第八話「エンジニア」
「目をつぶって何を考えているんだ?」
後ろからイキナリ声がした、それを聞き、ゆっくりとそちらを振り向く。
「ちょっと思い出していただけだよ、昔のことを」
「昔?どこの昔だよ?」
声の主がすぐとなりに座ってきた。
「砂漠の中の思い出のこと」
「最初のところから思い出してるんだな」
「ちょっと落ち着いたところだからね」
少しの間、沈黙が降りる。
そしてとなりに座っている人がゆっくりと話し出した。
「『もしも神様がいたらどうする?』って、まぁよく聞くような言葉だな」
「安っぽいって言いたいの?」
「安っぽいか・・・それはどうなのかね?まぁいいや」
そういうとその人は立ち上がって、さらに言葉を続けた。
「神様になってどう思う」
その言葉は少し唐突だったが、しかし確かな重みがこもっていた。
「私たちは自分たちのことを『神様』なんて言って良いの?」
「・・・そこかよ」
そういうと、その人は少し悩むそぶりを見せた。
「永遠に違う世界から世界の行く末を見守る人間は十分神様じゃないか?」
今度は私が悩む番だった。
しばらく考えたあと、答えを出す。
「それもそうかもしれないね、それで、神様になってどう思うかって?」
「ああ、そうだ」
再び真剣に悩みこむ。
しばらく考えたが、答えは出なかった。
「とりあえず、こんな無力な神様は無いかなーって」
「それもそうだよな」
その人はそういうと少し笑った。
「またでかいことが起きるみたいだ」
「今度はなに?地球の寿命でもきちゃったとか?」
「なんか、世界中の核爆弾を一斉に爆発させて世界を壊そうとしている馬鹿がいるらしい」
「あはは、それは大変だね、今度こそ世界が滅んじゃうかな?」
「世界なんて簡単に壊せる、だけどな、とっても重要なことなんだが」
「なになに?」
「世界を救うのだって結構簡単なんだぜ?」
「さすが世界の救世主は言うことが違うねー」
「うるせえよ、行くぞ」
「うん」
彼らを見るために、私たちは世界を跨ぐ。
もはやただ見る事しかできない、『彼ら』のことを、そして『ついで』に世界の行く末を。
「ここらの武器っていつから整備されてないんだ?撃った瞬間暴発とかしねえよな?」
今私たちは、秘密基地の武器庫に居た。
イシカが、『あそこに行くなら武器が必要だろう』と言ったからだ。
「たしかムクあたりが暇つぶしでいろいろしてなかったっけ?」
「そうなのか?年がら年中車とかそこらへんの建物の設備を弄繰り回してたきがするんだが」
「車にだって機銃があるでしょう?そこらへんのおかげで武器もいろいろと弄繰り回してたのよ」
「でも確か、あいつはなぜかいつも武器だって言って工具を持ってなかったっけ?」
「あれはあれでここにあるの武器とかの機能を応用して魔改造してなかったっけ?確かコンクリぐらいなら粉砕するネイルガンとか」
「・・・それって工具なのか?」
「工具としての使用方法は『廃棄処分専用』ね」
ちなみに私は話についていけないので、出口のあたりに立っていた。
しばらくすると、作業が終わったのか、二人は私のほうに歩いてきた。
「武器選びは終わったの?」
「ああ、あとは食料とかだな」
「ドンだけ重装備で行くの?」
「一日、二日の食料ぐらいならちょっと携帯食料をつめるだけで十分だろ」
「そういうものなの?」
「そういうものだ、っと、お前にプレゼントだ、これを受け取れ」
イシカはそういうと、私にハンドガンと、妙に重いバッグを手渡した。
「・・・これを私が持ってどうしろと?」
「あっちにいったら俺たちがお前を守りきれる保証は無いだろ?」
「自分の身は自分で守れと?」
「まぁそういうことだ」
「と言ったって、私は銃に関して何も知らないんだけど」
「安全装置やらその他必要なことは教えてやる、まずは・・・」
そういってイシカは私にハンドガンの説明をいろいろとしてくれた。
特筆すべき点をを上げると、そのハンドガンは三点バーストであると言うことだ。
なぜ三点バーストなのかを聞くと、『そっちのが火力が高いだろ?』とのことだ。
そうやって、イシカの説明が終わって、さぁ行こうと考えていると、廊下の奥から足音が聞こえてきた。
ここは日が入らず、しかもここにある蛍光灯はすべて壊れており、数メートル先は暗闇に包まれていた。
