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第103話 誰だよドラゴンと話を付けるなんて言い出した奴は


 行くと決めたものの、一応後ろにいた他のメンバー、モブ男君とモブ太君とメガネ君にも聞いてみる事にした。


「ちょっと行ってドラゴンとやらと話を付けて来ようと思うんだけど、みんなもいいかな?」


「わしはただの村人Aじゃが」

「わしもただのふっくら村人じゃが」

「わしもただのメガネ村人じゃが」(メガネパリーン)


 ふっくら村人ってなんだよ! それからそこのメガネ、強く押さえ過ぎてメガネ割れちゃってるから!

 毎回毎回このパターンもうやめたいんだけど! うちのモブの衆はどこ行った!


「ごめんごめんリン、リンの事だから間違いなく山に行くだろうと思って用意してたんだよ」

「山登りに備えて身体をほぐしていたブヒ」

「私もメガネをほぐしていました」(メガネくいっ)


 身体はともかく、メガネは何か意味があるんだろうか。


「それにしてもドラゴンと話をつけようとするとは……ドラゴンと会話をしようなんて常軌を逸していませんか」(メガネくいっ)


 散々ドラゴンその他と会話して、常軌を逸していたのはあんただメガネ師。

 今回もそのメガネ能力を存分に発揮してもらうからね。


「今日は天気もいいし、山登りにはいい日だね」

「天気が良すぎで暑いくらいだけどねフィギュアちゃん。こういう日は氷が恋しいよ、氷で固めたトマトのかき氷が食べたいなあ」


『にゃー』


「そうそう、これこれ。この凍ったトマトを削って……ああ、美味しい! フィギュアちゃんも食べる?」

「冷たくておいしーい!」


 久しぶりに食べたよ、村にいた頃は夏の定番だったよね。

 セミの声を聞きながら、縁側に座ってカリマナと並んで食べたなあ。二人揃って頭がキーンてなってたよ。


 私は懐かしさに浸りながら、トマトをくれた相手を見上げた。


 私が凍ったトマトみたいに固まったのがおわかりいただけただろうか。

 そこには巨大な白猫がいて、私を見下ろしていたのだ。


「ひいい! 山の神様のおでましじゃあ!」

「村を滅ぼしにおいでじゃあ!」


 村の衆の慌てぶりから見るに、どうやらこいつが件の山の神様らしい。

 わざわざ山に登らなくても、向こうから来てくれたのだ。これはとてもらくちんである。神様デリバリーなのだ。


 ついでに言うと、私は白猫に咥えられて山の上を飛行中である。どうやら背中に翼が生えているようだ。

 登らずに登山ができるのだ、これもとてもらくちんである。神様宅配便なのだ。


 山の上まで来ると白猫は私を降ろして、またかき氷を作ってくれた。


「い、いよいよリンがモンスターに食べられる日が来たんだね。お供するよ」


 フィギュアちゃんが私の胸元でトゲを握りしめている。


「心配しないでフィギュアちゃん、まだその必殺技を出す日じゃないよ。こいつ、なんか見た事あるんだよね」


 とはいうものの、うーむ、こいつこんなにでかかったっけ? 他猫の空似だろうか。

 でも私にかき氷をくれる猫なんて、世の中にそんなにいないんじゃないかな?


