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34話目 結末

 イジメの件はあっさりと片が付いた。


 翌日に学校へ行くと、イジメっ子グループはいつものようにぼくに絡んできた。主犯格だけを目掛けて ぼくは手応えが確かな反撃を行った。


 力を失ったとは言え、ケンカのコツも相手に痛みを与えることも魂が覚えているようで、悪党たちにも劣るこいつらに、ぼくが負けるはずもなかったんだ。


 主犯格が鼻血やら口やらが切れて 自分で吐き出した血に塗れて、クラス中が大騒ぎになった。学年主任がぼくたちに聞き込みした結果、メガネ委員長の証言もあって、イジメのことが明るみに出た。



 ことを重視した校長先生が自ら事態の解決に乗り出した。イジメっ子グループの悪行が次から次へとばれてしまい、ぼくの両親は学校に厳重な抗議を申し入れた。


 イジメっ子グループの親たちはわりと良識のある人たちで、うちへイジメっ子を連れて来て平謝りしたが、ぼくにはもうどうでもよかったんだ。


 結局、イジメっ子グループは全員、その親の意向で転校することとなり、やつらもおれの復讐を恐れてか、あっさりとこの学校から姿を消すことになった。


 本当にどうでもいいことだ。



 学級ではクラスの担任がほかの学校へ転任して、新しい女の担任先生は心のケアだのなんだのでぼくに構ってうるさい。なんでことが大きくならないと、こういうふうにしか対処できないのかな? 初めのうちにちゃんとすればなにもないのに。


 大人って、くだらないと思うときがこの頃のぼくには多々とあるんだ。



 そんなことよりぼくはこの学校に来てからしたかったことがあるんだ。


 放課後、ぼくは旧校舎のほうに足を向ける。


 文化部が集まっているこの校舎にはお目当ての同好会があったんだ。その教室の前に立つと扉を2回ほど叩いてから、扉を開けることにした。



「こんにちは。部活の見学にきたですけど」


 中にいる女の子たちが全員おどろいた顔をしている。そりゃそうか、この学校のマンガ研究実践会といえばBL同人誌作成で、部活活動ではその名を轟かせている。餌食になった先生や運動部の部員が震えあがっているうわさがあるほどだ。


 そこへ男子が乗り込んで来たわけだから、驚くなというほうが無理があるんでしょうね。



「村上くんよね、どしたの?」


 一人の女の子がぼくに声を掛けてきた。


 同級生であるこの吉住さんのことはよく知っている。そもそもここへ来ようとしたのも、休憩時間に彼女が書いた同人誌の下書きに興味を持ったからだ。彼女の描く絵柄はもろにぼくの好みである。



「あらかじめに言いますけど、ぼくは同性に性的興奮は覚えません」


「「キャー、同性に性的興奮だって。そそるわ!」」


 うん。こういうのは鍛えられているから、耐性があるので気にせずにいこうか。



「ほう。それでは村上くんなるものは、我が部へいったい何の用できたか、説明を願おうじゃないか」


 ぼくが話を切り出す前に一番奥のほうで座っている、上級生みたいな女先輩がぼくに質問してきた。


「はい。簡単にいいますとぼくはBLの絵柄がとっても大好きです。意味もなく丹精を込めて仕上げる一コマ、情欲のみならず繊細な動作に拘った構成、ぼくはBLを読むのが大好きなんだ!」


 こういうときは大好きという殺し文句が使えることを、異世界で学んできたんだ。遠慮なく使わせてもらおうか。



「「キャー、大好きだって! くるわ、きちゃうわ!」」


「特に吉住さんが描くものに芸術すら感じてる。そんな彼女が入ってる部活に、ぼくが追い求めているものがあるかもしれないから門を叩かせてもらいました」


 吉住さんが顔を真っ赤にして下を向いてしまった。こういう恥じらいを見せつけられるのはとても新鮮、あっちじゃクサり果てたやつらばっかりだったからな。



「うむ。村上くんなるものの情熱はわかった。しかし我が部も実践にこそ道が開くと考えている。そこら辺をきみはどうやって自己表現してくれるのかな?」


 女先輩のことは部長さんと考えていいだろう。


 さて、彼女たちが求めようとしているものはわかっているつもり。あっちじゃ、散々苦汁をなめさせられてきたからな。



「……異世界、団長さんに見習い騎士、獣人の子と友情の果てに実る想い、熱き戦いのあとで伝える真実の愛情——」


「——陳腐だ、実に陳腐である! だが使い続けるこその陳腐だ。よかろう、君の入部を認めよう。わたしは部長の足柄だ、今後も良きネタを頼むぞ!」



「よろしくね、村上君。あと、絵が好きって言ってくれてありがとう……」


 消え入るような恥ずかしそうな吉住さんの声がどうにもたまらなかった。



 戦争は数で女は恥じらいだよ兄貴。


 キシさんがよく口にしてた言葉、今ならぼくにも理解ができるんだ。


ありがとうございました。

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