第四話「神様」
ドゴッッ!!!!
と、巨大な音が鳴り私は目を覚ました。
あわてて周囲を見渡す。
そこは見慣れた白い壁や、ファンシー系の人形が並べられたりしている棚などが一切無い、緑色のテントの中だった。
横を見ると、イシカはすでに寝袋から出かけていた。
眺めていると、イシカは私に向かって、話しかけてきた。
「お前も早く出ろ!一回外に出るぞ!!」
今までの話し方とは違う、命令形で強い言葉、それに少し驚きつつも、私はあわてながら寝袋を出始めた。
そんなことをしてる間にも、外では轟音がなり続けていた。
「いったい何が・・・」
イシカがそんなことを呟くと、テントが勢いよく開けられた。
「イシカ!だいぶやばい状態になってるよ、リーフは先に車にいってるから、二人も早く」
テントを開けたのはセンコウさんだった、イシカは冷静に、近くにある机の中から・・・
銃を取り出した
足をとりだすだけだった私は思いっきりのけぞり、しりもちをついた。
「いてっ」
「何をやってるんだ、行くぞ」
「は、はい」
私はあわてながら立って、テントの前にいるイシカとセンコウさんと合流した。
私がつくと、二人は会話しながら早足で歩いていった。
「一体何が起きてるんだ」
「たぶんだけど、どっかにまだ廃墟みたいな投げれるものが残ってたんだと思う、ほらアレとか」
そうやってセンコウさんが指差した先には、そこそこ大きな岩がおちていた。
「クソっ、もうそんなものは無いと思ってたのに」
「とりあえず今は、逃げることが先決だよ、どうするんだい?団長」
「決まってるだろ、探索で見つけた新人にさらに俺は団長だ、こんなところでのたれ死んでたまるかよ」
「オーケー、車で死ぬ気で逃げるってことだね、分かりやすくていいね」
二人がそういって話を終えるて、テントをまがると、そこには軍用の車のようなものがあった。
車の中は椅子が二つあり、その後ろも少しスペースがあり、恐らく四人ぐらいは入れるだろう。
しかし特筆する点は、その車の後部にはガトリングガンのようなものがあり、今はその黒い銃身を静かにおろしてていた。
近くによっていくと中からリーフさんが出てきた。
「イシカ、準備は万端、いつでも出れるよ」
「分かった、状況は?」
「ボンベは6個中4個が潰された、もうそろそろ一気に攻めてくると思う」
「急いで逃げるか」
「だね、それで団長さん?配置はどうするの?」
「俺とコイツが席に、お前ら二人はゴッドに攻撃してくれ」
「・・・配置の理由は?」
「お前らが優先するのは自分たち二人の命だろ?サハラのやつらの団長である俺と、少しでも希望を見出せる新人をお前らの運転にかけるわけには行かない」
「分かったよ、正しい判断だね、要するに僕たちは生き残りたければ撃ちまくれと」
「俺たちのためにもぜひそうしてもらいたい、いやだといってもさせるけどな」
二人の少しトゲのある良い合いが車に到着したことにより中断された。
イシカが言った場所にそれぞれが行く、どうやらセンコウさんがガトリングガンを撃つらしい。
それならリーフさんは?と思ったが、どこから取り出したのか、スナイパーライフルを取り出していた。
「それじゃあ行くぞ」
深夜の砂漠を一台の車が走り始めた・・・
※※※※※
「さっきのってどうなの?」
後ろで銃をとりだしたリーフが話しかけてきた。
「さっきのって?」
「さっき話してたこと、要するに私たちは信用できないって?」
「ああ、そのことね」
新人の前ではかっこつけたかったんだろうけど、そこそこ長い付き合いの僕にはイシカの本当にいいたかった言葉がなんとなく分かる。
第一基本的にイシカは自分が団長だからとかは言わない、あんなことを言ったのは新人のためだろう。
しかしそれを言っても・・・
新人の命は私たちにはかけられないと・・なるほど
となりそうなのでイシカがかっこつけたせいで言わなかったことを言うことにした。
「正直後ろのほうが大変に決まってるでしょ」
「え?でも・・あれ?確かに、運転よりこっちのほうが大事って前イシカ自身が言ってたきがする」
「・・・リーフもしかして僕がいろいろ言われてたから、ちょっと怒ってなかった?」
「うっ・・そっそんなことは・・・」
「まぁ、良いけど、とりあえず今は・・」
ドガァ!!!