「久しぶりだねえ、白猫。見ない間に随分大きく育ったけど、あんた子供を食べたりしてないでしょうね? 黒猫は冤罪だったんだけどさ」


『にゃー』


 なるほど、わからん。


「ねえリン、これ何?」

「さっき言ってた白猫だよ。黒猫と同じく、私の古くからの馴染みの猫なんだ」


「猫じゃないってこれ、猫ドラゴンだよ!」


「そっかー、背中に翼あったし変わった猫だと思ってたんだー。昔はこいつちっちゃかったし、なかなか気が付かないもんだね、びっくりしちゃったよ」

「氷を吐いてる時点で気が付くべきだったんじゃないのかな。私がその事にびっくりしたよ」


 私が村を出て四年、どうしてるのかと思ってたけどここにいたんだね。尤も、ここから私の村まで飛んで遊びに来てた可能性もある。


「あんたこんなとこで神様なんて呼ばれてたんだ」


『にゃー』


「山に入ったら村を滅ぼすって本当なの?」


『にゃー』


「皆を山に避難させてくれる?」


『にゃー』


 うむ、わからん。


 誰だよドラゴンと話を付けるなんて言い出した奴は。頭がおかしいだろ、常識で物を考えろ。


「ねえリン、地面にマルとバツ描いてさ、オーケーならマル、否定ならバツに前足を置いて貰おうよ」


 フィギュアちゃん、もしかして天才じゃないだろうか!


 まず地面にマルを一つ書く。フィギュアちゃんがそのマルに片足で乗った。


「何でフィギュアちゃんが足を乗せたの?」

「ごめんリン。マルを見たら、私の中でけんけんぱ熱が高まってしまって、足を置いて〝けん〟しないといられなくなったんだよ」


 改めて地面に大きなマルとバツを描いて村人を山に入れていいかを聞くと、猫は私を咥えてマルに置いた。

 足を置けって言ったのに、何故私を置いたのか。


「それじゃあ村に知らせたいから、私をまた村まで乗せてって貰えるかな?」


 猫はまた私をマルに置いた。

 猫との意思疎通はなかなか大変なものなのだ。


 白猫がまたかき氷を作ってくれた、これで三杯目である、大盤振る舞いだね。

 でもさすがに頭が痛くなってきたので、ほっかむりを巻いた。


 向こうでけんけんぱをして遊んでいたフィギュアちゃんを回収すると、白猫が私を背中に乗せてくれる。


 白猫の背に乗って山の麓に飛行中に、村の方から何やらきな臭いものを感じた。嫌な予感がする。


 村の方角を見ると黒い煙が立ち登っているではないか。

 それを確認したと同時に飛んで来たのは利根四号ちゃんである。


「大きい子ちゃーん! 大変だよ、村に軍隊がやって来たよ!」

「一歩遅かったのかな!」


「あいつらおまんじゅう屋さんのおっちゃんの屋台に火を点けたんだよ、ちょー許せない! 人類って何であんな恐ろしい事をしでかすのかわかんない! おまんじゅうを焼くなんて!」


 利根四号ちゃんがぷんすかしている。

 あの煙はお饅頭を焼いている煙か、どうりで香ばしい気がしたよ。


「大丈夫だよ利根四号ちゃん、焼き饅頭も美味しいから」

「焼きまんじゅう! 人類ってもしかしたら天才なの?」


 ぷんすかしていた利根四号ちゃんが、目をまんまるにして驚いている。


「まあ、とりあえず何でも焼いて食べてみるおっちゃんはどこにでもいるからね。何でもとりあえず塩かけるおっちゃんと同じ種族だよ」


 お饅頭の件はこれで解決したとして、問題なのは隣国の軍隊か。

 他の家や村人に火を点けない内に急行しなきゃ、とにかく山に逃げられる事を教えてあげて村人たちを緊急避難をさせないと危ない。


 私を乗せた白猫は村の上空に入った。

 見ると入って来た軍隊は味方ではなく、やはり隣国の軍のようだ。掲げている軍旗が違うのだ。


 今回の戦争で初めて私が遭遇した侵略軍だ。


 私の脳裏に、さっきまでお祭りをしていた村の人たちの笑顔が浮かぶ。

 侵略軍が怖いと言っていた村の人たちの怯えた顔が浮かぶ。


 その人たちに隣国軍が襲い掛かったのだ。

 逃げ遅れた母子に槍を構えて襲い掛かる兵士の姿が見えた。


 ふざけるなああ――!


 次回 「敵の名は白銀のドラゴンスレイヤー! でもポンコツ化した」


 リン、神様のふりをして速攻でバレる

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