16 牙角猪
書くこときれたかもしれない。
「まずは相手のステータスを確認しておかないと。【鑑定】」
こちらに向けて突進してこようとする猪と鹿が混ざったような魔獣に向けて【鑑定】を発動させる。
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名前:なし
種族:牙角猪 C+
LV:16/50
HP:700/700
MP:500/500
筋力:525
耐久:550
敏捷:570
魔力:480
【牙角猪】 ランク C+
牙と角の攻撃が特徴的な魔獣。力が強く、木をへし折って食べる。魔樹が大好物であり、一つでも食べるとステータスが大幅に上昇し、特異個体に変化する。力だけではなく、全身の皮膚が硬いため、耐久も高い。また、敏捷が高い点も厄介であり、最高速度は時速80キロに届く。
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「結構強くなったと思っていたんだけど、自信をなくすね。」
ステータスが全てにおいて私の2倍以上だった。ランクも一つ上だし。というか筋力と敏捷が高いだろうとは思っていたけれど、耐久まで高いのは予想外だった。
(とんでもないことに首を突っ込んでしまったかもしれない)
正直に言って、こんなやばい奴と戦うなら来たくなかった。助けたいとは思ったけれど、あくまで自分の命が最優先。レティシアの願いを叶えるためにもこんなとこで死ぬわけには行かない。数秒前に「戦いを始めよう」とか言った自分を殴りたくなった。
「GAAAAAAA」
牙角猪が猛スピードで私に突進してくる。
倒せるかわからないけど、ひとまずやってみるしかないか。戦いたくなくても協力するって決めたからね。
「どんなに無謀なことでも逃げるわけにはいかないんだよ!」
目の前には私が追いつくことのできない速さで突進してくる一頭の魔獣がいる。このままだと轢き殺されるだろう。私の背中から一対二枚の蝙蝠のような羽が出現する。私は【飛翔】を発動させ、牙角猪に向けて地面を蹴る。それと同時に羽を羽ばたかさせ、私の体が宙に浮く。牙角猪は浮いた私の下を走っていく。その時に【操血】で作った長剣を右下から左上に切り上げるように動かして、牙角猪の背中を切り裂いた。
「GUUAAAA」
避けられた突進は、その先に生えていた木を一本へし折って止まった。止まった牙角猪は私に振り返ると怒りが込められた咆哮をあげた。私が付けた背中の切り傷は浅く、結果は相手を怒らせただけのようだ。
「ちっ、硬すぎだろ。」
舌打ちをして悪態をつく。相手の突進の勢いを利用して切ったのに、与えたのはかすり傷程度の怪我。私では牙角猪に有効なダメージを与えられないかもしれない。
牙角猪は再び私に突進をしようと構え、そして私の後ろから飛んできた火球によって体を焼かれた。後ろを振り向くと、複数個の火球を空中に浮かべた狐の魔獣がいた。
「コオォォォオオン」
「GUAAAAAA」
体が燃えていることを気にも留めず、牙角猪は咆哮をあげる。そして、今度は狐の魔獣を狙って走り始めた。それを迎撃するように、狐の魔獣は浮かべている火球を次々に牙角猪に当てていく。しかし、牙角猪は止まらず走り続ける。
(炎に耐性があるのか?まずい!!このままだと狐の魔獣に当たる!!)
「避けろ!!」
「コォォン!?」
何発も火球を当てても止まらずに向かってくる牙角猪を見て、狐の魔獣が驚いたような鳴き声をあげ、牙角猪が迫ってくる恐怖のせいか、体を硬直させた。
それを見た私は急いで【飛翔】を発動させ、MPを消費することで速く飛び、狐の魔獣との間に割り込もうとする………が間に合わない。悪あがきとして長剣を足に向けて投擲する。投擲された長剣は牙角猪の右前足に刺さったが、勢いを少し弱めただけで突進が止まることはなかった。
(ごめんなさい。助けられないかも。)
私に助けを求めてきた桜の声に心の中で謝る。できれば助けてあげたかった。そんなことを思った直後、桃色の風が牙角猪の体の左半分を抉った。桃色の風は目を凝らして見ると鋭利な桜の花びらが大量に集まったもので、桜の良い匂いに血が混ざった独特の匂いがした。
『家族がやられそうなのに私が助っ人を呼んだだけで何もしないわけないでしょ。』
私を呼んだ桜の声が辺りに響く。その声を聞いた狐の魔獣が硬直から復帰し、無事を確認するかのように桜の木に走って行った。
『さぁ、止めを刺しちゃって。レティア。』
「なんで私の名前を知っているの?まぁ今は気にしないことにするけど。」
体の左半分が抉られ、大量出血をしたことによって痙攣をして倒れている牙角猪の前に立つ。一応まだ生きているらしく、弱い呼吸が聞こえてくる。
「今楽にしてあげる。」
【操血】で短剣を作り出し、腹部から心臓に突き刺す。腹部は耐久が高くなく外皮とは違って簡単に切ることができた。
[牙角猪を討伐しました。レティアは経験値1200を獲得しました。]
[レティアのLVが8から14になりました。]
システムの言葉が聞こえ牙角猪が生き絶えたことを確認すると、その場に座り込む。
「生き残った。手助けがなかったら死んでたね。」
自分では気付いていなかったが、結構疲労が蓄積していたようで、地面に転がるとそのまま寝てしまった。
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