2話 勇者カイト
「おやおや、若き天才のカップルがこの冒険者組合に何のようですか?」
「「まだカップルじゃない!!」」
冒険者組合についたリュウとローズはお馴染みの受付嬢にからかわれていた。
「まだですもんねぇ❤️」
「「リーナさん!!」」
「ハイハイ、いつもの訓練場の使用許可でしょ?くれぐれも不純異性交遊なんかしちゃダメよ~プププ!!」
リーナと呼ばれた受付嬢は口元に手を当てて二人をニヤニヤしてからかって要ると後ろから来た先輩受付嬢に頭を書類の束で叩かれる。
「うぅ...何するですか?!先輩!!」
「子供をからかっている暇があるならこの書類やっといてね❤️、受付は私がやるから」
笑顔とは真逆の殺気に近いオーラを出す先輩受付嬢に負け、リーナはしょんぼりし、何度も振り返りながら奥の部屋に向かう。
「早くいけ!!」
「はい!!」
リーナは慌てて走り奥の部屋に消えた。
「ごめんなさいね、あの子普段は真面目なんだけどたまに変なスイッチが入っちゃうのが玉に傷でね...」
先輩受付嬢は苦笑いしながら言うと慣れた手つきで練習場の予定が書かれた帳簿を本棚から取り出して日程を確認する。
「えーと、今日は...」
「ギルドマスターはいるか?」
突然冒険者組合の出入り口が盛大に開いて少年一人に少女三人のパーティーが入ってきた。
「あいつはまさか?!」
「例の勇者か?!」
「俺初めて本物を見たよ」
「カッコいい!!」
「ハーレムとは羨ましい!!」
賛否両論の言葉があちこちから上がり、勇者らしき一行を歓迎する雰囲気が漂う。
「俺は勇者の中島海斗だ、支部長に例の件で会いに来たと伝えてくれ」
「かしこまりました」
先輩受付嬢はリュウ達に「ちょっと待っててね」と小声で伝えてから二階に上がって支部を呼んでくる。
「お待ちしておりました、勇者カイト様」
四十半ば程のオッサンが先輩受付の後に続いて階段から降りてくる。
「私は冒険者組合のキルト町支部の支部長をしております、ガンドと申します」
ガンドは丁寧にカイトにお辞儀をする、するとカイトは手で必要ないと止める。
「堅苦しい挨拶は無しにしようガンド殿、我々この度キルト町の周辺に潜伏している魔王を退治しに来たのだ」
カイトの魔王という言葉に部屋内は騒然とする。
「(オイオイ!!。こんな公の場で言っていい事じゃねぇだろ!!)」
心の中でリュウはカイトを批判する。
「カイト様!!」
動揺する支部長をカイトは片手で制すると両手を広げて高らかに話す。
「今このキルト町は魔王の危機にある!!、しかしご安心下さい!!」
カイトはその場にいる人々一人一人の目を流し見ながら話を続ける。
「必ず我々が倒してこのキルト町に平和を約束します!!そして必ず世界に平和を取り戻します!!」
カイトはここぞとばかりに拳を天井に向かって力強く上げると部屋内の人々は一団となって称賛する。
「カ・イ・ト!!」「カ・イ・ト!!」「カ・イ・ト!!」「カ・イ・ト!!」...
「では、支部長。魔王は何処にいますか?」
質問するカイトにガンドと頭を抑え、こうなったら仕方ないとしぶしぶ言った。
「ここから二十キロほど西にある森の中だ、ここ最近になってゴブリンだけではなく、オーガやトロールなんかも目撃されていることから魔王はオーガキングやトロールキングなどの巨人系の魔王と予想されている」
「ありがとうございます」
カイトは笑顔でガンドに礼を言うと、声援を受けながら冒険者組合を後にした。
「(名前から元の世界から来た勇者に違いないが、なんか危険な香りがする...ああゆう奴は不足の事態が起きたときに脆い、かつての塾の仲間が抜き打ちテストで動揺し、赤点とったように...)」
「何を一人で考え混んでいるの?」
ローズがリュウの顔を覗いて話しかける。
「いや、あの勇者様が本当に魔王を倒せるのか心配でね」
「リュウ!!」
ローズは慌ててリュウの口元を抑えて強引に部屋の隅に連れていく。
「なにするんだローズ!!」
「しっ!!」
ローズは口に人差し指を立てて小声で話す。
「リュウ、いくら勇者様が頼りなく思ってそれを口にだしてわダメよ。勇者は通常、王が認めた人か国民に認められたにしか名乗ることを許されない名前。だから勇者を疑うことはそれを認めた王や国民を否定する事になり最悪死罪よ!!」
リュウはローズの気迫にのまれて人形のように相槌を打つ。
「分かったならよろしい」
ローズはリュウの手を握りわざと明るく振る舞った。
「さあ、一緒に魔法の練習をしよ」