第127話 例の邪神が復活したってさ!
「邪神が二百年前の封印を破り、復活したとの事です」
おいおい、戦争どころじゃないとんでもない奴が復活しとるがな!
世界の終わりってあんた、王国が亡ぶ以上の大災害なんですけど。
「あらあら大変ねえ」
あらあらで済ませるな!
「邪神が復活したのなら、賢者も復活しないかなあ」
「リンが成仏させちゃったよ?」
うう、そうなんだよねえフィギュアちゃん。
とは言っても私としては、ハンバーグ弁当を食べただけであって、成仏させた記憶はサッパリ無いんだけどね。
「至急対策会議を開きますので殿下はお戻りを」
「仕方ありませんね、わかりました。主だった領主に連絡を」
そう言いながら普通に穴から帰ろうとするなよ。
とかつっこみを入れた私は穴の中である。足元の地面にいきなり開いた穴に落ちたのだ。
地下ワールドにいた目の前のトカゲが私を咥えて背中に乗せる。
「あらあら、猫ちゃんたら迎えに来てくれたのですね。ご苦労様です」
猫ちゃんはしばらく考えて、自分の背中の上の私を降ろすとお姫ちゃんを背中に乗せた。
さてはこいつ迎えに来た相手を間違えたな。
ジト目で見つめる私にトカゲが顔をそらした。
去って行く土ドラゴンとお姫ちゃんを見送る。
とりあえず、私を地上世界に戻してから帰ってくれないかな! 誰か、ロープを降ろして! SOS!
それにしても大変だねえ。
戦争処理だけでも手一杯だろうに、戦争どころじゃない邪神が出現とか。
もし邪神が世界に仇なす動きをするのなら、恐らく各国が共同で戦力を集中して戦わないといけない相手なのだろう。
邪神てくらいだし、神様の一種なんでしょ?
そんなの、人間の力で何とかできるの? 賢者はどうやって封印したんだろう。
各国の王や皇帝たちは、世界の存亡をかけて一大決戦をやる事になるのか。
負けたら世界が消滅して人類が亡ぶのだ。なんだか大ごとすぎてまるで実感がわかない。
王さんたちがんばれ~。
完全に他人事である。
「リンは邪神退治に行かないの?」
「何を言ってるのかなフィギュアちゃんは。世界の頂上決戦に、こんなただの小娘が出ていけるわけがないじゃない。ゾウの喧嘩にアリが参加するようなものよ、いや待てよ、アリは可愛くないな蝶々でお願いします」
そんな事よりも私には重要な使命があるのだ。
気になって眠れなかったものがあるのだ。
この前黒髪ちゃんは何て言っていた?
美味しい焼きいもタルトやハーブティーがあると、とんでも情報を私にくれたではないか。
邪神なんて危ない物体は世界のトップや、賢者や聖女みたいな皆さんに任せておけばよいのだ。
そしてただの小娘は、焼きいもタルトやハーブティーを満喫するのみである。
「えーとどこだったっけ。焼きいもタルトとハーブティー情報で一杯で、村の名前忘れちゃったよ」
だが心配する必要は無い。
私には外部記憶領域があるので大丈夫なのよ。
「どこだっけフィギュアちゃん」
「なんとかかんとか村となんちゃらかんちゃら村だったよ」
書き込みエラーが出ていたようだ。
おろおろする私にモブ男君が答えてくれる。モブ男君いたんだ。
「焼きいもタルトで有名なのはカツアワ村で、ハーブティーが美味しいのはフランメルア村じゃないかな。どっちも国境近くの村だよ」
「さすが村の美味しい物発見スキル。モブ男君のスキルって本当に便利よね」
「僕のはただの村発見スキルだってば。地図に名物が書いてあっただけだよ」
「あなたたちはどうするの?」
ロリっ娘ちゃんたちにも焼きいもタルト漫遊をするか聞いてみた。
「タルトも食べたいけど、山の子供たちが待ってるので私たちは帰りますね」
そっか、ロリっ娘ちゃんたちとは一旦ここでお別れだね。また近いうちに遊びに行くよ。
「子供たちにも邪神に備えさせないといけないよね」
「邪神て名前だけでも危なそう、子供たちに悪さしそうだよね。よこしまなんだもん」
「小さい子の敵だよきっと」
ジーニーちゃんたちにえらい言われようだぞ邪神。
うかつに復活なんかするから幼女に嫌われるんだよ。
幻覚ちゃんはどうするのかな。
「焼きいもタルト食べに行く?」
「私も一刻も早く帰らないと」
そっか、やっぱり邪神は心配だもんね。
「一刻も早くモグラバーガーの開発に入らないと。ひらめきは速度が肝心!」
モグラ以下の扱いになってんぞ邪神!
全然ブレない幻覚ちゃんなのは知ってたけどね!
黒猫と白猫に女の子たちを送るのはまかせて、私たちも出発しますか。
「あれ? そういえばブチ猫は?」
「子爵のお嬢様が迷子の猫ちゃん見つけたって連れて帰ったブヒ」
すげえな貴族のお嬢様、あれを持って帰るか。
モブ太君いたんだ。
「まあ、猫は飼い主の所に帰る。これが一番いいのかもね、お前もそう思うよね」
『にゃー』
って早くも逃げて来ちゃってるんだけど!
ブチ猫が私の隣でハンバーガー食べてるんですけど!
帰ったんじゃないのかよ!
「お前、子爵のお嬢様の事嫌いなの?」
『にゃー』
うむ、わからん。
「向こうもこっちも大好き、俺は形式に囚われない自由な猫なのにゃ、って言ってますね」(メガネくいっ)
「あんた猫じゃないけどね」
ほらフィギュアちゃんにつっこまれた。
ついでにメガネ君いたんだ。
まあブチ猫が一緒にいてもいいんだけどさ、乗るとラクチンだし。
ブチ猫は私を乗せて歩いてくれるのでとても重宝する。
お目当てのブツがある村は国境付近の山岳地帯なので、これは便利という他はない。
さあ出発!
私たちが目指すはまずは焼きいもタルトだ。
次回 「焼きいもタルトへ一直線、他? 知らぬ」
リン、壊れる