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白い死神  作者: コモルー
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11話 亡き友と送る氷の花

「グエエエエ!?」


「ジジャヤヤ?!」


「ズズブスス?!」


自分達のボスを一太刀で斬り伏せた少年にゴブリン達は恐れおののく


「どうしたゴブリン!!、お前達のボスは僕が殺した。憎ければかかって来るがいい!!」


リュウはゴブリン達にむけていい放つとゴブリンは踵を返して森へ逃げようと走った。


「ここまで村を滅茶苦茶にしたんだ、どのみち生かしては帰さないよ」


リュウは氷の粒子を拡散させる。


【氷胞子】


村全体に氷の粒子が広がったのを確認するとリュウはゴブリン達だけに狙いを定めた。


【氷葬花】


ゴブリン達が怯えた表情のまま凍りつき五枚の花弁をもつ氷の花を体に咲かせる。


「このゴブリン達は殺しても構わないよね?」


リュウは一番近くにいる女騎士に話しかける女騎士は人形のようにコクッと頷いた。


【散れ】


凍ったゴブリン達が一斉に砕け散り氷の粒子が幻想的な風景を作る。


「綺麗...」


誰かが呟いた。


「これで仕事は終わったかな?」


リュウは辺りを見渡して一番強そうな女騎士に向かって歩いた。


「僕はリュウ、冒険者として依頼を受けてきた。依頼主の村長さんはどちらに?」


あまりの光景に放心していたシルフィはリュウの接近に気づかずに動揺してリュウを剣で斬りつけた。


「隊長!!」


「隊長!!」


「シルフィ!!」


部下達の呼びかけでシルフィは命の恩人に斬りつけた事に気づく。


「しまっ...」


シルフィはあわてて刀を止めたが間に合わずリュウの首に斬撃が襲いかかる。


「問題ない」


リュウは女騎士の斬撃を容易く人差し指で止めるともう一度自己紹介をした。


「僕はリュウ、冒険者として依頼を受けてきた。依頼主の村長さんはどちらに?」


「ああ、私は紅の薔薇、二番隊、隊長シルフィだ。村長は奥の建物の中に避難している、その...さっきは斬りつけてすまなかった」


シルフィはリュウに頭下げて謝罪する。


「その事なら気にするな、別にわざとじゃなければ恨んだりしない」


自分が殺されかけたのにあっさり謝罪を受け入れたリュウにシルフィは心を奪われた。


「(強い上になんて寛大な心の持ち主なのだろう...リュウ()...)」


「顔が赤いぞ?、ゴブリン達の戦いで怪我をしていたなら治療してよく休む事だ、今夜の見張りなら僕が引き受けよう」


リュウは、そう言うと建物の中へ入って行った。


「「「「リュウ様❤️...なっ?!」」」」


女騎士のほぼ全員がハモった事に気づき互いに顔を手で覆って隠す。


「隊長にも春が来たんですね」


副隊長のリンはニヤニヤしながらシルフィの肩に手を置く。


「バカ言うな!!、私はリサーナ王妃に仕えると決めた時に女は捨てた!!」


リンの手を払い退けてシルフィは立った。


「そしてリサーナ王妃はいつも言っていましたよシルフィにはいつか女として幸せになってもらいたいと...」


「私は亡くなった仲間の遺体りを回収してくる!!ついてくるな!!」


シルフィはリンに強く言うと歩幅を大きくして闇夜に消えた。


「全く、シルフィ隊長は素直じゃないんだから...」


リンは呆れたように言うとシルフィを追ってリンも闇夜に消えた。


「え~っとつまり依頼主の村長は先の戦いで亡くなったと言うことですか?」


「はい、ダイゲンおじいちゃんは亡くなりました...」


一本のろうそくの明かりが照らす暗い倉庫の中で村長の孫娘と言う女の子が小さな声で言う。


「なら村の代表者はどなたですか?」


リュウの質問に対して生き残った少年、少女、奥様方は目を見合わせて困った表情をする。


「(これは想定外だな...まさか村の男達はゴブリンとの戦いで全員死亡、さらに村長の血縁者は目の前にいる幼い少女だけ。これでは依頼完了のサインが貰えず失敗かぁ...)」


