32 始まる戦い ゴブリン編
テストがある。だるい。
部活で書く時間が。あっあっあ。
グレストから走って来て十分程。南西の森に何事もなく到着した。
タルトやイルアによると、普段なら動物や魔獣が道中で姿を見せるらしいが一匹たりとも遭遇することはなかった。おそらく森の異変を感じ取っているのだろう。
嵐の前の静けさのように、生物等の声は聞こえずただ不気味な風の音だけが聞こえる。
「ここからは気を引き締めないとね。」
「うん。いつゴブリンと遭遇してもおかしくないしね。」
それにしても、スタンピードが発生してることを知らずにこの森を探索していた数時間前の私とハクはこの森にこんなに早く戻ってくることになるなんて思わなかっただろうね。
私は【操血】を発動させて一本の剣を作り出し、即座に振れるようにしておく。ハクは【拡大縮小】を解除して元の大きさに戻り、辺りを警戒するように小さく動き回っている。タルトはチャクラムを構え、イルアはタルトの死角を潰すように位置取る。
「行くよ。」
私たちは普段と違う一面を見せる森に踏み込んでいった。
―――
――
私とハクはなるべく痕跡を残さないようにして木々の間を駆け抜けていく。しばらくすると小さな洞窟の入り口を見つけた。
「ここはハズレみたいだね。」
「コォーン。」
中を覗いてみるがゴブリンの気配はない。私は手元の地図に目を落として印をつける。
「とするとタルトとイルアの方かな。」
私はルアに渡された地図を眺めながらハクと話す。
この地図にはゴブリンのスタンピードの拠点となっている可能性のある場所がルアによってピックアップされている。
現在は私とハク、タルトとイルアで二手に分かれて拠点探しをしているところだ。
「ひとまず合流場所に戻ろう。」
「コォーン。」
私とハクは予めタルトとイルアと決めていた合流場所に向けて駆け出そうとした時、バンッという爆発音が聞こえた。
「この音はイルアの魔法!?二人に何かあったのかも!?」
「コォォーン!?」
私はハクを抱えると羽を展開し、【飛翔】を発動させて木々の間を通り抜けながら音のする方へ全速力で向かう。
ゴブリンの異常個体との戦闘前に魔力を消費するのはなるべく避けたかったが二人の危機かもしれないため、戸惑っている場合ではない。
私は木を蹴って加速することで魔力の消費を減らしつつ限界以上のスピードを出して戦闘音の聞こえる方は向かう。
戦闘音がだんだん近くなる。
「タルト!イルア!」
私は二人の名前を叫んで戦闘が行われているであろう場所へ躍り出る。
「レティアちゃん!?」
「ハクちゃん、も。」
そこには戦っていたであろうゴブリンを全て倒していた二人がいた。ひとまず二人に何もなくてほっとした。
「大丈夫?イルアの魔法の音がしたから何かあったと思って心配で。」
「そっか。心配してくれてありがとう。私とイルアは無事だけどバレちゃったから作戦が……ごめんレティアちゃん。」
「警戒が、足りてなくて、見つかってしまった。ごめんなさい。」
タルトとイルアが謝る。
「ううん。二人が無事で良かったよ。」
「コォォーン!」
「レティアちゃんもハクちゃんも心配してくれて本当にありがとう!」
「私からも、ありがとう。でも作戦、どうしよう。バレちゃったから、元々の作戦が……」
「大丈夫だよ。隠密で進むという元々の作戦は完全に失敗だけど気にすることはないよ。バレちゃったのなら正面突破すればいいだけだからね!」
私はそう言うと【操血】で複数本のナイフを空中に作り出し、【血流操作】で一斉に射出した。
「グギャ!」「ガアッ!」「グゥア!」
こちらの様子を草むらから伺っていたゴブリンを打ち抜く。
「スタンピードの拠点はこの先の洞窟?」
「うん。そこからたくさんゴブリンが出てきてた。」
「じゃあ正面突破で戦わないといけないやつだけ戦って最低限の消耗で異常個体のところまで行く。倒したら援軍を待って残りを殲滅する。作戦はこれで行くよ!」
「「わかった!」」「コォォーン!」
「前衛は私とハクでやる。タルトとイルアは後衛で支援を頼むね。」
「「任せて。」」
私たちはスタンピードの拠点となっている大きな洞窟に侵入し、進行を妨害しようとしてくるゴブリンだけを私とハクで斬り殺していく。
幸いなことに洞窟は複雑な構造をしておらず迷子になることはなかった。それは逆に大量のゴブリンが一度に私たちへ来ることを示していたが、どんなに来ても私とハクが数の軍勢に穴を開け埋まる前に通り抜けて最小限の消費だけで切り抜けた。
(このまま四人で異常個体のところへ行ってさっさと殺してやる。)
私はそんなことを考えた。
この先に待ち構えている本当のスタンピードの脅威を知らずに。
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