story2:新しい暮らしへ
ある日、モカは現国王に呼び出されました。
現国王とは前国王であるモカの父親のわずか1才下の弟です。
と、言っても誕生日が近い上に腹違いの弟のため、生まれた時期は前国王のわずか1ヶ月後という腹違いというよりはむしろ同い年か双子と言ってもいいくらいの差です。
なので、どんなときも前国王に対抗心を持っていました。ですから、前国王とは仲が良かったものの前国王の息子であるモカや、妹のミリアムの扱いが雑でも現国王に冷たく扱われても、邪魔っ気にされても当然でした。現国王は非常に誰にでも優しい人でしたが、やはり双子同然に育ってきた現国王の闘志は前国王やその遺児に向くのです。
ですから、思いっきり殺されないだけ、感謝しろとでもいう状況でした。
呼び出した現国王は第2家で白の家の人でした。
前国王は黒の家の人間でしたから、色の違いでも、やはり対抗心を隠しきれないようでした。
現国王は、モカにこう言いました。
「これから、蒼の騎士団に行って欲しい。蒼の騎士団で修行をしてくるんだ。殺されそうになっても俺を頼るな。」
モカと同じ、気の強そうな黄金色の瞳を向けて言った国王はそのまま立ち上がり戸口の方へと歩いていきました。「ふああ~。」と、国王職務中らしからぬ大きなあくびをしたあと、彼は、ドアを開けてそれをパタリと閉めました。
「国王さま。職務中にあくびはだめです。」
と、いう大臣の声がドアの外から聞こえますが、それに国王は答えながらも、どんどんモカから遠ざかっていきます。
殺されなかっただけましだと、「ふうう~。」と、モカが肩をなでおろしていると、
ドアがパタリと開いて、
「モカさま…。モカさま。大丈夫ですか…?」
と、いうシフォンの声が聞こえてきます。
「なあ、シフォン。とりあえず、蒼の騎士団に行けばいいのだと思う。」
と、ため息をつきながらモカは言います。
「そ、それでも、ぼ・く・はモカ殿下の自由を尊重したいです…。ですから、モカさまがご自分でお選びくださいっ。」
そのまま、シフォンは部屋を出て行きました。モカは、自分で自分がしたいことを考えました。そして、思いつきました。
「そうだっ。国王に取り入ろう。」