35 血の剣舞
また日曜日を超えてしまった。
「がはっ!」
全身に痛みが駆け巡る。視界が明暗する。意識が飛びそうになる。
「コォーーン!!」
「レティアちゃん!」
ハクとイルアの声が聞こえて、途切れそうな意識を無理矢理繋ぎ止める。
痛い。熱い。斬られた腹部が熱く感じるほどの痛みを訴えかけてくる。斬られた腹部からは血が溢れ出る。
[耐性スキル【痛覚耐性】がLV2から3になりました。]
【痛覚耐性】のレベルが上昇すると同時に痛みが少しだけ和らいだ気がする。
そして普段と変わらない無機質なシステムの言葉が、私に妙な落ち着きを与えてくれた。私は痛みの中で思考を巡らせる。
とりあえず異常種に【鑑定】を発動させる。直後、脳に弱い電流が流れるような感じがしてステータスを見れなかった。
【鑑定】が弾かれた。ただ、使う前からなんとなく失敗するような気がしていたのであまり気にしないことにする。
次に行うべきは受けたダメージの確認。
腹部から大量の出血。重症だろう。しかし、【自己再生】で回復すれば戦える。ダメージ面はあまり気にしなくてもいいだろう。
重要な問題は血剣の方だろう。
異常種の剣とぶつかって砕け折れた光景を思い出す。先程の一撃は血剣で少しでも止めていなければ傷が深くなり致命傷になっていただろう。異常種に勝つには最低でもあの剣と渡り合えないといけない。
「ふぅ、」
私は痛む体に鞭を打って立ち上がる。
その様子を見た異常種が驚きを顔に浮かべる。
「ほぉ、先程の一撃を受けて立ち上がるのか。格下とはいえお前がリーダーのようだったから最初から潰すつもりで打った一撃だったのだがな。少々見直したぞ。」
無言を貫いていた異常種が私に声をかけてきた。
「私は…こんなところで…死なない。絶対に……お前を倒す。」
私は【自己再生】で腹部の傷を再生させて、【操血】で流れ出た大量の血を一本の剣へ凝縮する。先程よりも耐久性があり鋭さを持った、紅き輝きを放つ血剣が生み出された。そしてその血剣にMPを込めて更に性能を強化する。
戦いが始まる前にルアに教えてもらったのだが、【操血】はMPを消費して効果を強めることができるらしい。なので、私はMPを消費して鋭さと耐久性をあげた。
ちなみに他のスキルにも同じようなことが出来るらしく、習得しておいた方が良いと言われて急いで習得した。
これで血剣は異常種が持つ剣と渡り合えるだろう。あとは私だけ。私がハクとイルアの支援を含めて異常種と渡り合えるようにならないといけない。
「私が……出せる力の全てを……お前にぶつける。そして、私がお前を倒す!」
「やってみろ、小娘!」
異常種が私に斬りかかってくる。
私は異常種が斬りかかってくるのを確認すると、【操血】と【血流操作】を同時に発動させた。体内の血を対象にして。
「…ッ!」
【血流操作】によって全身を流れる血の速度を上昇させる。すると全身を流れる血の動きが活発になり、全身が激しく熱を帯びる。するとこの熱で一時的に身体能力が著しく向上する。
私が格上との戦いの時に対応できるように編み出したスキルの合わせ技。
血の演舞
血の演舞は発動させれば格上の相手とも渡り合えるようになる強力な身体強化の技だ。しかし、発動させるのならば当然代償がある。
これを発動している間は早く流れる血液の影響で常に全身に負荷がかかり、血管は熱で焼き切れるという末路を迎える。つまり、発動中は激しい痛みが身体を蝕み続ける。血の演舞を使い続ければ戦っている最中に死が訪れるだろう。
そんな代償があることを理解しながらも私は躊躇いなく発動させた。
「さぁ、私と殺し合いをしよう!」
全身が熱を帯びると同時に力が溢れ、身体に痛みが満ちた。
血剣を有り余る力に任せて横に振る。
再び私の血剣と異常種の剣がぶつかり合う。
今度は血剣が砕けることはなく、そのままつばぜり合いになる。
「舐めるなよ小娘!」
「ッ!」
いくら血の演舞で異常種と戦えるくらいには自分を強化しても、元々の大きなステータスの差があるからか血剣が後ろに弾かれた。
弾かれた血剣につられるように後ろに飛ぶ。立て直そうと距離をとろうとした私の身体が無防備になる。その隙を見逃さずに異常種は私に向けて剣を振り下ろす。
振り下ろされた剣は、突如横から飛んできた桜の花弁と風属性の魔法によって異常種が後ろへ下がったことで私の身体を切り裂くことはなかった。
「私たちを、忘れない、でね。」
「コォォーン!」
ハクとイルアが異常種を睨みつける。
血の演舞を発動させた状態の私でも異常種には届かなかった。だけどこの場にはハクとイルアがいる。一人では届かなくてもハクとイルアがいれば届く!
「はぁぁぁぁあああ!」
体勢を持ち直した私は即座に地面を蹴り高速の突きを繰り出した。それは異常種の剣を弾いて脇腹を僅かに斬り裂いた。
異常種が再び驚きを顔に浮かべたのを至近距離で私は見ていた。
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