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Part1 運命の女「リリッカ」

Part1 運命の女リリッカ


ともかくでたらめな方角に向かい歩き出した僕だが、ほどなく道に出て安堵した、道は2本の轍があり、馬車か何かが通っているらしい、<自動車ってことはないだろう、なにせ剣と魔法の世界と聞いているし、でも魔法で動く自動車なんて有ればかっこ良いな>などと勝手に世界を想像してみる、<でもどっちに進めばいいんだ?>またしても適当に、若干下りになっている方向へ歩き出す。


しばらく歩くと不意に巨大な猪と出くわす、

<どうしたら良いんだ?オロオロ((+_+))>

猪は僕を値踏みするように眺め、興味を失ったと言わんばかりに、“ふん”と鼻を鳴らして、森の中に去っていく。


<危なかった…>ちょっと泣いた


僕の置かれている状況はかなり危険なのではないか、事の重大性にやっと気づいた。


<あのくそ女神…>


☆☆☆


とぼとぼと道を歩いていたら、突然


「…んだ!ゴルァ!!」「…てめぇ!!」


物騒な大声が曲がり角の向こうから聞こえる、声の主は見えなかったので僕の身に降りかかった不幸ではないらしい。

曲がり角の茂みに身を隠し、そっと声の方を覗いてみる。

するとそこには、いかにもの感じの4人組がてんでバラバラな得物を手に、頭一つほど小柄な剣士を取り囲んでいる。小柄な剣士は体格にそぐわない、長大な剣、いや片刃だから刀か<しかしどういう金属なのだろう、その刀身は真紅に輝いている。>を右手に持ちだらりと下げている、顔つきはまだ幼さが残り、可愛いと言ってもいいぐらいだ。


<僕はそっち系の趣味はないはずだが?>


しかしよく見ると、ふっとい腕だし、分厚い胸板はいかにも鍛えていそうだし、口元の端には不敵な笑みさえ浮かんでいる。


<大した余裕だ…そうだ!こういう時は、鑑定だ>


名前…リリッカ

Lv…48

ジョブ…剣士

性別…♀

二つ名…紅蓮・天災…

スキル…妖刀“紅”・剣豪・運命の男…


ここまでざっと読み取り僕自身の感想を訂正した


分厚い胸板=×

豊満なバスト=〇


「運命の男って僕の事すか、何とかしないと、拙いっす!!」

<すみません、僕にはこれしか芸がありません!!>

4人のゴロツキたちの足元から火柱を立てて、盛大に雷鳴を轟かす。


一瞬だった。


赤い閃光が走り、ゴロツキたちは朱に染まり、リリッカさんは返り血を浴びた凄まじい顔でニッと笑っている。

そして、徐にゴロツキたちの右耳を削ぎだした。


「へへっ、この俺リリッカさん相手じゃ、運が無かったな」

「よう!そこの、出てきな、助かったぜ」


<はうっ…ばれている>


「ど、どうも(^_-)-☆」


「こいつら黒禍団のやつらだぜ、この右耳のピアスが目印さ」

「それにしても助かったぜ、まあこいつら相手に負ける気はしなかったけど、さすがに無傷じゃ済まねえかなって、覚悟を決めたところだったぜ」


「お役にたてて、良かったっす(#^^#)」


「お前どこのもんだ右耳見せてみな!」


慌てて右の耳を見せながら

「いや、自分でも良く解っていないんっす( ;∀;)」


「へっ?」


「いや、気付いたらそこの山の中で、その前の記憶が無いっす。

僕は咄嗟に嘘をついた… <チート勇者や女神の事は黙っていよう>


「ふ~ん、じゃ、お前ジョブは、Lvは幾つだ」


「魔法剣士でLvは1っす。」


「魔法剣士ってなんだ?Lv1ってお前今までどうやって生きてきたんだ?」


「それが自分でも良く解らないっす。」


「普通大人になるころにはLv20位には成っているものなのだけどな?もしかしてお前、漂流者か?」


「漂流者??(-“-)」


「何時何処から来るのか全くの謎だけどよ、いい大人がLv1で現れ、なんか変なことをやらかす漂流者ってやつが、たまに出てくるってよ、まあ勇者になんかなるやつは、漂流者が多いって聞いたことがあるぜ」


