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リセットリバース  作者: そうしょう
Ⅰ 死の沼
1/19

1、序章 北

世界は、なんて残酷なのだろうと思うときがある。

あまりにもそれは切ないぐらい、色褪せていく。


決断を、しなくては。


1つ、息を吸う。

堂々と、胸を張って。


「撤退するわ」

いい放つ。側に控えていた男は目を細める。見た目は若く、その瞳には思慮深い色がよくみてとれていた。

少女はいい放った後に、身を翻した。すらりとした細長いレイピアを腰の鞘に収める。彼女の足元には既にいくつかの骸が横たわっていた。そのどれもか斬撃による出血死のようだった。ひらりと白い毛並みの馬に飛び乗り、男を見る。


「煙弾を」


承知しました、そういう男にうなずき、少女は叫ぶ。

吠えるように、叫ぶ。


「総員撤退せよッ!!北へ――我々の帰るべき場所へ!!」


愛しい貴方の元にも、届きますようにと。

そんなことを思って。


××××××


(―――緑色の煙弾)


透き通った空の下、広がる煙に気づく。そう遠くない場所、彼の瞳にはハッキリと映っていた。

戻らなくては。

と、ふいに風が吹く。それは自然の風ではない――無理矢理捻り、反らした頬にピリッとした小さな痛みが走った。

「――くっ」

「よそ見――してる場合なんだ?!」

避けた先、すくうような銀色の太刀を、かろうじて鞘で受け止めた。鞘がミシリと軋んだ音を立てる。目の前に立ちふさがる男が舌舐めずりをした。

向こうは2つの刃だ。手数では勝てない――!

押さえつけたほうとは違う、右の刃で2つめの刃を受け止めた。

ズリィ,と足元が動く。手数だけでもキツイ上に、一撃一撃が重い…!

「て…っめぇ!!邪魔だ…!」

はやく

はやく、戻らなくては。

あの人が、何かあったのかもしれないのだ。

はやく

「俺の邪魔すんじゃねぇよ…殺すぞ貴様ァッ!!」

「はははっ!いい、イイ!殺しあいだ、宴だ!!今日こそ殺す!!」

対面している双剣使いは哄笑し、黒に光る剣を振り上げる。舌打ちと共に、受け身の姿勢に入る。

そのとき。

どこからともなく、光の速さのようなスピードでソレは飛んできた。

寸前で気づいた男はその弾を避けるべく、一瞬だけ注意を逸らした。その一瞬で十分だった。

「――乗って!」

言われずとも!

馬に半ば飛び乗るようにしてまたがり、慣れた手つきで手綱を取る。そのまま、暴れる馬を嗜めつつ走らせた。隣に少しおくれて、一頭の馬が並ぶ。チラリとそちらに目を向けた。

「落ち着いて、姫様は無事だよ」

「うるさい、知ってる!」

「心配だったくせに…」

馬にまたがる青年はその穏やかな面差しを苦笑気味に浮かべて、それからわずかに首を後ろに向ける。右の手は、銃の引き金を掴んで離さない。二人は馬で並走しているが、大分あの場から遠ざかっていた。辺りには硝煙の臭いが漂っている。

「追っては…来ていないね」

ぽつりと呟かれた言葉に、剣を片手に携えなおした彼は眉間に深いシワを寄せた。

「しつっけぇんだよ、あのストーカー野郎…!とっとと戻るぞ」

「…ほんとに、ね。馬には追い付いては来ないだろうけど、…急ごうか

「命令すんじゃねぇよ」

またも苦笑をする青年。


二人を乗せた二頭の馬は戦場の中を走り抜けていく。



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