Part7 結婚式
Part7 「結婚式」
僕は王族の結婚式と言う物を侮っていた。あれから2ヶ月が経ってようやく結婚式の日取りが決まった。まだ1ヶ月待ち時間が有る。
<こんなに大変な物とは…(*_*)>
お姫様の結婚式なのだ国挙げての大行事なのだ。とんでもない物に巻き込まれてしまった。
リズさんは毎日僕に会いに来ては嬉しそうに結婚式の話をする。本当に楽しみにしているのだ、しかし根っからの庶民の僕とはなんかずれている。
リリッカさんは木剣で近衛騎士団全員と1対1の模範試合をし、全員叩き伏せた。今では、軍人たちの憧れの的だ、引切り無しに弟子志願者が訪れる。
シャルさんは、その魔力を試そうとした宮廷魔道士3人を消し炭に変え完全に恐れられている。
「ほほう、亭主殿は居心地が悪そうぢゃの。」
「はい、根っからの庶民に宮廷暮らしは辛いです。(――;)」
「俺はそんなに悪くないけど、やっぱり窮屈だな。」
「シャルさんは、すっかりなじんでいますね。」
「妾は、慣れているが。やっぱり御付が煩くてのう。」
「タカスカの町が恋しいっす。(T_T)」
「ほれほれ、リズが来たようぢゃの、よう飽きないのう。」
「初めての宮廷の外の人ですからね。」
「御主人様♡また、黒禍団の話をしてくださいませ。」
こっちに来てそれほど時が経っていない僕に出来る話はそう多くはない、それでも外の話は珍しいのだろう、今日もまたお話をせがまれる。
「今日はメルルの話をしましょう。」
「メルル?」
「はい、とっても賢い馬なんですよ。」
僕は乗馬初心者用、特別料金のメルルの話を面白おかしくしてあげた。
始めのうちは冷かしていたリリッカさんも、話に加わるようになり、すっかり打ち解けたようだ。
「わたくしも早くタカスカの町に行ってみたいです。」
「そうですね。」
<そんな日が来るのだろうか、リズさんは取り巻きが居なくなったらどう生活するのだろう…>
☆☆☆☆☆☆☆
「リリッカ様結婚式にお召しになられるドレスを選んで戴きとうございます。」
「へっ、ドレス?」
「まさかその鎧で結婚式に御出席遊ばされる、おつもりで?」
「これじゃダメか?」
「なんと嘆かわしい、王宮での結婚式ですのよ、それにふさわしいドレスをご着用くださいませ。」
「いや、その、ヒラヒラしたのは似合わねえんだ!」
「良いからこっちへいらっしゃい!」
華麗なドレスにはリリッカさんの逞しい肩や、太い腕に対応しかねた。
「はー、はー、この様な女性の身体つきは、初めてですわ。」
「諦めてくれたか?」
「いーえ、諦めませんわよ、少々お時間を戴けますこと、きっと何とかしてみますわ。」
そうして、レースを多用してリリッカさんの体の特徴を覆い隠す、思いっきりヒラヒラのドレスが完成した。
「ガー、なんて面倒くさい服なんだ!これじゃまともに歩けねえぜ!」
「特訓ですわ。」
「ヒー、助けて!」
☆☆☆☆☆☆☆
「シャルロッテ様結婚式にお召しになられるドレスを選んで戴きとうございます。」
「いやそれには及ばぬ、この服で十分ぢゃ。」
「そのお召し物では、葬儀には向いても結婚式には不向きでございますわ。」
「いや、この服はぢゃな、ギルバーディア家の秘術を用いて、様々な呪符を施しておるのぢゃ。」
「ですから、戦争に行くのではありません、結婚式にご出席遊ばされるのです。」
「……。」
「……!」
「…どうあってもか?」
「ハイ、どうあってもです!」
シャルさんはまるで天使の様に愛らしいドレスを着せられた。
「…屈辱ぢゃ。」
「いーえ!お似合いです!」
☆☆☆☆☆☆☆
侍従長のセルディックさんと僕たちは何度目かの話し合いの席に着いた。
「勇者様には、近衛大隊の一翼を担って戴き、あーもちろん誰かの指揮下と言う事ではなく、王直属の遊撃隊と言う事で如何でしょう、もちろん勇者様の本来の目的を妨げるものでは無いということで?」
「いえ、僕たちは僕の宿命を見出すまでは自由に世界を旅する必要があります。」
「ふむ、その通りぢゃな。勇者の宿命を負った以上、その宿命を蔑には出来ぬな。」
「そこはほれ、なんと申しましょうか、エリザベート様は世間の荒波対して、あまりにも無垢であらせられ申して。」
「そうですね、リズさんのリハビリと僕自身の準備のため、暫らくはタカスカの町に滞在し、いくつかの小旅行を経験し、それから本格的な旅に出ようと考えています。」
「うー、なんと申しましょう、本格的な旅と言うのは我が王の意に沿うものではないと思われ申して。」
「良いか御老、勇者の宿命というものは、アリス神の御心ということぢゃ、一小国の王の気分でどうにかなるもではないのう。」
「そこは重々承知いたした上でですが、何とかホッカ国内に留まることは叶わぬものかと。」
「アリス神の御心をホッカ国内に限定しようということかのう?」
「いえ、決してその様な大それたことを…」
「僕達も、王様に近況を細目に報告するつもりですよ。」
「それは、有り難いお申し出でございますが…」
「心配するなよ、爺さん!俺もシャルもついている。」
「はぁ…」
…あと何回この遣り取りが続くのだろう……
☆☆☆☆☆☆☆
いよいよ結婚式の予行練習が始まった。
「司祭様、なぜ、僕の衣装は軍服なんでしょう?」
「よろしいかな、王という物は軍の最高指揮官でもある、遍く王族というものは、軍務に責任があるものじゃ。」
「いや、僕の場合王族というのはちょっと?」
「亭主殿、結婚式には近隣の国の王族を始め大使なども大勢集まる、見栄もあるということぢゃ。」
「まあそういう事ですな、ホッカ国軍には勇者様の御加護が有る。と、いう事ですかなwww」
「司祭様そんな事言っちゃって良いんですか。」
「いやいや、どうかご内密にwwww」
「其れより挙式の手順はもう覚えられましたかな。」
「えっ、その大体は…」
僕はまるでマリオネットみたいにギクシャクと手順を繰り返す。リリッカさんを見るとマリオネットの糸は大分もつれている様だ。シャルさんの方は糸を引きちぎったらしい。
「なぜ、リズの奴はこんなもの着て普通に歩けるんだ!!!」
…
☆☆☆☆☆☆☆
結婚式は王宮内の大聖堂で荘厳かつ厳粛に行われた。
リリッカさんはなんとか、やりこなしたようだ。
シャルさんの独特な礼法は堂々としていて説得力があった。
リズさんは生まれついての王族という、格の違いを見せた。
僕は思い出したくない思い出が増えた。
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結婚披露宴…延々と続く祝辞…
王族とか貴族って“タフ”
「まだ、終わらぬのか?」
「はらへった…」
披露宴は3日間続いた…