リュウは腕を組みこれからどうするかを考えた。


「仕方ない、なら、紅の薔薇の隊長さんに依頼達成の代筆が出来ないか頼んでみるよ」


リュウは立ち上がり倉庫から外に出ようとすると後ろから声がかけられた。


「あの...待って下さい!!」


村長の孫娘と言う少女がリュウに話しかける。


「今回村を助けて頂きありがとうございました」


少女の言葉に続いて生き残った人達は頭を深く下げた。


「礼なら紅の薔薇の皆さんに言って下さい、ここまでゴブリンに持ちこたえて頑張ったのは彼女達ですから...それに僕は()()で来た、ただの金の亡者ですよ...」


リュウはそう言ったその場を後にした。


「優しい人です。本当に金の亡者なら超過依頼(オーバーリライエッツ)なんて受けないです」


少女はそう呟くと改めてリュウがて出ていった出入り口に向かって頭を下げた。


「隊長さんはどこですか?」


リュウは近くにいた女騎士に聞くと仲間の亡骸を回収しに行ったが、何処へ行ったかはわからないと答えられた。


「そうですか、ありがとうございます」


リュウは軽く頭を女騎士に下げると隊長を探して壊れた村のなかを捜索する。


「亡骸の回収か...」


リュウ自身大切な人を亡くし、自分の手で葬送した経緯があり、なんとも言えない複雑な気持ちになる。


「せめて、手伝う事は出来るはずだ...」


リュウはいつの間にか止まっていた足を再び動かして隊長を探した。


「この子達はお前らの餌じゃない!!」


シルフィは仲間の亡骸を黒い狼の魔獣から守っていた。


「グルル...」


「ウウウ...」


「ガウッ...」


黒い狼達は血の香りに釣られてやって来るのか、徐々に数を増やし今では二十頭近くまで増えていた。


「クソッ...あいつらに斬りかかりたいがこの場を離れれば後ろの亡骸をあいつらが持って行ってしまう...」


シルフィは剣を構えて威嚇するだけで攻めに転じられないでいた。


「これはすまない事をしました、シルフィさん」


「リュウ様?!」


「様?、リュウと呼び捨てで構いませんよ、それには非礼だったのは自分です、お仲間亡骸まで注意が及ばないとは。そのせいでシルフィさんにこうして迷惑をかけている」


リュウはシルフィに頭を下げた。


「いえ、いえ、とんでもない!!リュウ()...いやリュウ()()には危ない所を助けていただいた上に、私達では手に負えなかったゴブリン達を倒していただいて、感謝こそしますが、恨んだりその様な事はしません!!」


シルフィは動揺しながら身振り手振りでリュウの頭を上げて貰おうと伝える。


「そう言って頂けると助かります。さて、少し害獣がいるようなので代わりに排除してもかまいませんか?」


「ええ、大丈夫です!!」


妙に力の入った回答にリュウは薄く笑みを浮かべた。


【氷胞子】


リュウの体から氷の粒子が拡散する。


【氷葬花】


黒い狼達は一瞬で凍りつき五枚の花弁の花を咲かせる。


【散れ】


黒い狼達は一瞬で砕け散り、氷の粒子が幻想的な風景をかもしだす。


「終わりました、ついでにこれから村に近づいてくる固体も凍らせましたのでしばらくは大丈夫だと思います」


「ありがとうございます」


シルフィはリュウに深く頭を下げる。


「いえ、いえ、私も大切な人を亡くした身ですので、自然の理と言えど食われるのは忍びない」


リュウはそう言ってまだ十代前半の女騎士の亡骸を担ぎ上げた。


「僕にも手伝わせて下さい」


「すまないが、お願いする...」


シルフィも仲間の亡骸を肩に担いで村の広場に向かった。


広場に向かうとすでに大半の亡骸が集められており改めて仲間の死を認識したのか涙を流す女騎士もいた。


「よいしょ!!」


シルフィは仲間の遺体が並べられている列に背負ってきた少女をゆっくり並べた。


「アイラはビビりな子でな...初めは剣すら持つのを怖がる子だった」


リュウは黙ってシルフィの話を聞くとアイラの隣に担いで来た少女を優しく下ろした。


「カナは正義感の強い子で、よく町のチンピラ相手に喧嘩をしていたよ...」


シルフィの蒼い瞳から一筋の涙が流れおちる。


「今だけなら、声を出してもいいんじゃないかな?」


リュウはシルフィに優しく言った。


「バカ言うな!!、私は紅の薔薇の二番隊、隊長だぞ!!」


シルフィは涙を浮かべながらも力強い目でリュウをにらんだ。


「隊長だからこそだ!!、一番責任を強く感じている隊長が泣くのを我慢していると他の子も泣くに泣けないんだ!!」


リュウの言葉にシルフィは驚く。


「それに、泣かれずに見送られるのも可哀想じゃないかな?」


リュウは視線をシルフィから地面に横たわる彼女達に移す。


「そう...かな...そう...だよな...うっ...うあああああ!!」


シルフィは溢れる涙を止めずに泣いた、今までこらえていた感情が爆発するように大きな声で泣き叫んだ、そして隊長の涙にに釣られて彼女達も亡骸友に涙を流して、思いの限り泣き叫ぶ、それは空が薄く明るくなるまで続いた。


「ぐすっ...もう大丈夫だ...ありがとう」


すっかり目が赤く腫れたシルフィはリュウに礼を言った。


「別に構わない、泣きたい時は泣けばいいんだ、その方が亡くなったもの達のためにもなると思うから...」


リュウそう言うと明るくなり始めた夜空を眺める。


「もうすぐ夜が明ける、朝日と共に僕は()()()やりたいと思うがどうかな?」


「それがいいと私も思う」


シルフィはリュウに並び立つように歩き、同じ空を見上げる。


「送り方には紅の薔薇独自の送り方とかはあるのかな?」


リュウはシルフィの横顔をに視線を向けて話した。


「確かにあるがここは山の奥。とても形式通りには送れないよ...」


シルフィは残念そうにリュウを見つめる。


「なら、僕の【氷葬花】で送っていいかな?、ゴブリン達と同じで嫌かも知れないが、僕の知る限りこれが一番()()()送ってやれると思うから...」


シルフィは女騎士達に顔を向けてリュウの【氷葬花】で送っていいか訪ねると全員が構わないと了承を得てからリュウにお願いした。


「彼女達をリュウさんの魔法で送ってやってほしい」


シルフィはリュウに頭を下げるとリュウは亡骸の列を前に達手を真横に振り、亡骸だけではなく村の地面、建物全てを凍らせて美しい氷の景色を作る。


【氷葬花】


氷の地面から氷の花が次から次に顔を覗かせて一面氷の花畑と化した。


「すごい...」


シルフィの口から言葉が漏れる。


そして朝日が山から顔を出すと、突然風が村に流れ込み氷の花が宙に舞う。花が散った事で全ての氷が砕け散り、氷の粒子が風に運ばれて天に登って行った。


「今までご苦労様でした!!」


「「「「ご苦労様でした!!」」」」


シルフィは亡き友達に左胸の前に拳を持ってくる敬礼をし、女騎士達も亡き友達に敬礼した。




















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