38 決着
お久しぶりですね。ごめんなさい。
アヴァデスの剣とタルトの脚と糸を纏った左腕がぶつかり合って拮抗状態が生まれた。
「お前が来たということは彼らは負けたのか。」
アヴァデスがポツリと小さな声で呟いた。それにタルトが応える。
「そうだよ。私が勝った。そしてお前もここで私たちに負ける!」
タルトがアヴァデスに右手を向け、その右手から切断属性の糸が放たれる。
「我は同族の犠牲を決して無駄にしない。ここで負けるのはお前たちだ!」
アヴァデスは後ろに飛んで宙で身体を捻らせて糸を避けると、タルトから距離を取る。
タルトはカウンターを警戒してか追撃をしなかった。おそらくなんらかの反撃が来ても私たちを守れるためにだろう。
「ありがとうタルト。おかげで命拾いしたよ。」
私はどうにかして一人で立ち上がる。
「タルト。【魔獣共鳴】ってあとどのくらいもちそう?」
「だいたいあと二分くらいかな。」
「わかった。」
イルアとタルトが何かの相談を始めた。相談はすぐに終わってイルアが私の耳元で内容を話す。
「今から、約二分間、私とタルトで、時間を稼ぐ。そして、タルトの【魔獣共鳴】が、切れる直前に、大技を撃ち込む。だから、レティアちゃんには、これから稼ぐ時間で、少しでも回復して、一緒に大技を撃って、ほしい。」
「……わかった。回復に徹する。時間稼ぎを頼むね。」
「任せて。」
会話が終わると、イルアは振り返ってタルトと並んだ。
「行くよ、アヴァデス。」
「あぁ、こい。」
タルトとアヴァデスがぶつかり合う。お互いがお互いを殺しうる一撃を求めて高度な近距離戦が繰り広げられる。イルアはアヴァデスの追撃を潰したり、タルトの体勢を直す時間を作ったりと適切なタイミングで風魔法を放つ。もちろん、それだけではなく強力な魔法の準備を始めている。
「…っ!」
二人の戦闘を見ていると、現在回復することしかできない私が不甲斐なく感じられる。
「コォーン。」
「ハク。」
私が自分の不甲斐なさに打ち震えていると、いつのまにか隣にハクが来ており、私の腕に身体を擦り付けた。
「そっか。ハクもなんだね。」
「コォーン!」
ハクと触れ合ったことで、ハクも私と同じ気持ちを抱いていることがわかった。
自分への不甲斐なさや悔しさが強く感じられる。
「でも、こんな私たちをタルトとイルアは頼ってくれた。だからそれに応えよう?一人じゃあ無理かもしれないけど、私とハクならできるから!」
「コォーーン!!」
もうそろそろ二分になる。私のHPもMPも大技を撃ち込めるくらいには回復した。
「やろう、ハク。」
「コォーン!」
私は流れ出た大量の血を【操血】でかき集めて一本の大剣を作り出し、MPを込めて強化する。そして身体が軋むのを感じながら血の演舞を再び発動させた。
全身が熱くなり力が湧き上がる。私はゆっくりと大剣を振り上げた。その振り上げた大剣に、ハクが生み出した火と桜が混ざっていく。
剣は一回り大きくなって鋭利になったように感じ、血の紅に桜のピンクが混ざって美しい色に変化した。さらに、大剣がハクの火を纏った。
「タルト、イルア!準備できた!」
「わかった!私に合わせて!」
タルトが左手を後ろに伸ばすと左手から伸びた糸が編まれて大きな獣の爪を作り出し、それをタルトの正面にあるもの全てを薙ぎ払うかのように振った。
アヴァデスはどうにかして避けようとしていたが、いつのまにかタルトが糸で動ける空間を狭めていたり、足に攻撃性能を捨てたかわりにアヴァデスの剣ではどうすることもできない程の頑丈さを持つ糸を巻きつけていて後退するのを防いだりと、逃げることも避けることも出来なかった。そのため、アヴァデスは剣を地面に突き刺して受け切ることを選んだ。
異常なほどの火花を辺りに撒き散らし、糸と剣はぶつかる。結果は、糸自体の攻撃は受け切られたが剣を破壊することができたというものだった。糸と剣のぶつかり合いが終わった直後、タルトの【魔獣共鳴】が解除され、アヴァデスの動きを封じていた糸が消えた。
糸がなくなり体勢を立て直そうと後退するアヴァデスにイルアが準備していた強力な風魔法が襲い掛かった。アヴァデスは一瞬の判断の後に、両腕を前に出して風魔法を受け止めた。この選択で両腕がボロボロになったが、アヴァデスは生き残ることには成功していた。
私の目に、両腕がなぜ繋がっているのか分からないほどボロボロになったアヴァデスの姿が映る。剣もなく両腕は使い物にならない。これだけダメージを与えてくれたタルトとイルアに感謝をしてから最後の一撃になるだろう一撃を放つ。
「これで終わりだあぁぁぁ!!」
「コォォーン!!」
タルトとイルアの攻撃の時に、羽でアヴァデスの上に移動していた私はアヴァデスに向けて急降下して大剣を振り下ろす。
大剣はアヴァデスの右肩から腰の左までをばっさりと斬り裂いた。アヴァデスの身体が左右にずれる。皆、動きを止めた。再生する気配はない。勝ったのか?そう考えていると、
「見事、な、戦いだった。」
息絶え絶えのアヴァデスの言葉が聞こえた。
「このような、戦いの末に、敗北して死ぬのなら、後悔はない。ただ、同族に、申し訳ないが。」
「「「「…………」」」」
「本当に、良い、戦いだった。」
最後にアヴァデスはそう言って息絶えた。
「……勝った?……勝ったんだ!私たち、勝ったんだ!」
アヴァデスの最後を見届けてから、タルトが一番最初に喜びの声を上げた。
「レティアちゃん!」
タルトが私に駆け寄ってくる。それに少し遅れてイルアがついてくる。ハクはもう私の左肩の上に移動していた。私は【操血】と血の演舞を解除する。そして、みんなで勝利の喜びを分かち合おうとした時だった。
急に全身に悪寒が走って、このままでは死ぬと直感した。それはハクやタルト、イルアも感じたらしい。私は瞬間的にタルトとイルアの元に移動すると、この部屋に繋がっていた通路へ向けて二人を放り投げ、私自身もその通路へ向けて走った。
次の瞬間、洞窟の天井がなんらかの攻撃で壊されて崩落し、日光と一体の魔獣の鋭い眼光が洞窟内に差し込んだ。
その魔獣は地面に倒れ伏す私を凝視する。
自然と身体が恐怖で震える。それもそのはず、私を凝視する魔獣は、生態系の頂点に君臨するとされている龍だったからだ。
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