イシカは、滑らかな動きで私の前に立ったかと思うと、すぐさまどこかから取り出したペンライトを廊下の奥に向けていた。
そこに浮かび上がった姿は・・・
「・・・うぅ・・・まぶしい、お母さんたちなにやってるの?」
そこにはユウナの姿があった。
後ろのほうから少しだけ息を呑むような音が聞こえる。
イシカは構えをといたが、見えるようにするためか、ペンライトはおろしていなかった。
「なんでここに居るんだ?」
「みんながいないから、ここの中を歩きまわってただけだよ?」
「ああ、そうか・・・それもそうだよな・・・」
イシカはそういうと、何かを考えるようなそぶりを見せた。
「ここに置いていくのが良いんじゃないの?危ないんでしょ?」
私はイシカにそう言ったが、イシカは聞く耳を持たないどころか聞こえていないのかと言わんばかりに一切の反応をしなかった。
私が心の中で、ぐぬぬぬぬ、と悔しがっていると、イシカが意外な一言を言い放った。
「ユウナ、俺たちと一緒について来い」
「いいよー、どこにいくの?」
私は慌てて、イシカをユウナちゃんとは逆の方向に引きずっていった。
「痛い!痛いって!!」
イシカが文句を言っているが、さっきのイシカのようにそれをすべて無視し、ユウナちゃんに聞こえないように小声で文句を言った。
「どういうことなの?危険なところにわざわざ連れて行って」
「まぁまぁ落ち着けって」
「どうやって落ち着けと?」
「まぁちょっと聞いてくれよ、それなりの理由はあるんだよ」
「・・・どういうこと?」
「今ここはゴッドに今襲われているんだ、なにか不測の事態が起きればすぐにでも襲われるぞ?」
「それでも『帰らずの地下室』なんてところに入れるよりはましなんじゃないの?」
「・・・俺はな・・・いや俺たちはな」
イシカは急に声のトーンを落として話し始めた。
そのイキナリの変化に驚き、体が半歩下がる。
「な・・・なんなの?」
「・・・これは単なるわがままかもしれない、だけどな」
「・・・」
イシカが重々しく口を開く。
「これ以上俺はゴッドに俺の仲間をやらせたくないんだよ」
「・・・・・・・・・」
沈黙するしかなかった、その言葉には部外者である私には、その言葉に対する言葉が一切見つからなかった。
私が黙り込んでいると、イシカは後ろを振り向いて言い放った。
「作戦開始だ、ゴッドに復讐するぞ」
鉄製の梯子を降りていき、さらに少し歩いき、私たちはその部屋に着いた。
「これは・・・」
前にいたリーフさんが思わずと言った調子で口元に服の袖を当てていた。
一番後ろにいたユウナちゃんは、この部屋についたとたん尻餅をついて目の端に涙を浮かべていた。
そんなこと考えている私も、かなり驚いており、濃密な匂いに思わず吐きそうにさえなっていた。
唯一冷静なのはイシカで、私たちが立ち止まっていると、イシカだけ早々と『死体』を調べに行った。
そう、この部屋には大量の死体があったのだ。
大量の・・・『化物』の死体が・・・・・・・・・
濃密すぎて味覚まで犯しているのではないかと錯覚してしまう鉄の匂いは、この部屋に入る前から既に漂っており、ここに来た時にはあまりの匂いに今すぐ地上に戻っていこうとしたものだ。
私たちが立ち尽くしていると、やがて調査を終えたのか、イシカがこっちに歩いてきた。
「見事なまでに死体だな、全部四肢の内二つをすべて綺麗に切り飛ばしている」
その言葉を聞いてリーフさんが驚いた声を上げた。
「なっ!・・・誰がそんなことを・・・」
「切断なんかするやつはあいつぐらいしかいないだろ・・・」
そういうと二人は死体のほうを向いた。
「・・・いまさらだけど、ほんとにムクって何者なの?」
「・・・さぁな」
二人はそういうと、死体から目を逸らし、こちらを向いた。
「さぁ行こうか、地獄の始まりだ・・・」
一週間一更新に遅れてしまいました・・・Orz
しかも、今回も早くに出そうと思ってしまい、やろうと思った分ができていない・・・
次回は今回やる予定だったものを詰め込む予定なので、また短くなると思います。
こんな小説でも良いという方は、どうか楽しんでいってください・・・まぁこんな小説じゃぜんぜん楽しめれないだろうけど・・・