5話 魔族と魔人
「リュウ!!リュウ!!リュウ!!」
「ローズ?」
ローズが必死にリュウに呼びかけてリュウは目を覚ました。
「僕は...うっ...」
リュウは酷い頭痛と共に先程の光景を思い出す。
「あいつ母さんをおおお!!」
リュウは立ち上がると魔人と戦うオルガに加勢しようと前に出るがローズがリュウの手を引き反動で振り返ったリュウの頬に平手打ちを食らわせる。
「リュウ、正気になりなさい!!、先程あなたはあのザラキと言う魔王に簡単にあしらわれたのよ!!、今戦っても勝てないわ!!」
「そんなことやって見なければ分からないだろ!!」
反発するリュウに対してローズもう一発平手打ちを食らわせる。
「いい加減にしなさい!!」
リュウは初めの一発よりも重たい二発目に体がふらついてしりもちをつく。
「私は諦めろとは言っていないわ...ただ今の私達でわ敵わないといっているの!!だから、今は逃げて最強くなってから倒せばいい!!、私だって町を滅茶苦茶にし、町の人達を殺したアイツをが憎いよ!!、でも、でもね...」
ローズは目が徐々に潤いやがて涙を流す。
【今の私達じゃアイツに勝てないのよ!!!!】
涙を流すローズを見てリュウは冷静になった。
「わかった...ローズ、今は逃げよう...そしていつか必ずアイツを倒す!!」
リュウとローズは町から逃げる組の冒険者と一緒にオーガやゴブリン、中には元町の人だったアンデットを倒しながら東の門へ向かった。
「すまない...」
リュウはアンデットに謝罪しながら氷蓮花で斬り倒す。
「絶対あの魔王は許さないんだから!!」
ローズは怒りをぶつけるようにオーガを雷の魔法で撃ち抜く。
「絶対に生き延びていつか必ずアイツに復讐するぞぉ!!」
「「「「オオオオオオオオ!!」」」」
冒険者の一人が叫ぶと周りの人達も雄叫びを上げた。
「いいえ、復讐する必要はありません...何故なら皆等しく死ぬからです」
冷たい声が聞こえた方に全員が振り向くと建物の屋根に黒髪に金の目、黒く曲がりくねった二本の角が頭から生えた魔族の男が立っていた。
「なぜこんな所に魔族が!!」
「魔王はあの魔人だけのはずじゃあ?!」
「まさか?!、アイツが魔人を?!」
「おおよそ正解!!」
動揺する冒険者達をあざ笑うかのように魔族の男は拍手をする。
「私があの魔人を作りこの町を襲わせました」
魔族のとんでもない発言に冒険者達は怒りを露にする。
「ふざけるなぁ!!何故俺達の町なんだ!!」
「お前のせいで仲間は死んだのだぞ!!」
「私の家族もよ!!」
「身重だった妻もだ!!」
冒険者や町民
が魔族に対して怒りを露にすると魔族はうるさいな~と頭をポリポリかく。
「まぁ、強いて言うなら自業自得かな?」
まるで子供の言い訳見たいなセリフに冒険者達は激怒する。
「ふざけるな!!、俺達が魔族に何をしたって言うんだ!!」
「そうだ!!、妻は魔物処か虫すら殺すのをためらう人だったんだぞぉ!!」
「黙れ虫けらがぁ!!」
魔族は藍色の魔法を複数冒険者に打ち、多数の爆発が起こる。
「貴様ら人間が私の同胞を何人殺したと思っている!!、中にはお前らの言うような虫すら殺すことをためらう魔族だって居たのだぞぉ!!」
土煙が晴れてボロボロの冒険者達は黙って魔族の男の話を聞いた。
「貴様ら人間は我々の基礎能力がお前より高いだけで勝手に我々を恐れ、敵と見なし侵略してきた!!、これ報復なのだよ!!人間に対する魔族からのなぁ!!」
魔族は言いたい事は言い切ったと晴れやかな表情で言う。
「ローズ、俺が時間を稼ぐから逃げろ...」
リュウは魔族の注意が自分から外れていることを確認するとローズに腰を落として近づき、小声で伝える。
「なにバカな事を言っているの?!、あなたも逃げるのよ!!」
ローズは当然反発し小声で言い返す。
「アイツから逃げるには今いる冒険者達じゃ力不足だ、それに将来ローズの方が僕より強い魔道師になりそうだからね」
「ふざけないで!!、私より年下で中級魔法が使えるあなたこそ!!」
「今まで黙っていてゴメン!!」
リュウはローズの言葉を遮って謝る。
「僕は転生者なんだ...生まれる前の記憶があるんだ。そしてその記憶を持っても天才のローズを越えられる気がしない...」
「転生者ならあなたの方が才能に頼ってばかりの私より...」
リュウはローズの口を塞ぐようにキスをする。
「好きな女の子を死なせたい男がいるか?」
ローズは急な展開に目をパチクリさせる。
「ローズ...一生愛してる...」
リュウは立ち上がろう膝に力を入れた所でローズに手を引かれて前に倒れる。
「待って!!」
ローズはリュウの目を真剣に見つめる。
「これをあなたにあげるわ!!」
ローズは自分の耳につけてある金のバラのイヤリングを外してリュウの手に乗せる。
「必ず生きて私の元に帰って来てね!!、そしたら私をリュウのお嫁さんにしてね」
ローズは涙をながしながら最高の笑顔をリュウ見せた。
「そんな事言われたら尚更死ねないな...」
リュウはイヤリングをポケットにしまって立ち上がり、魔族へ歩き出す。その姿をローズは涙をながしながら見送り、リュウの背中に物語で読んだ勇者の姿が重なって見えた。
「どうした人間ども!!図星過ぎてなにもいえないのか?」
魔族の言葉に冒険者や町民は言い返せずに下を向いていた。
「くだらねぇなぁ!!」
リュウは晴れやかな表情を浮かべていた魔族を挑発する。
「魔人を作れるほどの魔族なら何故一人だけなんだ?」
魔族は声を上げて向かって来る男の子に視線を向けた。
「なぜ、魔物をこれだけ動かせる力があるのに他より小さなキルト町を選んだんだ?どうして報復なのにまだ僕達が生きているんだ?、これなら広場で皆殺ししていた魔人のほうが報復と納得できるよ...」
リュウは魔族に向かって歩きながら氷蓮花を作り手にする。
「答えは簡単だ!!、お前は人間が絶望する姿を見たかっただけなのだから」
魔族の数歩手前でリュウは止まり魔族を見上げる。
「違うか?」
数秒の間が流れたあとに魔族は高笑いする。
「フフフフ...アッハッハッハッハ!!そうさ!!その通りさ!!、私はお前達人間が絶望する姿を見るのが大好きなのさ!!」
魔族の異常な発言に冒険者達は恐怖を覚えた。
「だが人間の子供よ...人間が魔族を沢山殺して来たのも事実だ!!、自分達人間が常に正しいと思っていたら大間違いだぞ!!」
魔族はリュウを指差しして見下す。
「ああ、わかってる、だがそれがどうした?」
予想外のリュウの言葉に魔族は驚く。
「確かに人間は、多くの魔族を殺して来たかもしれないが僕は殺していない。つまり魔族報復とは無関係なんだよ!!」
リュウはわざと魔族の周りを歩きローズ達が魔族の視界に入らないように誘導する。
「それになぁ...僕は子供じゃない...」
リュウは氷蓮花を魔族に向ける。
「リュウっていう名前がある!!」
リュウは氷蓮花で魔族に斬りかった。
【僕は必ずお前達を倒すんだ!!】