プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
とある場所の地下室
いくつもの培養槽が並んでいる。ただし、ほとんどはひびが入っていて、元の形がわからないほど粉々になったものまでそこにはある。そこに1つだけ機能が止まらずに稼働している培養槽があった。その中には十代になったばかりのような少女が入っている。腰まで届く黒い髪、すぐに壊れてしまいそうな、まるで人形のような、華奢な体をしている。
そして今、その少女が培養槽から解放されようとしていた。
[特殊条件を満たしました。ヴァンパイアドールは、レッサーヴァンパイアに進化します。]
静寂な地下室の空間を破ったのは、システムの言葉。その言葉とともに、培養槽の中の少女は肉体が作り替えられていく。少女の肉体は進化の光に包まれ、光が消えると同時に培養槽が粉々に砕け散る。少女の肉体は外に投げ出され、培養槽は機能を停止した。
「げほっ、げほっ。」
少女は少し咳き込むと、金と銀のオッドアイの目で周りを見回した。辺りは、瓦礫が散乱していて、今まで自分が入っていたであろう培養槽のガラスの破片が飛び散っていた。すると、自分の入っていた培養槽から少し離れたところの机に手紙と思われるものや服、武器などが置いてあるのを見つけた。
「………」
少女はゆっくりと立ち上がると、机を目指して震える足でゆっくりと歩いて行った。机まで歩いていくと、少女は最初に、置いてあるタオルで培養液で濡れている体を拭くと、服を着た。黒いワンピースを着た少女は少し満足したような表情をしたが、すぐに無表情に戻ると次に手紙を手に取った。折り畳まれて置かれていた手紙をゆっくりと開いていき、書かれている文章を読んでいく。
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レティアへ
この手紙を読んでいるということは進化して培養槽から出られたということだろう。さて、誰が書いたかわからない手紙など読みたくないだろうし、名前を教えておこう。私は、
レティシア・アンノウン 君……レティアの先代の魔王であり、君を造った創造主だ。説明すると長くなるだろうから簡潔にまとめよう。私の持つ魔王というスキルを継承し、平和な世界を守ってほしい。それが私がレティアを造った理由だ。
魔王というスキルは争いを起こす。それを防ぐために私は魔王に対抗する存在である勇者と手を組み、魔族と人との間で行われていた戦争を終わらせ、人と魔族が共存できる世界を作り出した。しかし、魔王というスキルの持ち主が死ぬと、魔族の中で一番強い奴にスキルが継承される。継承されると最悪、再び魔族と人との戦争が始まるかもしれない。それを防ぐために、私は自分の意思を継ぎ、魔王のスキルを継承してくれる存在、すなわちレティアを造り出した。
私がレティアに頼みたいのは、魔王のスキルを奪われずに意思を継ぐ魔族に継承していき、世界の平和を守ることだ。私は死ぬ。だから、未来の…目覚めたレティアに…頼みたい。私達の意思を永遠に未来へとつなげていくことを。
レティシアより
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「!?」
少女が手紙を読み終えると、手紙は突然光始め、少女を飲み込んだ。
[レティシアの一部の記憶とレティシアの通常スキルの一部が、レティアに継承されます。]
初心者ですが、しばらくの間、お付き合いしていただけたら、幸いです。