21 助けてあげよう
いつも以上に書いては書き直してをしていたので、いつもよりも時間がかかりました。毎日投稿している人本当に凄い。尊敬してます。
【sideタルト】
私は目の前に迫る二体のゴブリンを確認すると、右手の親指と人差し指に挟まれた円形の刃を持つ武器……チャクラムをゴブリンの首目掛けて投擲する。続けて左手のチャクラムの穴を指で回して投擲する。
投擲されたチャクラムは、ゴブリンが防御しようと前に出した剣を半ばから断ち、そのまま首を切り裂いた。切り裂かれた場所からは勢いよく血が吹き出し、すぐに二体のゴブリンは大量出血で倒れた。飛んでいったチャクラムは空中で弧を描くように軌道を変え、こちらを木の上から狙っていたゴブリンアーチャー二体を背後から切り裂いた。背後からの攻撃に気付かなかったゴブリンアーチャーは、背中を大きく切られ木から落下して動かなくなった。
「今のうちにイルアは逃げて!あとは私がどうにかするから!」
私は戻ってきたチャクラムを回収しつつ、背後に倒れているパーティーメンバーに声をかける。
「タルト一人じゃどうにもならないよ!私も…」
「ダメ!普通のゴブリンの集団にこんなに多くのゴブリンの上位種がいるということは魔獣反乱の兆候!このことを誰かがギルドに伝えないといけないの!今はイルアにしかできない!」
他に頼めそうなパーティーを組んでいた冒険者達は、すでに周りで事切れた遺体になっている。
「大丈夫。あれを使うから。だから早く…」
今度は左右同時に、しかもイルアを狙って襲ってくるゴブリンの上位種……ゴブリンナイトにチャクラムを投擲する。チャクラムが飛んできていることに気付いたゴブリンナイトは剣を振りチャクラムを弾く。さすがに剣を上手く扱えるように進化したゴブリンナイトは普通のゴブリンとは違いチャクラムを剣で弾いた。弾かれたチャクラムは先程と同じように空中で軌道を変えて私のところに戻ってくる。
倒せなかったが問題はない。少しだけ時間が稼げればよかったからだ。イルアが走り出し、私がとあるスキルを使える時間が稼げれば。私がそのスキルを発動しようとした時、桜の匂いと桃色の風が辺りを吹き抜けた。
直後、桃色の風に当たった二体のゴブリンナイトが切り裂かれた。大量の血をばら撒きながらゆっくりと倒れていくゴブリンナイトの体には数多の切り傷があった。
「「!?」」
突然の出来事に私とイルアは驚いて目を見開いた。驚いたのは私たちだけではなくゴブリンの方も驚いており、私たちを囲んでいるゴブリンとその上位種が呆然としている。
「――はぁっ!」
次に力強い、しかし年端もいかない少女のような声が上から聞こえ、盾を持ち高い耐久をしているゴブリンタンクが真っ二つにされた。
「「!?」」
再び驚きに襲われ、そして絶句した。なぜなら、それを成したのは先ほどの声から簡単に想像できるような少女だったからだ。
少女は刀身が80センチ程もある紅い剣で、耐久の高さなんて関係ないと嘲笑うかのようにゴブリンタンクを一刀両断していく。
その光景に目を奪われていると、もう一度桃色の風が吹き、私たちを囲んでいたゴブリンとその上位種を蹂躙してのけた。
さっきまでの絶望的な状況が一瞬でひっくり返され始めていた。それを成したのは目の前に佇む一人の少女と桃色の風を纏い少女の隣に立つ一頭の狐の魔獣。一人と一頭の活躍により、今生き残っているゴブリンは、後ろで戦っている様子をひたすら傍観していた三体のホフゴブリンだけとなっていた。そして今、そのホフゴブリンが怒りのこもった目で少女と魔獣を睨みつけると、闘志を漲らせ少女と魔獣に殴りかかった。
◇