「勇者になんか??(・_・;)」


「勇者か?俺も良く知らないんだけど、普通のやつにはできない事をやらかしたり、得体のしれないやつだけど、なんか皆から尊敬されているみたいだ。」


「はあ~(・_・;)」


「塒が無いんならついて来るかい。」


「ありがとうございます(#^.^#)」


「俺はリリッカ、剣士でこの山を下った先にある“タカスカ”の町の冒険者ギルドに所属している、よろしくな」


「僕は、フールファスです、よろしくお願いします<(_ _)>」


「しっかし、ベトベトだぜ、近くに水場があればいいんだけどな」


「水なら有るっすよ」


僕はリリッカさんの目の前にウォーターで水球を出した。

リリッカさんは豪快に水浴びを始める。


「ひゃ~気持ちいい、この水お前が出したのか?」


「はい、お変わりどうぞ」


「おう、ありがとう、さっきの全く熱を感じない炎や、こんなに簡単に水を出す魔法使いなんて初めて見たぜ、お前凄いんだな!冒険者ギルドの世話役のナナさんを紹介してやる、きっとギルドでもすぐ仕事が見つかるぜ!」


「いや、それほどでも…」


僕はリリッカさんとタカスカの町に向かい歩きながら、この世界の常識を教えてもらった。


「ところでよ、お前の腰の棒は、もしかして武器のつもりか?」


「Lv1じゃこんな物しか扱えないっす(-“-)」


「そうか、wwwww、でも綺麗な棒だな、なんか魅かれるぜ」


「リリッカさんの剣もすごく綺麗っすよ」


「“紅”の事か?世間では妖刀なんて言われているけどな、物心ついた頃からこいつをおもちゃ代わりにして育ったんだぜ、もう俺の体の一部だよ」


日もだいぶ傾いた頃、タカスカの町に着いた。

<人口2,3千ってとこかな、立ち上る煙をみると安堵感で涙が出そうだ>


「こっちが冒険者ギルドだ、とりあえずナナさんに挨拶しておきな」


冒険者ギルドは割と広い造りになっている、厨房や、食堂らしきものも見える、雑多な人ごみをざっと見渡すと、実に多種多様なスキルが確認できた、だいたい皆Lv20代後半から、30代というところだ、リリッカさんのLv48がいかに突出しているか良く解る。


