11話目 仲間
「おいおい、聞いたかよ。駆け出しがかませの痩せ犬にポーターを頼んでるんだぜ」
「どっちもどっちでお似合いじゃないか」
「やめとけやめとけ、ダンジョンを舐めてると死に目に会うんだぜ」
周りの冒険者やポーターは嘲笑してくるけど、一向に気にならない。ぼくはこれよりひどい悪意だって受けたことがあるんだ。
「おれはかませの痩せ犬じゃねえ、熱血の猛犬のアルだ!」
犬人の男の子が猛然と周りの声に噛み付いた。だけどより一層の失笑を買うだけの結果になっている。
「熱血の猛犬のアル、ぼくの誘いを受けてくれる?」
笑い声が大きくなっていく中、ぼくはアルに確認するように声を掛けた。アルという犬人の男の子はしっかりとぼくの顔を見てくるが、ぼくの真剣な眼差しに押されたように彼からの返事が返ってきた。
「わかったよ。今日だけだからな、無茶すんじゃねえぞ!」
これでぼくは気に入ったポーターとダンジョンに挑むこととなった。
「お前、弱そうだから稼げそうにないけど、十分の一で引き受けてやるよ」
「いや、命をともにする仲だから半々でいこうよ」
運命を一緒に分かち合う仲間だから対等で立ち向かいたい。それはぼくとしては譲れない一線だと考えてる。
「変な奴だなお前。わかったよ、うまくダンジョンへ潜れたらお前の専属で考えてやってもいいぜ」
「それはありがたいね。よろしくな、アル」
「へっ。お前、名前なんて言うんだ?」
「アキヒロ。アキって呼んでくれたらいい」
「おう。アキ、よろしくな!」
ぼくと熱血の猛犬のアルhs周りが大笑いする中で熱く握手を交わした。マリアーヌお姉さんの言った通り、ぼくは自分の直感を信じぬくよ。
突然、周りの笑い声が一斉に止んだ。
人だかりを掻き分けるように、マリアーヌお姉さんたちがぼくとアルのほうへ歩いてくる。
「アキヒロ、ポーターを見つけたようね」
「はいっ! いいポーターと契約できました」
周りから騒めく声が聞こえてきて、アルは動かない彫像となっていた。
「おいおい、お姫様じゃねえか。あいつ、お姫様の関係者だったのかよ」
「うっそー、騎士団長のキシさまに炎魔神のヤマモトさまよ」
「あれは先手のハルカさまだよな。このメンバーってダンジョン制覇の人たちよな」
「くそっ、ついてないぜ。殺戮姫の知り合いなんて聞いてないよ、あのガキに声を掛けりゃよかった」
色々な声が聞こえてくるけどぼくには関係のないこと。ぼくのポーターはアル一人だけだから。
「ふーん、これは……アキヒロ。あなた、中々いい目をしてるわ。いい子を見つけてきたじゃないの」
うん、マリアーヌお姉さんのお墨付きなら大丈夫。アルは間違いなくぼくにとっての大当たりだね。
「あなた、名はなんていうの?」
「……アル。アルと言います、マリアーヌお姫様」
マリアーヌお姉さんから名前を問われて、どうにか解凍できたアルが震えた声で答えた。
「そう、アルというのね。今日はよろしくね、ポーターを頼んだわよ」
「はいっ! 一生懸命頑張ります!」
マリアーヌお姉さんの声掛けに感動しているアルを見て、ぼくはとても嬉しくなった。周りのポーターのみんなが悔しさのあまりに地団駄を踏んでるけど、ぼくには関係ないよ。
ありがとうございました。




