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26話目 挑戦

 少量の食料品を分かち合いながら食べる。水は怪我人にも使うので大切に使う。ギガンテスの咆哮は近くに鳴り響いたり、遠くからこだましてきたりして、それが叫び止むことはなかった。


 ヒーラーが定期的に怪我人の治療をしていて、マジシャンは魔力の回復を努める。ぼくはリーダーさんとの間に流れている変な空気に耐えながら、みんなからの生暖かい視線を無視することに決め込んでいる。



 そして、ついに状況が変えられてしまう出来事が起こってしまった。


 モンスター部屋の中で数頭のオークが湧き上がってしまい、そいつらはギガンテスに居場所を知らせるように大きな奇声をあげてしまったんだ。



「くそっ。ここまでか……行くぞ、みんな!」


「「「おー」」」


「無事に帰ってきてっ!」


 リーダーさんの切なる願いに、ぼくは頭を一回だけ頷いて見せると小部屋から飛び出した。なにか気の利いた言葉をかけたほうがいいのでしょうけど、恋愛の経験値がゼロのぼくは、キシさんと違って、そんなシャレたマネができない。



 それより、いまはギガンテスとの闘いに集中しよう。


 笑うのも泣くのも生きてこそできる話なんだ。今のぼくは死ぬつもりがまったくないんだ。



 ぼくとアルでオークたちをあっさりと殲滅した。死体はそのまま放置して、モンスター部屋から出て、ギガンテスの声がするほうに全速力で走り寄る。


 シールダーさんも、マジシャンの子も、ぼくらに遅れることなく付いてくる。今を時めく冒険者は伊達じゃないことがよくわかった。



 目の前に二体のギガンテスが現れた。やつらはぼくらを探すために、お互いの距離が離れている。


 やった、今がチャンスだ。



「アル、頼む!」


「任せろっ!」


 アルは前にいるギガンテスを無視して、奥のほうにいるギガンテスに目掛けて残り全ての煙球を撃ち込んだ。これでしばらくの間を持つ。



「マジシャン、行け!」


「まっかせなさい」


 ぼくが彼女に教えたイメージの通りに、機関銃がごとくの火の魔法が前にいるギガンテスに撃ち込まれる。これは弾幕を張るだけのもので、その間にぼくはシールダーさんの後ろに隠れて、これから撃ち込むぼくだけの火の魔法のイメージを練り上げていく。


「弾切れよ!」


「おう、下がるぞ」


 ぼくの代わりにマジシャンの子に答えてくれたのはアル。今のぼくは魔法のイメージをより鮮明なものにするため、神経を尖らせているんだ。


 アルとマジシャンの子がぼくとシールダーの横を通り過ぎて、後ろのほうに逃げていく。



「来る、吹っ飛ばされるなよ!」


 シールダーさんからの警告にぼくが返事をすることはできない。


 もう、魔法のイメージがだいぶ固まってきた。


 西洋のドラゴンのような翼のある竜ではなく、長くのびる身体を持ち、巻き付くことができる東洋の龍。これがぼくの魔力で作り出す攻撃魔法だ。



 大きな衝撃がシールダーさんの盾から伝わってくる。彼女は全身の力を持ってギガンテスの体当たりを受け止めて見せた。褒めてあげたいけど今は自分がすべきことに専念しよう。



「あとは頼んだよ!」


 シールダーさんは横に飛び去ると、ギガンテスがぼくの目の前で受け止められたことに驚愕して立ち止まっている。


 そのままにしてろ!


ありがとうございました。

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