リリッカさんは、カウンターに黒禍団の右耳を4つ並べ、受付嬢相手に何か話し込んでいる。


「気をつけなさいよ、リリッカちゃん。」


「俺なら大丈夫だよナナさん。」


「今日も1人で黒禍団4人相手でしょ、無傷で済んでいるのが不思議よ、あなたにもしものことが有ったら、誰が借金払ってくれるの!」


<どうやら、最後の部分が本音だな…(-“-)>


「どうってことは無えーよ、それに今日は助太刀もあったし」


「助太刀?」


「おーよ、おいこっちに来な!」


「ど、ども、フールファスです、宜しくお願いします。」


「ふ~ん、あなたがリリッカちゃんの助太刀ねぇ?もしかして、そのヒノキの棒で?」


<あー、思いっきりジト目になっている…>


「ナナさん、こいつスゲー魔法使うんだ、思いっきり火柱立っているのに、全然熱くねーんだ、スゲーだろう!」


「それって、ただの見かけ倒しの、見せかけだってこと?」


「はうっ…(((((((((ヘ(‘ω’|||)ヘ ぎくッ! 」

<いきなり、核心を突かれた。>


「ともかくそれで俺は助かったんだ!それになんだかこいつ漂流者みたいだ」


「漂流者?」


「はあ、どうもそういう事らしいです。」


「ナナさん、とにかくこいつに今晩の宿を用意してやってくれ。」


「フールちゃん、よく聞いて」


「フールちゃんって、なんかすごく馬鹿にされている気がするんですけど…(-.-)」


「やーね、名前を省略すると怒っちゃうタイプ?」


「いや、そう言う訳じゃないんですけど…」


「ともかくフールちゃん良く聞いて、リリッカちゃんみたいにギルドから一軒家借りられる人は、安定した収入が見込める、かなりの信用が有るって事なの、普通一軒家はパーティーで借りるものよ、新人は一人ベッド1台の雑魚寝式の安宿から始めるものなの、いい、安宿は完全前金制よ。」


