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最果ての世界へ  作者: 律稀
未知の里、不思議な少女
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 アルビノはレオナルドに告げられたことを頭の中で反芻していた。ナクラに住んでいたレオナルドでさえも幻のような存在だと言う魔法使い。もし、見つかったならサイロがどのようになってしまうのか。それを考えるだけで背筋が凍る。実感を伴ったものは初めてだった。


 彼女の過去からして、身分の高い人という物が珍しいものを貴ぶのも、危険視するのかも理解していた。サイロに関しては───確実に後者なのだ。刑に処される? 殺される? それとも、心を壊され服従させられる? アルビノは吐き気に襲われた。


(もし、ナクラへ行ってサイロが危険に侵されるのなら)


 行かない方がいいだろうに。計画がどのようなものか、それがどんな意味を持つのか知らないアルビノでは無い。しかし、()()の持つ消失への恐怖心はアルビノだけの手に負えるものではなかった。






 ノースはアルビノの様子の違いをきちんと分かっていた。理由は知らずとも、彼女がなにかに怯えているのだと。獣人の、しかも犬の獣人であるノースの鼻は鋭い。小さな異常だとしても、誰よりも早く気がつくことが出来る。


 ───アルビノの名が、アルビノでは無いことも彼は知っていた。何かを憂う時のアルビノの匂いは、普段とは確実に違う。纏う空気も変わっている。如何にして気付くなと言うのか。本当のことを直接教えて貰えない歯痒さはあるものの、ノースは自分の頭の出来をしっかりと分かっていた。彼はサイロに書いてもらった自分の名前以外の文字を知らない。それはきっと、教えて貰えない理由に直結する一つのものなのだ。何も分からぬ自分を悔いながらも、無理に聞き出すことはしようとも思わなかった。いや、存在するはずがないのである。






 レオナルドはどこかふわふわとした何かに包まれているような錯覚がしていた。サイロの能力について知ってから、思考が纏まらない。アルビノが話してくれたのも、自分を信じたからなのだと分かっても、どこか嘘のようで。非日常にいるのも、これから激動に巻き込まれるであろう事も理解していたはずだったのだが、それはレオナルドの予想を遥かに超えていた。


 頭が上手く働かない。しかし、レオナルドはいくつか腑に落ちる点があった。


 まず一つ、サイロと初めてあった時に化け物を倒した方法。火炎瓶でも投げていたのかと思っていたが、あれが魔法なのだとしたら。声が聞こえたのも納得がいく。


 二つ、サイロが大幅に改造したレオナルドの橇。あれを一人で解体し、もう一度作り替えるのには職人であっても骨の折れることだろう。サイロがそれをやってのけたのは、魔法の力によるのではないか。


 他にも、どこかサイロが人間離れしているように感じるのはそれがなす技なのかもしれない。



(本当にサイロが魔法使いで、それがナーラ一族に露見したら…………)


 レオナルドはぎゅっと目を瞑った。宙人がかけた声は彼に届かなかった。


(不味いことになるぞ…………!)

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