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16話目 孤児

「すまねえな、冷血のモヤシ。こいつは二度とあんたの目を汚さないように埋めっとくからよ、それで手打ちにしてほしい」


「あ、ああ。そうですか、うん……」


 埋めるってなに? 想像すると怖くなる気がしてきたので、この人たちに任せることにする。うん、かかわりたくないなあ。



「んでよ、おい、てめえら今ある分だけ全部出しとけ」


 悪党の一人が他の仲間からお金を集めて、皮の袋にいれてからぼくのほうに差し出してくる。


「あんたの連れの慰謝料だ。足りないなら今度持ってくるから今日はこれだけ納めてくれ」


「え? ええ? ああ、うん。あ、ありがとう?」


 硬貨でパンパンと張り詰めるくらいの皮の袋を手渡されてから、これはアルに渡すということで貰っちゃおうかとぼくは考えた。



「しかし、すっげえよな。ハゲタカのイッチョラウをケリ一発でノシるなんてよ、パトルスの兄貴でも無理だぜ」


「おうよ、今日はええもん見せてもらった」


 ズルズルと木の箱の下から引っ張り出された大男はピクリとも動きそうにない。ひょっとして殺しっちゃったかなと今更ながら冷や汗もんです。



「治療、しますか? ポーションならあるんですけど……」


 ダンジョンに入ったときに、キシさんから3本のポーションをもらっているので、1本くらいなら渡してもいいかな?


「いやいや、お気遣いなくていいぜ。死んだら死んだで埋めておくからよ、冷血のモヤシの手を煩わせることはないぜ」


 あう、アウトローの考えることがわかりません。理解もしたくないので追及しないことにする。


「あのですね、ぼくにはアキという名前があるんで、その冷血のモヤシという名前で呼ぶのはちょっと……」


「「へいっ、わっかりやした。アキの兄貴」」


 アキの兄貴って、ぼくに兄はいないよ? 可愛い妹なら一人はいるけど、会いたいなあ。



 悪党たちはぼくに手を振って、この路地裏から全員が姿を消した。ぼくはアルにポーションを飲ませて、受けていた傷を癒させることができた。



「アキ、助けてくれてありがとな」


「いいよ、仲間なんだから当たり前だよ」


「あっ! 帰らなくちゃ、院長先生が心配するよ」


 なにかを思い出したようにアルが慌てだして、尻のあたりにある尻尾が力なく垂れ下がる。


「え? 院長って?」


「そうか、言ってなかったんだ。おれは孤児院の出身なんだ。いまもそこに住んでて、ダンジョンで稼いだお金はみんなのご飯代になるんだ」


「そう、ですか……」


 アルの言葉に衝撃を受けた。なぜアルが必死になってダンジョンで頑張ることもこれで解明した。ぼくがイジメられたことで死のうとしていたのに、アルは孤児院の子供にご飯を食べさせようと自分の命を張ってる。


 命に重さってのはあるのだろうか?



「な、なあアキ」


「……うん、なにかな?」


 考え込んでるぼくにアルが声をかけてくる。よくみると彼はなぜか心細げに見えて、初めて見せるアルのオドオドした姿だ。



「……一緒に孤児院へ行ってくれないかなあ。院長先生、怖いんだ……」


「いいよ。一緒に行こう」


「ありがとう、アキ」


 ついて行くことだけで友達の役に立てるなら、いくらでもするから遠慮はなしだよ、アル。


ありがとうございました。

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