「つまり、金も信用もない奴は、どこにも行き場は無いって事っすね。」


「そういう事。」


「がー、もうしょうがねえ、おいお前、今晩は俺のところに泊めてやるよ!」


「あら~、珍しいわね…まあ、良いわ、リリッカちゃん清算しましょう。」


「おう!」


「黒禍団の賞金が一人200ギルで4人分、税金が80ギル、借金の支払いが100ギル、今月分の家賃はもう貰っているから、えっと620ギルね、いい?」


「おう、ありがとうナナさん。」


「借金?」


「いい事、フールちゃん、借金できること自体、信用の証よ。」


「成る程。」


「ナナさんは俺だけ特別に、安い金利で借してくれるんだ、月たった5%だぜ!」


「信用ですか?」


「な~に~?」


「いやなんでもないっす」


「おい、今晩は旨いもの食いに行こうぜ、俺のおごりだ!」


「ありがとうございます…<(_ _)>」


リリッカさんと二人でギルドから繁華街の方へ歩きながら。

「あれは銀行っすね」


「なんだ、お前預金でもあるのか?」


「いやそんな物あったら苦労は無いっす、ちょっと確認です、ちょっと失礼します」

「お待たせしました。」


「もういいのか?」


「はい (*^。^*)」


広場に出ると人集りが出来てる、なんか皆浮かれて楽しそうだ。


「おっ、なんだ。おい、あそこのカフェの2階のテラス席が空いている、あそこなら良く見えるだろう、行こうぜ。」


「はい、はい」


カフェに陣取り、リリッカさんはテラスの手すりから身を乗り出している。


「おい、結婚式だぜ。」


「成る程それでお祭り騒ぎなんっすね。」


「新郎新婦が真下に見えるぜ!!」


<ん~、はしゃいじゃってやっぱり、中身は女の子なんですね>


「リリッカさん危ない!!」


グラリと傾くリリッカさんの体を支えようとした、リリッカさんが僕の腕を掴む、そして二人共地面に落ちてしまった。


「汝らは、お互いを夫婦として愛し合い、生涯添い遂げることを誓うか?」


「「はい?」」


「よろしい汝らを、アリス神の御名の元、夫婦と認め互いに誓約せん。」


なんか如何にも有難そうな、老神父に結婚の誓約を言い渡されてしまった。


「いや、結婚するのは、あっちっす (――;)」


「ちょっとあんた達な~に!!」


新婦は泣き喚いている、やじ馬達は勝手なことを囃し立てている。リリッカさんは放心状態で突っ立っている。僕は腰が痛い。


「リリッカさん怪我はないっすか?」


「俺たち結婚しちまった。」


「はあ~、結婚するのはあっち、僕たちはただの事故っす。」


「アリス神の結婚の誓約は生涯一度きりなんだ、絶対なんだ。」


「はあ~ (@_@;)」


「そりゃお前にも、いろいろ都合と不満も有るだろうけど、俺はこんなだし、でも生涯一度きりの誓約なんだ、もう夫婦になるしかない!」


<運命ってこういう事かよ、あのくそ女神!そう言えばアリスって名乗ってたよな o(||li`ω゜∞)>


「分かりました、結婚しましょう(^_^;)」


「お、おう」


周囲から投げやりな祝福やら、やじやらが飛んでくる。


「とりあえず、ご飯でも食べながら現状を確認するっすよ」


「お、おう」

なんか、ほんのりリリッカさんの頬が染まっている。<あっ、やべ可愛い>


リリッカさんの行きつけの料理屋は旨かった、今まで食べたことのない味だったがすっかり気に入った。


「新居って言っても、今リリッカさんの借りている家しか住めそうな所は無いし、引越しって言っても僕は身一つっすよ」


「そうだよな、なんか劇的に変わるわけじゃないよな、ところでよ【ダンナ】って呼んでいいか?」


「へっ」


「いや世間ではそう言うじゃないか。」


「あぁ、まったくかまわないすっよ」


「ダンナ…へへっ」


リリッカさんが、照れくさそうに笑っている。<やべ、マジ可愛い…>


リリッカさんの借家は広めの2LDKだった。<そうかパーティー用だってナナさん言ってたよな、一人でこの広さは贅沢だ、リリッカさんは余程稼ぎが有るのだろう>


「ベッドは一つしかねえぞ、まあ夫婦だからいっか」

「ところでダンナ、ふつっっ…」


「なんすか?」


「いや、こういう時はなんかお決まりのご挨拶が有るんだろう、俺はそういうこと疎くてよ」


「細かいことはなんでもいいっすよ。」

「ところで同じベッドで良いんすか?」


「どうせ夫婦になったんだし、ダンナが良ければかまわねえよ」


「それじゃそういう事で。」


〈なんか話が早い、初夜か~、緊張するうっ…でへ♡〉


リリッカさんはぱっぱっと服を脱ぎ散らかし、さっさと大きなベッドにもぐりこむ。


〈あっ、やっぱりオッパイ大きい…♡〉


僕も服を脱ぎベッドに滑り込む、意外なほど大きなベッドだ。


「リリッカさん…」


「ンゴ…、ガー…」


〈眠ってるし、異様なほど、寝つきがいいんだ(-.-)〉


突然リリッカさんが、空中に向かって蹴りを放つ、バタンと腕が振ってきた。


〈凄い寝相だ、だからこんなにベッドが大きいんだ。(――;)〉


「あのリリッ…」


僕のあごに、リリッカさんの肘がクリーンヒットした、意識がスーッと遠くなる。


〈初夜なのに~ (@_@;)〉


☆☆☆


意識が戻ると朝だった。


「ようダンナ起きたかい、随分とぐっすり寝ていたな。」


「はい、おかげ様で」


リリッカさんに目を向けると、全裸で“紅”を構えている、切っ先をすーっと動かしながら、ストレッチをしている様だ、<ん~、ゴツイ!!(――;)>リリッカさんの体は、筋肉が発達し盛り上がり、そして引き締まっている、腹筋も6パックに割れている。しかしながら、大きなバストは柔らかそうだし、腰のあたりはキュッと括れている、引き締まったヒップは艶っぽい。


「ダンナ、何見ているんだ」


「いや、美しいなって」


「美しいって俺の事か?」


リリッカさんは、耳まで真っ赤になっている。<やべ、マジ可愛い(#^.^#)>


「ところで、朝っぱらから何しているんです?」


「これか、朝起きたら、その日の体の調子を見ることが日課なんだ、筋肉の動きを一つ一つ点検しているんだよ。ダンナもやっておいた方がいいぜ、でないと思わぬ不覚を取ることになる。」


「Lv1じゃ不覚を取る暇もないっす」


「wwwww、そうか。」

「ダンナもそんな服じゃなくて、もう少し防御力の高いものにした方がいいな。」


「その前に金っす。」


「そうだな、久しぶりにちゃんと稼ぐか?」

「とりあえず、ギルドに行こう、朝飯もそこで食える。」


「はい、ナナさんに相談もあるし。」


そして、二人で仲良くギルドに向かい歩き出す。



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