つ意味がわからないけど、よ、良かったね。


「おやおやこんな所にいらっしゃったんですか」(メガネくいっ)

「こっそりコップ回をやってるなんてずるいブヒ!」


 何の回だって?


「僕もいい水筒とコップが買えたよ」


 いきなり隣から声がして固まる。

 い、いたんだモブ男君。


「ずっと隣で水筒とコップを物色してたよ? さて買い物も終わったし、出発しようか」


 ショッピングを楽しんだ私たちは再び旅を始める。

 やっぱり買い物は楽しいよね、問題はお金が乏しい点だけど。


「メガネ君はいいメガネが買えた?」

「何故私がメガネを?」


 お前メガネキャラだろ!

 やはり私が監視しておくべきだったかと反省していると、いよいよお目当てのハーブティー村である。


「ここは何て村だっけフィギュアちゃん」

「すやあ」

「フランメルア村だね」


 フィギュアちゃんとの可愛いコントをやろうとしたら、モブ男君によってあっさり正解を出されてしまった。

 まあ当のフィギュアちゃんは、新しく貰ったスポイトと水筒とコップを抱きしめながら私の胸元で寝ちゃってて、返答が寝息だったんだけど。


 新しい水筒やコップの夢を見てるのかな?

 あー早くこの新グッズを使いたいよね!


 早速第一村人を発見して突撃である。


「すみません、ハーブティー下さい!」


 第一村人が逃げた。


「た、大変だ村の衆! ハーブティーを飲ませろってやつが現れたぞ!」


 またこのパターンかよ!


 次回「ハーブティー、全滅してた」


 リン、自分でハーブティーを作る事にした



 いよいよ残り6話となりました。

 一週間分無いので、明日の日曜に一気にラストまで公開しようと思います。

 ところで、邪神どこ行った?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 近代美術館的な村だな [一言] フィギュアの中のフィギュア。 他のフィギュアから一目も二目もおかれている。
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