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Part2 初仕事?

Part2 初仕事?


リリッカさんと二人ギルドに向かっていると、ちょっと精悍で小柄なお爺さんと出会った。


「リリッカちゃんや、新作の試し切り頼めるかの。」


「いいぜ、トール爺、ダンナ先に行ってくれ。」


「はい、解りました」


一人でギルドの扉をくぐると、“いじめっ子”と顔に書いて居る様な連中に取り囲まれる。


「おー、“みせかけ”の旦那じゃねえか、ヘヘッ」

「おう、熱くない炎って、やつを見せてみろよおい。」


どうも僕はこの手の輩を呼び寄せる才能が有るようだ。


「この旦那はよ、ギルド最短記録で二つ名を作ったんだからよ、wwww」

「それが“みせかけ”って言うんだから洒落ているぜ、wwww」


しばらくの間、僕は口をパクパクさせながら困っていた。


「よう、俺のダンナ様相手に喧嘩売ろうって奴は誰だ?」

「俺が変わりに、高く買ってやるぜ!」


〈リリッカさんカッコイイ〉


「「「「「「あの~、ダンナ様って」」」」」」


「おう、結婚したんだよ昨日!」


「「「「「おっ、おめでとう御座います!!」」」」」


今度はいじめっ子たちが口をパクパクさせていた。


〈うん、解り易い連中だ。〉


「ダンナ、とりあえず朝飯にしようぜ」


「そうっすね」


リリッカさんは、厨房の方へ行ってトレイを二人分運んできた。


「ほい、ダンナの分」


「有難うございます。」


「これが、タカスカギルド名物コーンスープだ。」


「ほう、これ旨いっすね(*^。^*)」


「おかわりどうぞ、おにいさん!」


〈さっきのいじめっ子の一人だ、まだ一口しか飲んでないよ、色々と解り易いなもー。〉


リリッカさんと僕は、コーンスープとちょっと硬めのパンで朝食を済ませ、ナナさん所へ赴いた。


「ナナさんダンナのギルドの登録たのむぜ。」


「リリッカちゃん結婚したんだって?おめでとう。」


「ありがとうナナさん、ばっちりアリス神の誓約付だぜ!」

「ナナさん、なんかいい仕事有るか?」


「あら、珍しくやる気ね?」


「俺ももう一人じゃないからな、へへ…」


「あら、あら♡」


「ダンナ先に登録済ませろよ、俺はちょっと掲示板で目ぼしい仕事探すからよ」


「はい、ナナさん宜しくお願いします」


「はいはい、え~っと名前はフールファスだったわね、当ギルド最速で二つ名が付いたわよあなた、“みせかかけ”ってね。」


「すいません、二つ名ってなんですか?」


「そうね、この辺でファミリーネームを持っている人なんて居ないわ、ファミリ-ネームを名乗るのは、よほど古い家柄を自慢したいか、そう見られたいかのどちらかね、同じような名前だと紛らわしいじゃない、で、その人の特徴を二つ名として呼ぶようになったの、まあ二つ名はある意味尊敬の表れでもあるわね、ちなみにリリッカちゃんは“紅蓮”ね。」


