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最果ての世界へ  作者: 律稀
未知の里、不思議な少女
21/29

1ヶ月以上放置して申し訳ありませんでした

まだ続きますし作者は生きてます。

  レオナルドは唖然とした。山積みにされた肉は見上げられるほど高かった。子供が一人入れるのではないかと疑うほど大きく深い皿はナクラの城でも見たことが無かった。そちらでは小さめで一つ一つ丁寧に職人が作った最高級の品がエンダ各地から取り寄せられている。ここまで大きな皿は必要無かったのである。勿論、ナクラで温室育ちのレオナルドがこのようなものを見る機会など無かったのだ。ノースは初めて見る訳ではないが、普段が普段なために珍しげに興奮しながら宙人達が宴の支度をするのを見ていた。

「レオナルド、楽しみだな! 宴、宙人の里でしかやったことないから俺ここ好きだ!」

「ノースも久しぶりに帰ってきたものね、ご馳走たっぷり作るから貴方も楽しんでね。何しろあの御樹の童の御仲間様々だもの」

  レオナルドはまだ疑問を抱いていた。疑問点は不信感の種である。それらを無くすことがこのなんとも言えない彼の不安定さ無くすことになることは分かっていたが、不信感が邪魔をして疑問点を解消出来ない。完全に悪循環に陥っているのであった。

  彼の靄がかった心のうちを知ってか知らないでか、ノースが彼の顔を覗き込んでいた。

「レオナルド、何かあったのか? 宙人の里来てからお前静かすぎて調子狂うぞ! いろいろあったし混乱してるのかもしれないけど、アルビノ様も長も他のみんなも皆いい人達だから心配なんかしなくていいんだ、俺もご主人もいるし大丈夫だろ!」

「普段の俺が五月蝿いって言いたいのかお前は失礼だな!……ったく、何なんだよ。でも、ありがとな」

  レオナルドはノースの顔をぼんやりと眺めながら、サイロとアルビノの少女のことを思い起こしていた。彼の価値からして、先天性白皮症(アルビノ)が本当に彼女の名前だとは考えがたかった。

(何を考えているんだ、あいつら…………)

  御樹の童、先天性白皮症(アルビノ)……それらは二つとも同じ人物を指す。双方が名前で無いのなら、他にも何かあって然るべきなのだ。レオナルドには彼女が何か隠しているとしか考えられなかった。

(目的なんて問い質せないだろうしな)

  レオナルドは考えるのを諦め、忙しそうに動き回る女性の宙人達を眺めた。忙しそうではあるが、彼女らの顔はとても生き生きとして輝いていた。また新しくあの大皿が運ばれる。肉が焼けた芳ばしい香りや茸だろうか、野菜などの匂いも混ざって漂ってくる。料理の量が歓迎の気持ちを表すのだと言っていたことをレオナルドは思い出した。ナクラでは無かったもてなしにレオナルドは戸惑いを感じつつも言葉にし難い心地良さに気がついていた。宴に関わる皆が楽しげであった。ノースの機嫌の良い鼻歌が食器が鳴る音と連動しているかのようであった。


  ノースに一言ことわりを入れてから、レオナルドは厨房の外に出た。ひやりとした冷たい空気が彼を包む。長い時間ずっと胡座をかいていたせいか、身体が固まってしまっていたようだ。腕を思い切り伸ばして身体をほぐす。ゆっくりと目を開けた彼の視界には、レオナルドの見たことの無い様式の家々がぼんやりと霧に覆われていた。彼が宙人の里に来てから時間が経っているはずなのだが、来た時から出ている霧は一向に晴れるきらいが無かった。

(そう言えば……地面に雪なんてねえし、ここの里って違和感だらけなんだよな……)

  レオナルドは軽く足についたものを地面に擦り付けるように動かした。ざり、と土と砂の音がする。雪を踏む感覚は、この里に来てから一度も体験していない。

(空気は冷たいんだし、雪が降っててもおかしくない気温のはずなのにな……)

  音もあまり響かない世界は謎で溢れている。なんだか不思議な心地で彼は包まれていた。

「あれ、レオナルド?」

  少女の声がしてはっとした。土を見ていた視線を上げて辺りを見渡すと、右斜め前方に驚いた顔のアルビノが居た。視界が悪く、音も聞こえにくい世界では仕方がなかろう。しかし、レオナルドは不測の事態に取り乱していた。謎の多い相手と唐突に一対一で向かい合わされて動揺するなと言う方が無理があるのだが。

  レオナルドは息を吸い込んだ。自分が声を発しなければならないという気持ちが彼を支配していた。

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