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リセットリバース  作者: そうしょう
Ⅰ 死の沼
2/19

2、序章 南

戦場に澄んだ音が響き渡る。


それはおおよそ、戦場に不似合いな音色であったが、まるで労るような優しい音だった。

「――陣が崩れたな」

ポロン。

音が途切れる。奏でていた男は静かに逃走していく兵を眺めた。

大剣を携えた年二十半ばの青年は言葉を紡ぐ。

「相変わらず、お前の言う通りになったな」

「そう誉めたてないでくれ、王。僕は調子にのってしまうよ?」

ふふっ、とそんな言葉に互いが笑みをこぼす。それから、青年は――王は、大剣を空へ掲げた。

「深追いはするな!!南へ、我らが南へ戻れ!!」

叫ぶ。


遠ざかる貴方の、些細な背中の後押しになるようにと。


××××××


血の臭いが鼻につく。それは彼が何よりも嗅ぎ慣れた臭いだった。

退治していた男は既に影も形もない。あのとき邪魔が入らなければ、あるいは。


聞こえてきた王の声。その声が思った以上に近く聞こえてきていて少しばかり驚く。が、そんなものは些細なことか。

「あーぁー…くそ」

まだ、飢えているのに。

沸き上がる殺戮衝動ともよべるものを圧し殺しながら、両手に持った双剣を逆手に持つ。

そのとき、蹄の音が高らかに響いた。

「――ここにいたのか。」

馬にまたがる女性――は、彼の姿を見つけると手綱を引いた。僅かにそちらを見上げて、ため息をこぼす。

「撤退?」

無言で頷く女性。青年は彼女をあまり好いてはいなかった。青年は嘘が嫌いだった。

――彼女は、嘘つきだ。

「しっかりしてくれ、特攻隊長」

「はいはい。」


馬に乗る彼女が去っていく。その姿を後ろから見ながら、未だ声が届かなかったらしい、状況のよくわからない兵たちに伝えるべく、息を吸い込んだ。


また、決着はつかなかった。


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