「紅蓮って、あの真紅の刀に由来されてですか?」

「“みせかけ”って尊敬されているようには感じないんですけど…(-.-)」


「まあ、あの“紅”の事もあるんだけど、あの子が駆け抜けた後がね。」


「紅蓮ですか…(-“-)」


「あなたの場合は特別ね」

「ところであなた、ジョブとレベルは?」


「ジョブは魔法剣士で、Lv1っす。」


「やだ、本当にLv1なの、漂流者って本当みたいね、それに魔法剣士ってな~に?」


「魔法剣士って魔法と剣技両方使えるってことらしいです?それよりナナさんご相談があります。」


「あら、あらたまってな~に?」


「リリッカさんの借金っす、特別低金利だとか。」


「そ~よ。」


「銀行に確認したら、信用が有れば年利15%程度って話っす。」


「リリッカちゃんは5%よ!」


「月利ですよね、年利にすると60%が暴利じゃないと?」


「や~ね、金に細かい男は嫌われるわよ。」


「今更過去の事は問いません、これからについて建設的なお話が出来れば嬉しいんですけど」


「年利15%!」


「年利10%で」


「解ったわ、もう、一つ条件出していい?」


「なんでしょう?」


「漂流者は、覗きスキルが有るって本当?」


〈ん~、鑑定スキルの事かな、あまり本当のことは言わない方がよさそうだ。〉

「はい、詳しい事までは解りませんが、目ぼしいスキルはなんとなく解っちゃいます。」


「じゃ、あそこ、あの金髪でゴツイ鎧着た肥った男ちょっと見て。」


〈鑑定スキルを使ってみる、Lv29、スキル…詐欺・虚言癖…〉

「ん~、嘘つきっすね。」


「やっぱり、…あなたとは上手くやっていけそうね。」


「宜しくっす。」


「あと、覗きスキルが有るって結構嫌われるから黙ってた方が得策よ、勘の鋭い人は覗かれると解っちゃうみたいだし。」


「はい、貴重な助言有難うございます、この事を知っているのは今のところナナさんだけっす。」


「もちろん私も黙っているから、これからも色々教えてね♡」


「はい(^<^)」


「ようダンナ登録は済んだかい。」


「そうね、フールちゃんの場合得意技も無いみたいだしこれくらいで良いわ。」


「えっ、名前とLvだけっすよ。」


「それ以外に何か付け加えることある?」


「無いっす。 <(_ _)>」


「ナナさんこのワイルドホッグはだれか行っているかい?」


「あ~それね、まだ誰も手付けていないわ。」


「よし、俺たちが狩ってやる。」


「あの~、ワイルドホッグって?」


「猪の大きいのだと思えば間違いない。」


〈山の中で出くわした、巨大な猪を思い出し、不安になる。〉

「あの~、リリッカさんそれってLv1には荷が重いんじゃないっすか?」


「あんな、ダンナ、ギルドの賞金首のなかで一番厄介なのが、モンスターだな、敵意むき出しだし、いろいろ厄介なスキル持っているし、その次が人間だな、おとなしく捕まっても、吊るされるの解っているから必死だし、やばいスキルがあるかもしれないし、一番楽なのは動物なんだよ、基本こっちが上だと分かると、逃げ出す、逃げる相手を狩るのが一番楽だ。」


「成る程って、ワイルドホッグ相手に僕が何出来るんっす?」


「ダンナは俺の後ろに居て、逃げ出すやつを炎で足止めしてくれれば良い。」


「つまり陽動ですね、頑張ります。」


「フールちゃん、リリッカちゃんの前に出たらだめよ、ワイルドホッグと一緒に切られるわよ。」


「ナナさん、俺はそんなに滅茶苦茶じゃない。」


「うふふ、はいはい、ところでリートさんに来てもらう?」


「おう、有難う」


「リートさん?」


「ああ、リートは解体屋なんだ。」


「解体屋?」


「ワイルドホッグと言ったって、所詮猪だ、肉は旨いし、革も使える、骨だって出汁をとるのに使う、捨てる所が無いんだ、俺は狩るだけだから、後始末を引き受けてくれるのが解体屋だ。」


「成る程…(-.-)」


やがて、小柄な男が走ってきた。リリッカさんを見止め挨拶する。


「リリッカの姉御、聞きやしたぜ、ご成婚おめでとうございやす。」

「こちらが、“見せかけ”の兄ぃですかぃ、おめでとうございやす。」


「みせかけの兄ぃって…」


「いや、リリッカの姉御の大事な旦那様です、兄ぃと呼ばせてもらいやす」


「はい…(・_・;)」


「ところで、今日はどちらで狩りでやすか?」


「おう、アラシ山の頂上付近の街道筋あたりに出る、ワイルドホッグが獲物だ。」


「へい、それじゃアッシの馬車に乗ってくだせいやし。」


リートさんの馬車は意外と大きかった、リートさんの手下だろう、5人ほどの男が同乗した。彼らからもそれぞれお祝いの挨拶を受ける、なんだか、好感を持てる人たちだ。

僕たちは2時間ほど取り留めのない話をして笑いあった。


「姉御早速お出ましでさあ…」


リートさんが指し示した先には、5頭ほどのワイルドホッグが居た。


「あれで、全部かな?ちょっと様子を見よう」


「へい…」


様子を窺っていると、全部で7頭ほどの群れだと判る、巨大なものは自家用車ほどものサイズがある、初日に出会った猪はまだ可愛い方だった、彼らは自信があるのか無警戒で、ゆったりとしている。


