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3話目 羞恥

「若いから難しい顔をするなよ。楽しく生きようぜ、アキよ」


 キシさんはぼくを抱きしめてくれた。その温かさに泣きそうになっていたところ、急に突き飛ばされてしまった。なんだ?



「なんですか、痛いじゃないですか!」


 抗議の声をあげると、キシさんは自分のお尻を手で隠す。なにをしてるだろう。


「さ、先に言っておくけど、おれは男に興味はないからな! そういうBLとか、ヤオイとか、ほかに当たってくれよな」


 誤解されてしまった。


 趣味がバレたらこうなることを予想してたので、ぼくとしても反論をしないといけない。


「ち、違います。ああいうのは絵が好きなだけで、ぼくも女の人がすきなんです!」


 ぼくを疑うキシさんがそれを聞くと コロッと態度を変えて、またぼくに抱き付いてきた。


「そうかそうか、わるかったな。お詫びにいい子を紹介してやるぞ? この城には若くて綺麗な子がいっぱいいるぜ? 巨乳も貧乳も、ウサミミにネコミミだ。アキの好みを教えてくれたら選り取り見取りだぜ? なんなら風呂場でも一緒に覗きに行くか?」


 これだからおじさんは嫌だ。デリカシーがなさすぎるよ。


「け、結構です。覗きなんてことはしませんっ!」


「嘘つくなよ、本当は興味津々だろ? 見たいなら見たいと言えよ。ここはおれとアキしかいないぜ? 本音を言えよ、正直者にはご褒美があるぞ?」


 キシさんの悪魔のような誘惑には勝てなかった。ぼくも巨乳とウサミミにネコミミをみたいです。貧乳はちょっと興味がないかな。


「み、見たいです……」




「……よっしゃー! 今回もおれの勝ちだ! 部屋を出るまで持ったなかったぞ!」


 いきなりキシさんの雄叫び声にぼくはなんのことがわからず、戸惑って辺りを見回すと閉まってた扉が突然開いて、居なくなったはずのマリアーヌお姉さんと騎士さんたちが石室の中になだれ込んでくる。



「ちっくしょう、部屋を出るまでに我慢しろよ」

「やっぱり無理だったか、若いから恥ずかしくなると踏んだのに」

「ったく、おれがその年の頃はムッツリだったことを忘れてたぜ」


 キシさんが騎士さんたちから丸い金色に輝く貨幣を受け取った。こうなるとようやくぼくも事情が読めてきた。ぼくがキシさんの誘いに部屋を出る前に乗るかどうかが賭けとなってたみたいだ。



「ははは、ぼろ勝ちだぜ。ありがとうな、アキ。おかけで大金が手に入ったぜ」


「キシさんの嘘ツキぃ!」


 恥ずかしさで泣き出しそうなぼくを、キシさんに肩を叩かれてから、わしゃわしゃとぼくの髪をキシさんの手で掻き乱された。


「嘘じゃないぜ? 女の子はちゃんと紹介するからな、期待してろよ」


 ぼくが反論するよりも早く、マリアーヌお姉さんが生温かい視線と微笑みをぼくのほうに向けてきた。



「アキヒロは若いわね、まだまだ青いわよ。ケモミミがいいならいい子を紹介するわ。アキヒロの好みをちゃんと教えなさい」


 ぼくの顔が自分でもわかるくらいに真っ赤になって、全身の汗腺から汗が流れるように吹き出した。


 ここで死を願ったら、違う世界へぼくは移転移できるのかな。


ありがとうございました。

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