Part6 運命の女リズ
Part6 「運命の女リズ」
僕らは数日ぶらぶらと過ごしていた。
仕事の当てもないが、する事も無いのでギルドへ向かう。
「あら、貴方達ちょうど良かった、昨夜遅くヒュバート隊長さんから連絡があったわ。」
「へえ、やっとか?」
「そう大変よ、貴方たちの事を上奏したら、王様が貴方達に興味を持って、直に会ってご褒美をくれるって。」
「ふん、御目通りか、面倒な事よのう。」
「王様から直にご褒美って、きっと大金だぜ!」
「あのー、ナナさん、正規軍の人たちに僕の事なんて伝えたんっすか?」
「なーに?」
「いや、隊長さんも僕の事有名って言ってたっす?今度は王様の興味をひいちゃったっす?」
「フールちゃん、良く聞いて貴方は大変なキーパーソンなのよ、貴方が居なかったら“紅蓮”リリッカと、“神を使役し者”シャルロッテが手を組むことなんかあり得ないわ。」
「確かにのう。」
「そういえばいつの間にかシャルと組んでいたな?」
「僕自身は只のLv1っす。(-.-)」
「まあ、亭主殿は漂流者であるし、只ならぬ宿命を背負っておるからのう。」
「まあ、そうなの?」
「宿命って言っても、正体不明っす。(――;)」
「そのへんは何でもいいけどよ、俺たちも関係あるのか?」
「そうじゃのう、リリッカも妾も亭主殿の宿命に引き寄せられし運命よのう。」
「んー、フールちゃん大変そうね、でもともかくサッポの都に行ってらっしゃい、明後日にアサカワの町の駅馬車場にお迎えの馬車が来るそうよ。」
「迎えの馬車!すごい待遇っすね?」
☆☆☆☆☆
僕達は豪華な王宮の馬車の旅を楽しんだ。
2日で、サッポの都に着き早速王宮へ連れて行かれた。
「まるで迷路っすね。」
「俺はもうここがどこだか判らねえぞ。」
「ふん、王宮などどこも似た造りだ案ずるな。」
ともかく、やっと目的の部屋着いたらしいが、今度は多くの人に取り囲まれ何やら、謁見の作法やら、バスレウス王家の歴史やら、てんでにレクチャーされる。
「私が、侍従長のセルディック・マーデ・カーペです。」
白髪頭で、一際豪華な衣装に身を包んだ老人が温和な顔を向けしゃべりだす。
「勇者、フールファス殿でございますな。」
「へっ、勇者?」
「さようです、勇者と伺っております。」
「亭主殿、面倒だからそうゆう事にしておけ。」
「はあ。」
「わが王はお優しい方です、そう緊張なさらずとも結構です。」
「はい、有難うございます。」
「それでは、謁見の間へご案内いたします、こちらへどうぞ。」
またしても、帰り道を見失った頃謁見の間へ到着した。
とりあえず、レクチャーされた通り片膝をついて畏まる。
「勇者殿直答を許す、面をあげよ。」
王様は意外なくらい簡素な服で飾りっ気がない。優しい顔を向けニコニコしている。
「フールファスと申します、拝謁できますこと光栄にて恐悦至極に御座います。」
「“紅蓮”のリリッカだ。」
<リリッカさん膝ついて下さい!オロオロ>
「“神を使役し者” シャルロッテ・トレファンス・ギルバーディアである、見知り置くが良い。」
<シャルさん王様相手に威張ってどうするつもりですか!オロオロ>
当然広い謁見の間がざわつきだす。
<ヒー、生きて帰れるだろうか?>
「うむ、さすが勇者殿御一行だ、わが前でも、全く物怖じしないとは、見事である。」
<ハアー、生きて帰れそうだ。>
「ときに、勇者殿此度の盗賊団討伐に於いては、見事な知略で主だった者たちを打ち取ったとか、誠に重畳であった。」
「有難うございます。」
「リリッカ殿は女子の身でありながら、大変な剣豪と聞き及ぶが?」
「あー、剣だったら正規軍にも負けねーぜ。」
<ヒー、リリッカさんなんて事を。>