「あの、様子だと逃げ出すことは無いな、ダンナ二人だけで行くぜ。」


「はい…(・_・;)」


獲物に向かい真っ直ぐに歩く、彼らも悠然とこちらを見ている。


「いくぜ!!」


リリッカさんはいきなり走り出した、そして“紅”が閃く、巨大なワイルドホッグの首から鮮血が迸る、ワイルドホッグ達は慌てて逃走に入る、僕は必死でリリッカさんの背中に付いて行き、ワイルドホッグの鼻先に次々と火柱を立て、その足を止める。


「済んだか?」


もう動いているワイルドホッグは居ない様だ。


「済んだみたいっす。」


「おーい、リート済んだぜ!!」


「へーい!!」


リートさん達が走り寄りすぐ解体が始まった。


「ヤロー共急げ!!」

「くそ、こっからだと水場は遠いな、誰が行く?」


「水が必要なんですか?」


「へい、早く血抜きをして、洗いたいんでやす。」


ウォーターで水球を10程出し空中に浮かべる。

「はい、水です、おかわり必要なら言ってください。」


「ありがてぇ、ヤロー共兄ぃの好意に甘えるぞ」


「「「「「へい!!」」」」」


僕は次々に水球を出しながら、ふとリリッカさんを見る、返り血を浴びて朱に染まっている。<成る程“紅蓮”か…>

「リリッカさん、水です」


「おう有難う。」


リートさんとその手下の仕事は早かった。


「兄ぃのおかげで、綺麗な処理が出来やした、有難うごぜえやす。」


「いえ、いえお役に立てて何よりです。」


「姉御、兄ぃのおかげで“もつ”までいけやす、今晩はヘスの親父さんの所でやすか?」


「そうだな。」


「ヘスの親父の所に一番良いやつを卸しておきやす、それに礼金もはずめそうですぜ。」


「おうそうか、楽しみにしている」


「礼金?」


「リートみたいな解体屋は、肉や皮を卸して、その一部を狩った者に、キャッシュバックしてくれるんだ、リートは一番率が良いんだ。」


「いや、姉御は一刀で頸動脈をばっさりやってくれるんで、血抜きが早く、良質の皮や肉がとれるんでやす、おまけに今日は兄ぃのおかげで、処理が早くしかも綺麗に出来やした、もつまで卸せるのは久しぶりでやす。」


