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最果ての世界へ  作者: 律稀
未知の里、不思議な少女
19/29

  新雪の如く白い髪は、同じ色をした肌に溶けてしまいそうで、どのくらいの長さをしているのかレオナルドはすぐには把握出来なかった。雪兎、これほどしっくりくる人間が居るとは思わなかった。少女は親しげに宙人に囲まれながらサイロとノースに微笑んでいた。


「久しぶり」

「お帰りなさい、サイロ。二人とも元気そうで良かった。……で、あの人は?」

「アルビノ様、あれはレオナルドって言うんだ。 一緒に行くことになった奴で、五月蝿くて面白いぞ!」


  レオナルドはゆっくりと近付いていった。レオナルド同じ位の歳だろうか、華奢で少し触っただけで壊れてしまいそうな、どこか儚い感じのする少女だった。


「御樹の童は初めてこの少年に会うのか。新しい仲間と来ればかなりめでたいのではないか? 二人も帰って来たことだし、宴でも開こう。本日の夜、迎えに上がろう」

「ありがとう、長。気を使わせちゃってごめんね」


  ヤトが気にするなと笑い、軽く手を振る。少女の後ろに居た大勢の宙人が同じように笑った。ヤトと同じ種族である彼らは当然のように角のようなものを持っていた。この場では異形が普通なのだとレオナルドは痛感した。

  ヤトがレオナルド達の元を離れた。数人の宙人がそれに続く。宙人にも性差や個体差は存在するらしい。ヤトについていった宙人達は女性らしく、丸みを帯びた身体つきの、レオナルドよりも少し高いくらいの背の者が多かった。髪や肌、瞳の色は少しずつ違っていたが、緑がかった茶色や鳶色、柳の葉のような彩度が低く、落ち着いた印象の色が多かった。


「今日は宴なのか! 楽しいし腹いっぱいになるまで食べられるから嬉しいぞ! レオナルド、準備してるの見に行こう!」

「ノース、良かったね。長が優しい人で、助けてもらえて本当に。……あの、あなたレオナルドって名前なのね。よろしく」


  まだ警戒の色が隠せないレオナルドは驚くほど何も話せなかった。自分の名前を名乗ることすら出来なかった。口を開いても、声にならずに掠れたような息しか出てこない。何か言わなければと焦る程にレオナルドの頭は整理が出来なくなっていった。

  俺の名前はレオナルドだ。一緒に行くことになったからよろしく。お前は誰だ? 何故ここに居る? お前はアルビノ様とノースに呼ばれたんだよな? なら御樹の童もお前のことだろう? 何故そんな風に呼ばれている? そもそも何故サイロとノースの知り合いなんだ? 宙人の存在を何時から知っていた?


「レオナルド、お前返事はしなきゃ駄目だぞ! こちらはアルビノ様。レオナルドよりも前からご主人と俺と旅してる。 とっても優しくって、料理もしてくれる人だ!」

「…………おう」


  絞り出した声は固かった。ノースのはしゃいだ姿を見ても警戒心を隠せない。そんなレオナルドを見て、アルビノは困ったように少し眉を寄せて微笑んだ。


「突然いろんなことがあって混乱してるよね。私だってその原因だけど……でも、これから一緒にやっていく仲間になるんだから仲良くしてくれると、嬉しいな」


  アルビノは高くて軟らかい声でレオナルドに語りかけるように話した。突然現れたのは彼女にとってレオナルドもそうなのだと気がついたが、もう一度とってしまった態度は変えられない。なんだか惨めな気分だった。


「……おう」


 緊張は先程よりも溶けたらしい。声が多少楽に出てくるようになった。固く力の入っていて少し上がっていた肩も元に戻った。


「彼女は悪人なんかじゃない。宙人から御樹の童と呼んで重宝される程にね。……少し、全員席を外してくれない? 少し出てしまっていたから報告が色々とある。二人で、話したいんだ」


 サイロがそう言うと、レオナルドは驚いた。二人でなどという少々気障にも思える言葉が、涼しい顔をしたサイロの口から出てくることが衝撃であった。しかし、それに他の者は驚いた様子も無い。久しく会っていなかったらなあなどと当然のことだと言わんばかりに受け入れていた。アルビノだけは少し困ったように白い頬をよく見ないと気がつかない程度に染めていた。


(俺がずれてる…………訳じゃ、無いよな?)


  少しばかり腑に落ちないものを感じつつ、レオナルドはノースに引っ張られて行った。宙人もそれに続く。それを軽く手を振って見送り、全員が霧に隠れて見えなくなったら、アルビノはサイロに向き直った。


「久しぶりだね──イノア」


  イノアと呼ばれたアルビノは、赤い瞳をつい、と嬉しそうに細めた。


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