彼女が胸を揉もうとしたから
「琴音のおっぱいって、大きいよね」
いつも突拍子のないことを言う茜は、私の胸に触れようとしてきたので、その手を叩き落した。
「なに触ろうとしてるのよ」
「だってさぁ……」
口をすぼめながら視線をそらした。
「だってさぁ……じゃないよ。まったく。触られたらどういう気持ちになるのかわかってるの?」
「……気持ちいい?」
額にチョップをするが、それを物ともせずに彼女はふてくされ続けている。
茜がバカなのは昔から知っていた。
考えずにすぐに行動する、人の話を聞かない、思ったことはすぐ口に出す……小学生の頃ならまだ許せたけれど、今はもう高校生だ。もう少し落ち着いてもいいだろうと思う。
そういえば今まで茜の世話をしてばかりで、彼女に対して迷惑をかけたり、困惑をさせたりしたことない。
たまには、茜があたふたするところを見たい。
どうやって、この能天気なおバカ娘を困らしてやろうか。
仮病や嘘なんかは、マズイ。
拡声器のように言いふらすか、仮病にいたっては本気にして救急車を呼びかねない。
どうしようか。
彼女を驚かせる、何か。
ああ、もしかしたらこれはいいかもしれない。
「ねえ、茜」
「なあに?」
「私に触らせてよ、茜のおっぱい」
「えっ……だって私のおっぱい、ちっちゃいよ?」
「いいじゃん、揉ませてよ」
真剣な目をして頼むと、彼女は真っ赤になった。
いつもならそんなことをされても笑いながら許可をする彼女が、そんな表情をするのは珍しかった。
「いっ……いいよ」
目を強く閉じて、セーラー服の裾を軽く持ち上げる。その隙間から、小さなおへそがこちらを覗いていた。
その姿は、かわいさよりも、いやらしさが目立っていて、私の顔はみるみる火照っていった。
「ばばばばばば、ばっかじゃないの!う、うそだし!」
取り繕うようにそう言うと、彼女は真っ赤にした顔をもっと真っ赤にしながら笑う。
「そそそそそ、そうだよね、琴音ったら!」
教室で二人、笑いながら、芽生えた何かをごまかす。
でも、私の中では、茜のおへそが脳裏にこびりついて離れなくなっていた。




