別れたくない
「今夜は、」男が真顔で切り出した。「君と別れたくない」
「まっぴら」女が唇を尖らせる。
「何だよいきなり」
「それはこっちの科白でしょ」
「ひどいな」さも心外とばかりに男。「それほど浅い付き合いじゃ……」
「そもそも!」女が指鉄砲を男の胸先へ突き付けた。「付き合ってもいないのに言う科白?」
「おいおい」今度は男が尖らせて口。「今さらそれを言い出すかな?」
「“今さら”って何よ?」畳みかけて女。「始めてもいないくせに!」
「ってことは、」ふと男にしたり顔。「始めたいのかい?」
「い、言い出したのはそっちでしょ?」むくれてみせる女の頬に差して朱。「始めたいんなら、そっちからちゃんと手順を踏むもんじゃないの?」
「いや、俺はただ誘っただけだよ」男が示してデジタル・カレンダ――大晦日。「年越し参りに」
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著作者:中村尚裕
掲載サイト『小説家になろう』https://ncode.syosetu.com/n7414el/
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