「うむ、わが軍にも剣の指南を依頼しようぞ。」
「ときに、シャルロッテ殿はギルバーディア家の出自であったか、ギルバーディア家の魔道書はわが国にも伝わっておる、まあ半分も解読できぬが。」
<ヒエー、シャルさん何処まで有名なんですか?>
「どうじゃな、シャルロッテ殿ギルバーディア家の秘法わが臣民に伝えてもらえぬかな?」
「秘法など、知らぬ方が良いものぢゃ、故に秘法となっておる。」
「成る程のう。」
「おう、姫が参ったか、勇者殿紹介しようわが娘エリザベートじゃ。」
ふわふわのドレスを着たお姫様が、横の階段を下りてくる。
<あっ、可愛い。>
「エリザベート・アグニア・バシレウスで御座います、勇者殿様お初に御目文字致しますわ。」
「フールファスです、拝謁恐悦に存じます。」
まるで、豪華な花束が舞い降りてきたかのような、姫様の姿に見とれていた。
<あっ、躓いた。>
躓きこちらへ転んだお姫様を咄嗟に庇おうとした。思いっきり転倒したお姫様が僕の腕に倒れ込み、お互いの顔面をぶつけ合う事となった。
「まあー、大変勇者様お怪我はありませんか?」
「僕は大丈夫です、それより姫様は大丈夫ですか?」
「きゃー、父上大変、わたくし殿方と接吻してしまいました!!」
「なに!!」
優し顔していた王様の眉間にしわがよる。
<なんか非常にまずい雰囲気っす。(@_@;)>
「侍従長、この場合家訓はどうなる?」
「はい、このようなケースは想定されていないものと存じます。」
「父上、バシレウス家の家訓わが身で穢しとうは御座いません。」
「バシレウス家に生まれし女は初めての接吻を交わした殿方に嫁ぐのが定め、勇者殿どうかこのエリザベートを妻に迎えてください。」
「エリザベートいやリズ!それで良いのか?」
「はい父上、こちらにおわす勇者様とは、浅からぬ運命を感じます、アリス神のお導きかと存じます。」
<また、あのくそ女神がなにかやらかしたな。(+_+)>
「お姫様、落ち着いて下さい、これはただの事故です。」
「勇者殿、いやフールファス殿わが娘リズを宜しゅう頼む。」
「いや、あの、その(*_*)」
「フールファス様いえ御主人様、何かと至らぬ身では御座いますが、何卒リズを妻として迎えてくださいませ。」
「あの、僕はすでに既婚者です。(・_・;)」
「それが、わたくしたちに何の障害となり得ましょう?」
「俺が1番だからな。」
「妾ぐらい許すと申したが、亭主殿は良く事故を起こすのう。」
僕はそっとエリザベートを鑑定して観る。
名前…エリザベート・アグニア・バシレウス
性別…♀
ジョブ…治療士
Lv…38
二つ名…“聖乙女”
スキル…運命の男・慈愛の治療・アリス神の加護・王族・天然…
<くそ女神の笑い声が聞こえた気がする…>
「セルディック至急結婚式の用意を。」
「はっ、心得ました。」
「準備が出来次第、勇者殿とわが娘エリザベートの婚礼を挙行致す、皆の者良いな。」
「勇者殿いや、婿殿良いな。」
「ハイワカリマシタ。」<ヒキッ>
<外に返事の仕様が無いっす。>
「俺たちの結婚式はまだしてないよな。」
「妾もぢゃ。」
「あの、こちらの方々は、ご紹介くださいませ。」
「はい。妻のリリッカと、妻のシャルロッテです…(*_*)」
「まあー、先輩方ですのね。」
<先輩って?>
「どうぞよろしくお願いいたします、リズと呼んで下さいませ。」
天使の様にリズさんが微笑む。さすがのリリッカさんとシャルさんもつられて微笑んでいる。
「先輩方がまだなら、一緒に結婚式しましょう。宜しいですわね父上。」
「そ、そうじゃな。」
「心得ました。」
王様も、侍従長もあまりの展開に目を白黒している。
僕はじんわりと頭痛がしてきた。