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第105話 囚われた村人を救出しよう


「リン! 無事だったんだね!」

「ドラゴンに攫われた時はどうなるかと思ったブヒ」


 頭痛も治ったのでほっかむりを取っていると、モブ男君たちがやって来た。

 心配させちゃったみたいだね。


「リンを助けに行こうとしてたら敵が襲って来たんだ。そのドラゴンは一体……」

「この子は私の知り猫というか、冷やし猫だから大丈夫。それよりもモブ男君たちはこのまま村の人たちを山まで避難させて。猫の了承は得てるから大丈夫だよ」


「わかった、でも最初の騒動で捕まった村の人が何人かいるんだよ。助けないと」

「そっちは私に任せて、ちょっと猫と助けに行ってくるから」


 一旦モブ男君たちと別れて、隣国軍が入り込んでいる方へと飛ぶ。


 村の入り口には捕らえられた十数人の村の人が数珠つなぎで縛られていた。

 小さな子供まで縛るとかあり得ないんですけど。


 よく見ると猫を抱えている兵士までいるではないか!

 なんてこった! 猫まで奴隷に連れて行くという噂は本当だった!


「お前たちは戦利品だ! これから奴隷として楽しい毎日が待っているからな!」


 お父さんらしい人が、数珠つなぎの自分の後ろの子供を気遣っている。


「子供は見逃して下さい、この娘はまだ七歳なんです!」

「七歳でもタマネギの皮くらい剥けるだろう」


「そんな恐ろしい事を! タマネギの皮はせめて八歳からでは!?」

「俺は六歳で剥いてたわ!」


「せめてミケは見逃して下さい! 猫を奴隷にするなんてあんまりだ!」

「違うわ! 可愛い猫ちゃんだからモフモフしてただけだ!」


「ふざけた風評被害をかましやがって、槍で突き刺してやる!」


「ひいい!」

「お父ちゃん!」


 兵士が槍を投げたその前に私は降り立った。

 正確には猫に乗った私である。因みに槍は猫の前足の下敷きと化している。


 危ない危ない危機一髪だった。

 あのままだとタマネギと猫コントが始まりそうな嫌な予感がしたのだ。


「な、なんだ!」

「ド、ドラゴンだと!」


「あんたたち! 速やかに村の人たちを解放しなさい! でないとこの猫をけしかけるわよ!」


 他猫本願だけど仕方ない。私が突入したって数珠つなぎに新規加入するだけだし。


「何事だ!」


 なんかまたもや偉そうな奴が出て来たよ。真っ赤な鎧がめちゃくちゃ目立つねこの人。さっきの子爵が指揮官じゃなかったのかな。

 探すとどうやら焚火の前でさっきの子爵は解凍中のようである。


「ジュニア様!」

「こ、こいつです! こいつが子爵様のヒゲを折った犯人です!」

「槍を折ったのもこいつです!」

「とんでもねー悪者です!」


 おいこら、折ったのはあんたたちだよ!

 罪をこっちに擦り付けないでよね、とんだ冤罪が投げつけられてきたよ。投げるのは槍だけだと思ってた。


「父上のヒゲと我が家の家宝をよくも折ってくれたな! この〝真紅のドラゴンスレイヤー〟が相手をしてくれるわ!」


 おいおい、またドラゴンスレイヤーが増えたよ。息子さんかな?

 まだ若いのに二つ名だなんだと、お可愛いこと。


「数年後に当時の自分を思い出して、ベッドの上で転げまわるタイプだね。可哀想に」

「そうだねフィギュアちゃん。私もそうならないように、気を付けようと思うよ」


「それに何あのまっかっか。あれじゃ何をしてても丸見えじゃん」

「世の中には目立ちたがり屋がいるんだよ、モブ男君たちとは正反対だね」


「なんだか知らんが、腹立つ会話が聞こえたような気がする」


 さすがドラゴンスレイヤーは耳はいいんだね。


「息子よ気を付けろ。こいつはかつて吾輩が戦った氷結の魔山のドラゴン〝ヤールミミュルスキュ〟よりも凶悪だぞ」

「父上!」


 あ、子爵が動き出した。解凍は終わったみたいだね。

 運ぶ時に兵隊さんがうっかり二つに折ったりしないか冷や冷やしたよ。


「父上が三日三晩の死闘の末に撃退したというドラゴンですね」

「左様、〝ヤールミミュルスキュ〟は小さい白猫の姿であったが氷を吐く凶悪な奴でな、散々吾輩を転がした後で最後は吾輩に恐れをなして逃げ去ったわ」


 猫が遊ぶのに飽きたんだねきっと。

 もしかしたらこの白猫の名前を聞いたような気がするけど、白猫でいいよね。


「先程は卑怯な不意打ちで不覚を取ったが、今回はそうはいかんぞ!」


 猫がかき氷を作ってくれただけなんだけど、勝手に巻き込まれただけだよあなた。


「白銀のドラゴンスレイヤーと真紅のドラゴンスレイヤーの同時攻撃を食らっては、貴様なぞ一瞬で塵になるわ!」

「はっはっはっは! 相手がなんだか哀れですな父上! あー哀れ哀れ可哀想!」


 さてはこいつ、さっき私とフィギュアちゃんに可哀想扱いされたのを根に持ってるな。


 二人とも、またもや巨大な禍々しい武器を構えている。さすが王侯貴族だ、家宝の武器がいくつもあるようだ。モブ男君なんて鉄の剣でずっと頑張ってるのにずるい。

 世の中にはやばい武器が存在するらしいから、ちょっと不安だよ


「むむ、なにやら身体が右に傾くな」

「父上の左のヒゲが折れているのです」


 ヒゲが折れたらバランス感覚がずれるとか、どこの猫だよ!


「ふん、これしきのハンデ、いくらでもくれてやるわ。吾輩たちがこれくらいで屈すると思うなよ!」


 ハンデ詐欺すぎるわね! もうちょっと接待しなさいよ、あんたもっと上の貴族への接待で慣れてるはずだよね!


「子爵様! 我々も加勢します!」

「俺たちも突入させて下さい!」

「全軍一丸となれば、子爵様のヒゲの分はカバーできるはずです!」


「おお! お前たち! 吾輩は感動したぞ!」

「父上! 涙が止まりません! 我が家はよい家臣に恵まれました!」


 全然感動しないけど! 私は一体何を見せられているんだ!


「ねえリン、ヒゲをカバーするって何? 軍事用語かなにかなの?」

「し、知らないよ。もしかしたらメガネ君のノートに書いてある気がしないでもないけど」


「役に立つもんねあのノート」

「役に立った事あったっけ」


 それにしてもまずいまずい、ハンデをもらうどころか相手の戦力が増えちゃったよ。

 この兵士たちと二人のドラゴンスレイヤーに一斉に攻撃されたら、私たちはもうお終いかも。


 槍で串刺しの後で、隣国の広場で晒し者にされちゃうの?


 やだなあ、もっと可愛い服を着てくればよかった。


 次回 「軍隊百名 VS リン」


 リン、ドラゴン召喚術式を展開する

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― 新着の感想 ―
[一言] 軍隊百名相手に、名を轟かせるね(目をそらしながら) 勇者なんて目じゃないね(目をそらしながら)
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