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白い死神  作者: コモルー
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6話 更なる絶望

「ウオリャヤヤヤアアア!!」


リュウの氷蓮花が魔族の体をめがけて振り下ろされるが、魔族は紙一重でそれをさけ。魔族はカウンターでリュウの頭に回し蹴りを打ち込むがリュウも紙一重で避けるとリュウは魔族の懐深くに潜り込み手のひらを向けた。


氷刺(ひょうし)!!」


リュウの手のひらからまるでマシンガンのように氷の(とげ)が乱射され魔族はとっさに後方へ大きく跳ぶが全て避け切れずに被弾する。



「ほう...少しはやれるようですね...」


魔族は全く声色を変えずに言った。


「では、お返しです」


魔族はリュウに手のひらを向けると黒い玉が手のひらに現れて無数の小さな黒い玉がリュウめがけて乱射された。


氷室(ひむろ)!!」


リュウを囲うように氷のドームが現れ魔族の黒い玉とぶつかり砂ぼこりが舞う。


氷刺(ひょうし)!!」


魔族は向かってくる氷の刺を容易く避ける。


「ゼロ距離でなければその技を避ける事など容易い」


魔族がドヤ顔で言う。


「なら避けてみろ!!」


魔族は驚いて振り返るとリュウが魔族の腹に掌底を打ち込む。


「グア!!」


「大氷刺!!」


リュウから放たれた特大の氷刺は魔族の体に大きな穴を開けて貫通する。


「そんな馬鹿な!!」


魔族は血を吐いて前のめりに地面に伏した。


「やった...僕は魔族を倒したんだ!!」


リュウは拳を握りしめてガッツポーズを取る。


「おめでとうございます()()()さん」


聞こえて来るはずの無い声が聞こえて、リュウは声のする方に振り返る。


「作戦としては悪くなかったですよ、氷室という壁で私の攻撃を防ぐのと同時に氷刺という魔法に遅らせて発動するようにし...」


魔族はゆっくりとリュウに向かって足を進める。


「私の視線を釘ずけにする。そして私の四角から不意をつき渾身の一撃をお見舞いする...実にヒヤヒヤしましたよ!!」


リュウは薄気味悪い笑みを浮かべる魔族を氷蓮花が切りつけるが()()魔族同様に軽く手で止められた。


「まぁ、所詮は()()騙しの幻影でしたがね」


魔族はリュウの腹を蹴り跳ばし、リュウは後方の建物に衝突して穴を開けた。


「うーん、まだまだ絶望が足りないですねぇ~」


魔族は穴からフラフラして出てくるリュウに笑みを浮かべて眺める。


「ああ...僕はまだ死ぬ訳にはいかないからなぁ...」


リュウは苦笑しながら力強く魔族を睨み付けた。


「お母さん...いや、町の皆の(かたき)を取るまでは!!」


「実に遊びがいのある子供ですねぇ~、私は好きですよ!!そう言う希望を捨てない奴は...」


魔族は両手を広げて高らかに言うとリュウに氷のような視線を向けた。


「そして、絶望させた時の姿を見るのが一番の大好物なんだよ!!」


魔族の雰囲気がさっきのまでのふざけた空気から残虐な子供の空気に変わった。


「君には期待しているよ。君の瞳に絶望が宿った時、君は私の心何より楽しませてくれそうだからね...」


「そうか、なら残念だったな魔族。僕は決して絶望する事は無い。何故なら再会を約束した大切な人がいるからだ!!」


リュウはポケットから金のバラのイヤリングを取り出して耳につける。


「うっ...」


少し痛みがあったがリュウは無視してつけ、魔族を見据えた。


「僕はここでお前を倒す!!」


リュウのイヤリングが光を反射させて煌めいた。


「素晴らしい!!、実に素晴らしい!!」


魔族はリュウに盛大な拍手を送った。


「最後までその威勢を続けて下さいねリュウ君。そして私をもっと楽しませてくれ!!」


両者は睨み合い、リュウは魔族の隙を伺い、魔族はそれを楽しそうに眺めていると、リュウの耳に今一番聴きたくない声が聞こえてきた。


「まだ遊んでいたんですか?」


両者は声の主に視線を向けると黒いモヤモヤに赤い目の人影、魔王ザラキが建物の残骸の上に立っていた。


「どうやら勝負はついた見たいですね」


「ああ、ちょっと危なかったが見ての通り、勝って戦利品もある」


ザラキは手元にある木の根っこのような杖を魔族に見せた。


「実にいい杖でね、途中逃げる冒険者達で試し打ちしたところ魔力の増幅も制御もしやすく気に入ったよ」


「なん...だっ...て?」


ザラキの言葉にリュウ嫌なイメージが頭に浮かぶ。


「勿論皆殺しにしたんですよね」


魔族はチラッとリュウの顔を見てわざとリュウに聞こえるように言った。


「ああ、一人残らず皆殺しにしたよ。しかし小さな町だから骨のある奴がオルガとローズと言うやつしかおらずまだまだ暴れたりないよ」


「安心しろザラキ、お前にはもっと暴れて貰うからな」


リュウはザラキの言葉に頭が真っ白になった。


「嘘だろ...ローズが殺られたなんて...」


「よくやったザラキ、どうやらローズと言う人はリュウ君の思い人だったらしい、グフフフ...」


魔族の顔が歪み欲望にまみれた笑みを浮かべる。


「ウォオオオオオオ!!」


リュウはザラキに全力で突進し氷蓮花で切りつける。


「お前の技は俺に通じない」


ザラキは氷蓮花を容易く掴むと反対の手をゆっくりと後ろに引き、リュウの心臓を手刀で貫く。


「グッファ...」


リュウの口から大量の血が吐き出される。


「あ~あ、殺しちゃった。折角面白い所だったのに...」


魔族は残念そうに言うと、ザラキはそんなこと関係無いと無言で手刀を抜いた。

 手刀が抜かれた胸からも血が吹き出してリュウは血からなく地面に倒れる。


「(チクショウ...)」


闇に沈み行く意識に水滴の落ちる音が聞こえた。


「(チクショウ...)」


感覚も薄れ消え行く意識に再び水滴の落ちる音が聞こえる。


「(死ねない...)」


もうほとんど残っていない意識に水滴の落ちる音がハッキリと聞こえる。


【(死ぬ訳には行かないんだ!!)】


リュウの()()はずの心臓がドクンと跳ねた。





















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