「今晩は、もつ焼きだな、うぅ ジュル」


「へい、もつは内臓の事でやす、旨いんですが、早く処理をしないと臭くて食えねえんでやす、良いもつは希少なんで高値で取引できるんでやす。」


「そうですか…(*^。^*)」


やがて馬車はタカスカの町に着いた。


「ギルドへはアッシから報告しておきやす、それじゃこれから商売に行きやす。」


「おう、有難うなリート。」


「リートさん、有難うございました。」


リートさんは手を振りながら笑顔で、馬車を走らせて行った。

〈うん、良い人だなリートさん、スキルに“お人好し”なんてあるし。〉

この世界にも良い人がたくさん居そうだ。僕はちょっとほっとした。


「そうだダンナちょっと雑貨屋見ていこうぜ。」


「はい…」


如何にも{何でも取り扱っています}的な、雑多な物が溢れているお店に入っていく。


「メアリ婆さんこんにちは。」


「あら、リリッカちゃん、聞いたわよ、結婚したんだって、おめでとう、この人がそうなの」


「はい、フールファスです、宜しくお願いします (#^.^#)」


「それで、今日は何?新婚さん用の各種アイテム取り揃えているわよ♡」


「いや、俺のダンナ用にもうちょっと防御力のありそうな服を見繕ってくれ」


「あら、そうなの」


〈メアリさんなんか残念そうだったけど、新婚用アイテムって何が出てくるんだろう?ちょっと不安… (――;)〉


「ふーん、サイズは通常のでよさそうね、鎖を縫い込んだ丈夫な服ならそうね、1万ギルってとこかしら。」


「あと、防御力と重さのバランスは、金次第ね。」


「成る程、防御力があっても、くそ重たい物は、身に着けれない、軽くて防御力の高い物は、値段も高いって事っすね。」


「そういう事になるわね。」


「リリッカさん、とりあえず、1万ギルが目標っすね。」


「おう、でもダンナにはもうちょっと良い物を身に着けてもらいたいんだけどな。」


「まず、金を稼ぐ方が先っす、気持ちは有り難いけど。」


「そうだな、ギルドへ行こう。」


「はい。(*^。^*)」


ギルドの建物に入り、意気揚々と報告に向かう。


「あら、貴方達リートさんから報告もらっているわよ、一頭残らず全部綺麗にかたづけたって。凄いわね7頭もなんて。」


「おう、ダンナが上手い事やつらの足を止めてくれたんで、楽に行けたよ。」


「依頼主の役場にはもう報告書出しておいたから、明日にも賞金が入るわよ、7頭もだから、色付けろって言っておいたから。」


「おう、有難うナナさん。」

「ちょっと、コーヒー貰ってくるから。」


リリッカさんがコーヒーを取りに行っている間に、リリッカさんの二つ名について聞いた。


「リリッカさんの、二つ名“紅蓮”は良いんですけど、“天災”ってなんですか。」


「そうね、あなたが来てからあの娘、いつもニコニコしているけど、前はいつも不機嫌で、ここの連中もいつも八つ当たりの被害者になっていたのね、それで“天災”なんて言われるようになっちゃって、ほんとは良い娘なのに。」


「そうなんですか…(-“-)」


「貴方には感謝しているわ。」


「へっ…(・_・;)」


「いや、あの娘が楽しそうなのは、貴方のおかげね。」

「あの娘は、天涯孤独でね、家族も友達も居ない可愛そうな娘だったのよ、貴方の事がよっぽど気に入ったのね、あんなに楽しそうにしている姿は、本当久しぶり。」


「そうだったですか…(-“-)」


「そう、フールちゃん貴方二つ名が増えているわよ。」


「へっ、なんてです?」


「自分で見なさい。」


「あっ、そうですね。」

僕自身を鑑定してみる、二つ名に“リリッカを1日で口説いた”・“リリッカを口説く勇気”なんちゅう二つ名だ、それだけ八つ当たりの被害者が多いという事か。

「はあ」

僕はため息をついた。


「ようダンナなに辛気臭い顔してんだ。」


「いや、なんでもないっす。(^_^;)」


「ところで、貴方達何か良いことあったの、リートさんがほくほく顔だったわよ。」


「いや~、ダンナが、次々に水を魔法で出すものだから、肉の処理が上手く行ったって。」


「そう、リートさん今日は大商いね。」


僕たちは暫らくコーヒーを飲みながら、他愛のない話をした。


「そろそろ、ヘスの親父の仕込が終わったかな?」


「あら、今日はヘスさんの所でお食事?」


「うん、リートが今日はもつまで卸せるって」


「本当、私も後で食べに行こうかしら♡」


「www、ダンナ行こうぜ。」


「はい!」


ヘスさんの居酒屋の外観は武骨で、食べ物より武器が似合いそうな雰囲気だった。


「親父ぃ、もういいかい。」


「おう、リリッカか入んな。」


「お邪魔!!」


「おう、リリッカ、今日は銭は頂かねえ、安心して飲み食いしな。」


「親父ぃ、今日は銭もってんぜ。」


「いやそういう事ではない、リートのやつがよ、一番いい肉だって置いて行きやがった、リートのやつは一番いい肉だって言っても余計な銭は要求しねえ。」

「だから、その分リリッカとそっちの色男に奢ってやるぜ。」


「へー、それじゃ遠慮なくゴチになるぜ。」


「おう。ところで兄ちゃんいい男だな。」


〈初めて二枚目スキルが発動した。(T_T)〉

「ども、フールファスです宜しくお願いします。」


「二枚目だけどよ、“見せかけ”何て呼ばれているんだろう。本当にリリッカと釣り合う男かあ?」


「親父ぃ、今日リートがなぜ良い肉を卸せたか、聞いてないのか、ダンナが無尽蔵に魔法で水を出したからなんだぜ。」


「ほう、それは大した魔法使いだな。」


「そうだろう、へへ…」


リリッカさんがトイレに立った時、急にヘスさんが僕の前で腕組みをし難しい顔をする。


「リリッカはよ、“天災”なんて呼ばれているけど、本当は良い娘なんだ、幸せにしてやってくれよ、浮気なんかすんなよ。」


「はい、もちろんです。そんな勇気はありません。」キッパリ


「頼んだぜ…」


〈なんかリリッカさん色々好かれているみたいですね。〉


僕たちは、ビールともつ焼きですっかりいい気分になっていた、店も繁盛し笑い声が響いていた。この世界でも何とかやっていけそうです。


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