ゴブリンに奇襲をかけた私とハクは、まず最初にハクが【千桜花】で生き残り二人を襲おうとしているゴブリンを切り裂き、その次に二人を囲んでいるゴブリンを切り裂いてもらった。私は高い耐久と盾で【千桜花】を耐え切ったゴブリンを、【操血】で作り出した長剣を使って真っ二つにした。
【鑑定】を発動させると、私が切ったのはゴブリンタンクというゴブリンの進化した個体であり、盾を使いこなし高い耐久が特徴だがその代わり敏捷が低いということがわかった。
「ハク、盾持ちは敏捷が低い!フェイントで背後に回り込めば倒せる!」
「コォォーン!」
私はゴブリンタンクをもう一体背後から両断すると、ハクにゴブリンタンクの攻略法を教えた。
まだレベルの低いハクになるべく多くの経験値を与えたいため、私はなるべくハクのサポートになるように動く。といってもハクの【千桜花】が集団戦が中心のゴブリンと相性が良く、私のサポートはあまり必要ではなかったが。
「あとはあいつらだけだね、ハク。」
私はこちらを睨みつけてくる三体のホフゴブリンを睨み返した。ハクも【拡大縮小】の効果を解除して元の大きさに戻る。
「やるよ、ハク!」
「コォォーン!」
闘志を漲らせて私たちに向かってくるホフゴブリンを迎え撃とうと、ハクの爪が赤色に輝き火を纏う。どうやら火属性魔法を自分の爪に纏わせたようだ。ハクはホフゴブリンに向けて駆け出していくと、一体目のホフゴブリンの棍棒の叩きつけを避け、右前脚の爪で右肩から左脇腹へと大きく引っ掻いた。
「GUAAAAA!!」
肉の焼ける匂いと共にホフゴブリンが叫び声を上げた。さらにハクは、火球を作り出すと傷口を中心的に当てていく。あまりの痛みで動けなくなったのか、そのホフゴブリンはその場で膝をつき倒れた。
次に攻撃直後のハクの一瞬の硬直を狙ったのか、二体目のホフゴブリンがハクの避けづらいタイミングで殴りかかった。ハクの頭を完全に捉えた一撃は、私が肩から右腕を切り離したことによりハクに当たることはなかった。
「GIAAAAA!!」
一体目のホフゴブリンと同じような叫び声を上げ、すぐに途絶えた。ハクのカウンターが二体目のホフゴブリンの頭蓋骨を砕いていた。私は息つく間もなく次の行動に移る。
「――てぇりゃあぁ!」
ハクのカウンターで頭を失い倒れるホフゴブリンの死体を踏み台にして跳躍する。生き絶えたホフゴブリンの背後には、大剣を振りかぶった三体目のホフゴブリンがいた。そいつは私たちを危険と判断したのか、仲間の死体を切ることになるのも顧みず、躊躇いなく大剣を振り下ろし強烈な一撃を繰り出した。私は羽を展開すると同時に【操血】を発動させて長剣を強化すると、続けて【飛翔】を発動させ空中で受け止めようと試みる。
「くっ、重い……ッ。」
大剣が空中で止まる。しかし、確実に筋力のステータスが負けており、さらに相手に上を取られていることから少しずつ押されていく。だんだんと腕が痺れてきた。地面に足がついていれば衝撃を受け流せるが今は空中で受け流すことができない。私はこの状況を打破すべくホフゴブリンの体を思いっきり蹴り、後ろへ飛んで後退する。
後退した私に追撃を入れようとホフゴブリンが距離を詰めてくる。体制を急いで整え長剣を構える私の前に、ハクが立つ。そして、ハクがホフゴブリンに向けて鋭く吠えると熱風が吹き荒れた。
【千桜花】に【火属性魔法】を纏わせて起こしたと思われるハクの熱風は、私に迫っていたホフゴブリンとその後ろの木々数本を完全に焼失させていた。
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