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第126話 ハンバーガーで大団円にしようと思ったのに!


 戦後処理は大変だったみたい。

 降伏した隣国軍は十万以上もいたのだ。


 こちらの国の降伏した兵士と捕虜交換という事になったのだが、全員が全員メシマズ国には帰りたくないと駄々をこね、穴を掘って立て籠ったり木にしがみついたり木のふりをしたりとめんどくさい事になったのだ。


 町や村はあちこちガタガタでこいつら全員に食わせている余裕はないので、一兵卒は自由に帰ってくれと言っても帰らない。

 うなぎめしを食わせてくれないと捕虜になってやるぞと脅されて、渋々うなぎめしを作って食わせていたらうなぎが居なくなった。


 多分緊急避難で夜逃げしたのだろう、うなぎからしたら迷惑な話なのだ。国産うなぎの危機である。

 おかげであっという間にうなぎが高騰してしまった、ホント迷惑だ。


 もう何でもいいだろうという事で、うなぎ(実はアナゴ)めし、うなぎ(実はドジョウ)めし、うなぎ(実はナマズ)めし、うなぎ(実はモグラ)めし、と何でも出しまくったが、全部美味いで片づけられてしまった。


 メシマズ国の人たちからしたら、何を食べても美味しいのだろう。

 うなぎとモグラの区別がつかないんだから重症なのだ。


 そんな味覚でうなぎめしに拘らないで欲しい、おかげで国産うなぎが貴重で食べられなくなってしまったよ。

 いったいどうしてくれるんだ。


 こちらの軍で捕虜になった兵士は少なくて、彼らとの交換で強制的に帰国させられる隣国の兵士は希望者以外はじゃんけんやくじ引きで決められた。

 あんな真剣なじゃんけんは今まで見た事がない、というのは監視していた兵隊のおっちゃんの話である。


 そりゃまあ真剣だよね、生きるか死ぬかと同義だもの。

 黒髪ちゃんから聞いたメシマズ情報に、私は震えあがったんだから。今でもたまにうなされて夜中に飛び起きるほどだよ。


 黒髪ちゃんと約束した事を早速お姫ちゃんに伝えた。

 みんなが笑顔の美味しいレストラン通りを作ってもらうのだ。


「そうですね、国境に新たに食い倒れ横丁を作りましょう。隣国の人々に美味しい物をどんどん食べさせて、破産させて倒れてもらいましょう。我が国も潤っていい案ですね、さすがリンナファナ様です」


 いえ私、そんなド鬼畜な案を提案したんじゃないんですけど。


「食い倒れ横丁には私プロデュースのモグラ倒れ食堂を作る事にしたんだよ、伯父さんが開店を手伝ってくれるって。モグラ協会は休む事が無いね」

「い、いつの間にこの町に来てたの?」


 おかしな野望を口にしている少女を見たら幻覚ちゃんだった。

 伯父さんのレストランで大人しく待っていたはずじゃなかったのか。


「うなぎ(実はモグラ)めしが売ってるって聞いたから飛んできたんだよ。美味しかったー! うなぎなんか目じゃないよね」


 どこでそんな情報を仕入れたんだ! モグラ協会か? モグラ協会なのか?

 それよりも、隣国の兵隊さんたちの行列に十歳の女の子が並んでたのかよ、さぞかし周りは困惑しただろうね。


「お母さんが〝樫の木の宿〟の別館を国境に作るんだって。いよいようちの宿も、多角経営の時期に突入しちゃったのかな」

「商売繁盛なのはいい事だよね」


「隣の国からのお客さんにどんどんドン・ペロニャンを何本も開けさせて、ペロニャンさせるんだー。私のお小遣いもちょーアップだよ」


 ゆ、夢が広がりますな。



 今回の一件は一部の貴族と軍部が勝手に暴走した事で、隣国の王家としては本意ではなかった、という事になったらしい。

 とかげの尻尾切りである。


 さすが王侯貴族だ、隣国も王国、その猛威を振るってるんだね。

 尻尾切りされた貴族は少し気の毒な気もするけど、そういう役割の為に普段は繁栄しているのだと考えれば諦めもつくというものだ。


 その点では私たち平民は気楽で良かった。


 戦争後、お姫ちゃんの株はうなぎ上りである、うなぎめし食べたい。


 自らドラゴンを従えて最前線で戦ったという、救国の姫なのだ。

 お姫ちゃんは実際に土ドラゴンに乗って最前線にいたからね。地面に穴を掘ってせっせと隣国の兵隊を落としてたよ。


 戦場からの帰りは地面に穴を掘って、皆がいる町の広場のど真ん中から現れた。

 人々の喝さいはそれはそれはすごかったのだ。


「わが救国の女神が舞い降りた!」


 いや舞い降りてねーし。

 むしろ地面から生えたし。


「ルーアミル!」

「ルーアミル!」

「ルーアミル!」

「ルーアミル!」


 王子は完全に忘れ去られたようだ。


 王子は忘れ去られたが、三匹の猫に乗った勇敢な少女たちやモブの衆の事は忘れられてはいない。

 町にはモブパーティーの謎の像がまたもや設置されてしまったのだ。


 仁王立ちの少女から放射状に放たれた謎の弾丸。

 一体私は何を発射したんだ、子機か? 妖精さんたちだったはずなんだけど。


「モブパーの皆さん! バンザーイ! モブパーバンザーイ!」


 私たちは見送られて町を出発。

 現在はハンバーガーの村で、ロリっ娘ちゃんたちと会食中である。


「これ美味しいですね! リンナファナさん!」

「美味しいねお姉ちゃん」

「うまうまー」


 そうでしょう、そうでしょう。みんなにもハンバーガーを食べてもらいたかったんだよ。


「私も思いついた、天才的なひらめきです。モグラバーガーは売れると思う。名前はモグバーガーにしようと思う」


 相変わらずブレないね幻覚ちゃんは。


「でもやれやれ、これで平和が戻ったわね」

「そうですね、私も肩の荷が下りました」


「うわ、何で王女殿下がここにいるんですか」

「あらあら、私も猫ちゃんと一緒にハンバーガーを食べに来たのですが?」


 あいつは猫じゃねーっつってるのに。


 見るとハンバーガー屋の前にでかい穴が開いている。

 あ、歩いてたお爺が落ちた。迷惑な話である。


 大勢で食べるご飯は美味しいからまあいいんだけどね。


「ルーアミル殿下! こちらにおいででしたか。た、大変な事が」


 よく見つけたわね副官さん。

 感心していたら、穴からもう一人伝令の兵隊さんがお爺を背負って這い出てきた。穴から追って来たのか!


「大変て何ですか?」

「あらあら、また隣国が攻めてきたってオチなのでしょうか」


 そういうのはありがちだ、別の国が攻めて来ましたーまあ大変! みたいなオチ。

 やれやれ、で、どこの国がアホだって?


「封印されていた邪神が復活しました! 世界の終わりです!」


 なんだ邪神か。


 ふぁ?


 次回 「例の邪神が復活したってさ!」


 リン、大切なものを目指す



 いよいよ最後のエピソードというか物語に入ります

 そんなに長くないですが邪神編をお楽しみください!

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