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白い死神  作者: コモルー
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8話 ノエル町

「お母さん、ローズ、オルガさん、町の皆、行って来ます。そして勝手ながら一部の遺品を拝借させていただきます」


リュウは町の広場に作ったお墓の前で手を合わせた、お墓は直径十メートル、高さ五メートルほどのドーム状に土を盛ってつくり、天辺(てっぺん)にオルガさんの杖を刺しただけのものである。

 ちなみに町民の亡骸は死霊術師などに利用されないように氷葬花であの世に送り、遺品だけを墓に埋める形となった。


リュウは改めてバックパッカーから地図を取り出して行く先を確認する。(バックパッカーや地図、服などは町民の亡骸を捜索中に見つけて勝手に拝借したものである)


「え~と、取り敢えずはここ(キルト町)から西にあるノエル町を目指そうかな?」


リュウは地図をバックパッカーにしまうと朝日を浴びながらキルト町を後にした。


数時間後すっかり日も高く上がった頃にリュウは道の片隅にある木の下で休みをとることにした。


「え~っとどれくらい町に近づいたかな?」


リュウはバックパッカーから地図を取り出して確認すると周りの小川や遠くに見える湖などからようやく半分という距離まできた事を確認する。


「結構距離あるなぁ...多分本気で走ればすぐにつきそうだけど旅はこういうのが醍醐味(だいごみ)らしいしな」


リュウはローズに言われた言葉を思い返す。


「復讐なんかに捕らわれ無いで幸せになってね...か」


リュウは荷物を地面におろすと後頭部で手を組み、木に背を預けて座った。


「復讐するも、魔族と魔王は僕が殺したし、恋人を見つけるのもローズ意外とはねぇ...」


リュウは遠くに流れる雲をなんとなく眺めた、そして数分雲を眺めたところである目標を思い出した。


「そう言えば自由に生きるという目標があったな...」


リュウは意を決して立ち上がる。


「やること無いし、冒険者になって世界を自由に旅でもするか!!」


リュウはバックパッカーを背負うと再び歩き出したがすぐに止まった。


「冒険者になるのだから今の自分の実力を確かめるためにも本気で走るか!!」


リュウは姿勢を低くしてクラウチングスタートの姿勢を取るとノエル町に向かって全力で走った。


数分後...


「ついちゃったよ...歩いて数時間の距離を数分で走破しちゃったよ...しかも息すら切れてないし...」


リュウは自身の桁違いの能力に若干引きつつもノエル町に入るために閉じられた大扉の前立った。


「まだ昼過ぎなのになんで扉が閉まって要るんだ?」


リュウの故郷、キルト町では魔物が町に侵入するのを防ぐように壁が町を囲んでおり、四つの方角にあった扉は朝九時から夕方四時までは開かれており、それ意外の時間については大扉の脇にある小扉から入る事となっていた。

 しかし、ノエル町は昼過ぎなのに閉じられたおりさらに小扉の方も人影がなく、まるで外部から敵が攻めてくると物語っているように感じた。


「すみませ~ん!!誰かいませんか?」


リュウは小扉をノックするとしばらく時間がたってから完全武装した三十代の兵士が一人出てきて中へ入るように促し、リュウは兵士の詰所に案内され、テーブルを挟んで向かい合うように椅子に座った。


「遅くなってすまない、何せ、隣町のキルトが魔王に壊滅させられたと報告が入って兵士も冒険者も手が離せなくてな、それと緊急事態ゆえに勝手ながらそなたが魔族でないかどうか確認させてもらったよ、すまなかった」


頭を下げて謝る兵士に対してリュウは別に構わないと手を横に降った。


「いえいえ、そういう事でしたら構いません」


「ん?」


あまりにもあっさりとした反応に兵士は違和感を覚えた。


「あと、君が歩いて来た方角はキルト町がある方向だったが何か知っていることがあったら教えて欲しい」


リュウは思い出す素振りしながら、何を話して何を言わないべきか考えた。


「(げっ!!あまりにもあっさりし過ぎていたかな?、たしか報告が来ているってことは誰かは無事に逃げ残れたみたいだね、でも僕がキルト町から来たと言うと魔族や魔王について聞かれるし、倒したと言っても見た目十五の僕じゃ信じてくれないだろうな...だから襲撃される前にキルト町を出たと答えるのがいいかな?)」


リュウは思い出して見ても心当たりがなかったと首を振った。


「ごめんなさい、特に心当たりはありませんでした」


「そうですか...」


兵士は残念そうに言うとリュウを町へ案内した。


「こんな時言うのも変ですが、ノエル町へようこそ」


「いえいえ、お忙しいなかありがとうございました」


リュウは頭を下げると町の中心へ向けて歩き出した。


「で、どうだった?」


リュウの背中を見送った兵士に同年代の兵士が訪ねる。


「わからない、彼はキルト町が壊滅した事を聞いたときは無反応だったが、キルト町について聞いたら心当たりがないと言った。これは何か情報を隠しているのか、ただ町がどうなろうが無関心だったか、はたまた壊滅した知らせを道中の何処かで聞いたかの三択だ」


「でお前はどう思う?」


「とれでも無いと思う、そして彼は敵じゃない」


「なんじゃそれ?!」


兵士は驚きの顔で兵士を見る。


「もし、敵ならわざわざ侵入を知らせるような入り方はしないし、検査魔法で黒と出るはずだからね」


「それもそうだな」


「まっ彼が敵では無いのは間違い無いんだ、多少怪しかろうが今は仕事だよ」


「そうだな、この町にはキルト出身の者やゆかりの者も多い、早く魔王の手から解放してやらねばな」


「勿論さ」


二人の兵士はその場を後にするとそれぞれの上司にキルト町方面から人が来たが今回の件について無関係だと伝えた。












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