表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リセットリバース  作者: そうしょう
≪北≫
7/19

7、大丈夫だよ

驚愕の中でいち早く我に返ったのはリーティだった。

「死の沼…って、まじで言ってんのかよイアスさん」

死の沼には行ったことがあった。死の沼には恐ろしい魔物が出るという。それゆえに、誰も近づかないのだ。リーティもまた、数年前にエンと馬を走らせたことはあったが、あまりの煙、瘴気に奥まで行くことは叶わなかった。そのため、全員無意識にその場所に行くことを避けていたのだが…

「あ、ある意味安全、かな?」

やっこさんもまさか死の沼を通ってくるとは思わないだろうし。そうエンは苦笑する。が、かなり困惑気味ではあった。

「うん…まぁ悪くない案かな…?」

「姫様それでいいのか?!」

思わずリーティがツッコむと、だって、とばかりにノースは笑う。

「今まで、イアス先生の案で失敗なんてなかったもの」

そう言いきるノースに、リーティは複雑げに、たがしかしその通りで。

イアスの言葉通りであるなら、必然的に本命である死の沼はノースが通ることになるだろう。つまり、それは関所の囮よりも、何よりも危険であるのだ。

そんなところに、行かせたくない。

その思いがわかってか、リーティの握りしめた拳を見て、ノースは少し申し訳なくなった。お互いのことは、お互いがよくわかっていたから。

「イアス先生の案を呑むわ。これが最善だと私が判断しました。また細かいことは近日中にでも言うつもりだから、とりあえず今日はこれで解散ね」


××××××


「リーティ、ちょっと」

「近づくな」

間髪入れずにそう言われ、思わず足を止めた。こちらに背を向けた背中。会議室からそれなりに歩いた廊下には、人々の声が響いてきている。

「わかってる」

リーティは呟く。

「姫様は主だ。主である姫様は、誰よりも先頭に立ち、勝利の一声をしなければならないと、わかっている」

勝つことが、今、皆に望まれていることなのだと。わかっている、自分達はそのために、戦っている。

「リーティの言いたいこと、わかるよ」

「わかってたまるか!!てめぇなんかに…ッ、」

そこで。言葉を、とめた。不自然なぐらい、肩を震わせて。

「……あぁ、そういえば…あの男も、そうだった…何でも、悟ったようにして…。……エン」

ポツリと紡ぐ言葉。自分の名を呼ばれ、エンは「何」と一言だけ返す。


「お前は、姫様を裏切らないよな」


違うだろ。

違うだろ、リーティ。


言えずに、歯がみする。姫様、ではないだろう。

違うだろう…!

思わず、そう叫びそうになって、らしくないと激情を抑え込む。ゆっくりと息を吸い、唇を動かした。


「大丈夫だよ、リーティ。」


××××××


「姫様」

会議室。ノースはそう尋ねる先生に、何ですかと首を傾げた。少しだけ悲しげに笑う。

「貴女は、死んではなりませんよ」

「……わかってる」

そんなもの、十分過ぎるぐらい。

「私は死なないわ。決して死なない。」

「リーティをあまり心配かけさせないように。…彼は、もうすでに壊れた、2度はない」

「…1度目、それは、お母様のことかしら。それとも―――…」

強い、その眼光が南を睨んだ。今まで以上に強いソレ。

どこからか、音が聞こえてくるようだった。何かを奏でる慈しみの音が。

「《南》にいる、裏切りもののことかしら」








裏切らない想いが有る限り、大丈夫。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