マガツヒの力
「城に今すぐ行って妖を倒さなきゃ……」
気持ち悪さがまだ抜けない状態で言う日和に対してそれは無駄だと言う禍津日神。
(もう奴らはどこか遠くに行ってしまったようだぞ。まぁ、いたとしても今お前が戦ってもやられるだけだ。まだ戦闘経験が少なすぎる)
きっぱりと言う禍津日神。それもそうだった。まだ戦闘はこれが初めてなのだからもっと戦闘経験を積まないと兵士何人をも簡単に倒していった妖には勝てないだろう。
「……そうですね。でもこれからどうしよう」
雨が降っていたため雲が太陽を隠していて分からなかったがもう日が沈んで夜になってきている。
帰るべき場所は破壊されてしまったので行く所がないのだ。このままでは野宿か……妖がいるかもしれない外で野宿など馬鹿なことだ。そう考えていた日和に禍津日神が、
(ならば神社の中で一夜を過ごせ。雨風しのげるだけでもいいだろう……今から泊めてくれそうな家を探しにいくことなんて自殺行為だしな)
神社に泊まることを提案した。今近くにあるのは神社だけであとは何もない。禍津日神の言うとおり
泊めてくれそうな家を探しに行くなんてことはできない。日和は神社の中で一夜を過ごす提案を受け入れた。さっそく神社の中に入ろうとすると突然、禍津日神が日和に止まるよう言った。
(この妖の邪悪な力を吸収しておく必要がある。我は邪神……邪悪な力を吸収することで我自身の力が増す。そうすれば結界も、何かを吹き飛ばす力が強くなる。そしてお前が受ける加護もさらに強力になる。これから妖を倒したら我が吸収する……いいな?)
力が増すのなら日和にとってもいい事だったので特に気にすることなくそれを了承したこれが禍津日神の企みであることも知らずに……
「布団も着替えもないから風邪を引きそう」
その日和の呟きを禍津日神は聞き逃さなかった。
(我は言ったであろう? 我が憑いているかぎり加護の力で災厄が降りかかることはないと……お前が風邪を引くことはない)
「そうなのですか」
風邪って災厄だったんだ……そう思いながらも日和は壁に寄りかかり薙刀を立てかけるようにして寝ることにした。血で濡れた服で気持ち悪く、寒かったがどうにかして寝ることにした。
「禍津日神……マガツヒと呼んでもいいですか?」
いきなり日和が目を閉じながら言う。
(構わん、戦闘中呼びにくいであろうからなマガツヒで良い)
それが今日の最後の会話となった。