話していると真横に、岩が落ちてきた、どうやら逃げられてることにきづいたらしい。
後ろのほうで新人が驚いた声をあげたりしているが、今は無視。
投石は続き、次々と車の近くに岩が突撃してくる。
イシカも頑張って蛇行運転しているものの、ここは砂の上、いつ滑ってもおかしくない。
しかし、それから2,3回投げられたあと、投石はすぐに収まった。
「リーフ?」
「分かってる現在確認中」
この中で一番遠くを見渡せるのはスナイパーライフルを持ってるリーフだ、さっきのことで心配だったからリーフに話しかけたけど、大丈夫だったようだ。
少しだけ後ろを向く、そこには不安そうな顔でイシカを見ている新人の顔があった。
希望の無い人類の生き残りたち、もはや考えていることはどうやって復興するかではなく、死ぬまでどれだけ楽しめるかだった。
そんな中での生き残り、最後の希望
砂漠の上を歩く人間に生き残りはいない、それは今までで十分に分かっている。
要するに、生き残りがいたということはまだ生き残れる場所があるということだ。
ここで絶やすわけにはいかない光、それは、この命ごと犠牲にしてもという意味で。
たぶんリーフに言ったら怒られるだろう、淡く口元を笑いの形にしながら、機銃を力強く握った。
※※※※※
「やばい!!」
そうリーフさんが大声で言ったのは、サイトに目をつけてから数秒もたっていなかった。
「どうしたの?」
冷静に答えるのはセンコウさん、さっきあんなことを言われてたのに、顔つきはとてもかっこよかった。
「アイツ私たちが置いてった物を丸めてグシャグシャしたりして、でっかいボールみたいなのを作ってる!!」
「さすがにここまでは届かないんじゃないかな?さっきからアレだけ投げて当たらなかったんだから」
「そうだったら良いんだけど・・・」
二人の会話に少しだけ安心する、センコウさんの言葉は特にだ、さっきから飛ばしまくってるが、まったく当たってないから大丈夫、自分に言い聞かせるように何回も心の中で唱える。
「いつ投げてくるかをちゃんと見てくれ、全力でハンドルをきる」
再び車の中がぴりぴりした空気に包まれる。
「大丈夫だ、絶対に生き残らせる」
イシカが私に励ましの言葉を送ってくれる、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・・・・
「来たっ!」
リーフさんの声が鳴り響く。
「何処かに捕まれ!!」
椅子の頭の部分に両手で捕まる、姿勢のおかげで投げてくるであろう方向を向くことになっていた。
音が近づいてくる、私たちの車はもはやさっきとはぜんぜん違う方向を向いて走り出している、丸められたものも違う方向に飛んでいるのが見える。
やった!!
心の中で歓喜する、このまま相手の姿も見ずに逃げ切れる、そんな希望的な未来が脳裏に浮かんだ。
しかし・・・
ドッッッッッ!!!!!
さっきからなっていた轟音を数倍にした狂音、しかし音はさらに続く。
ズサササササササササ
砂漠に隕石のように投げられた丸められたものは周りの砂を飛ばし上げ、急カーブをして速度が落ちた私たちの車を包み込む。
「うっわああああ」
センコウさんが悲鳴を上げながら前方に身を投げ出してくる。
幸い被害にあったのは後部のあたりだけだった。
「これ動かせるの!?」
「さっきからアクセル全快!あとは祈るだけだ!!」
「こんな時代に神様か・・祈れる教会ももう無いのにね」
「そこ、妙なツッコミをしない」
そんなことを言い合っていると、遠くからリズミカルに巨大な音が迫ってきた。
「あれはなんですか?」
「ゴッドの足音だろうな、もうそろそろヤバイ」
「そっそんなぁ」
「あ」
「どうしたセンコウ」
「砂が動いてる」
「え?」
後ろを見ると遠くから足音が聞こえる旅に少しずつ砂が揺れた。
「こんな時代にも祈れる神はいたようだな」
「邪教信教にはまるきは無いよ、単体で世界を砂漠化させるレベルの神様なんて特に」
ゴソッ
今まで溜め込んでいた分を一気に放つようにかなりのスピードで車が砂の中から抜け出した。
「うわっ」
おかげで体が揺り動かされて頭を打ちかけた。
「逃げるぞ、アイツはどこまで来てる!」
「射程圏内、撃つよ!」
リーフさんが少し後ろに移動してから銃を構える、センコウさんもガトリングガンを握った。
音はさらに迫ってくる、少しだけ体を乗り出し、私はその姿を見た。
「見たか、アレがこの世界のゴッドだ」
その姿は少なくとも私が知ってる地球上のどの生物にも似ていない奇妙な姿をしていた。
簡潔に表すなら、翼を取り人型になったドラゴン、むしろ私のつたない語力ではそれ以上に表せれなかった。
ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!と連続して走りよってくるその異常生物、しかもその速さは車を超えているらしく、一歩踏み出すたびにこちらに近寄ってきている。
しかし近寄るにつれ明白になってくる中で私は奇妙なもを見た。
その異常生物のわき腹には巨大な鉄の針が突き刺さっていた。
「あの針はなんですか?」
「アレか、俺たちにもよく分からない、しかし初めてあいつを見たときからアレはアイツのわき腹に刺さっていたのは確かだ、RPGでも戦車でも傷一つつかないアイツにダメージが通ってる唯一の存在、アレがなにか分かればもしかしたらゴッドを殺すこともできるかもしれないな」
「でも倒せてないってことは、アレがなんだかさっぱりってことですよね」
「痛いところをつくな、でもアレがなにか分からず止めをさせなくても、アレだけで使い道はあるんだ」
「どういうことですか?」
バン!
私が疑問符を浮かべると、再び大きな音が鳴った今度はすぐ後ろ、どうやらリーフさんが撃ったらしい。
「当たり」
リーフさんがかなり得意げにスコープを覗いていた。
もう一度ゴッドのほうをよく見る、すると・・・
「わき腹をおさえてる?」
そこには手で針が刺さっているあたりを抑えている、なんともかっこ悪い姿があった。
「僕も撃ち始めるけど良いかな?」
「ドンドン撃ちまくれ、遠慮はいらない」
「元からする気もないけどね」
ガトリングガンが回転を始める、すぐに銃弾の雨が降ることだろう、しかし今はそんなことより・・・
「アレはどういうことですか?」
「さっき言っただろう?アレが使い道だ」
「具体的にには?」
「あそこはアイツの唯一の弱点なんだ、あそこ以外を撃っても意味はないし、逆にあそこを撃てたら体が鈍くなるんだよ」
もう一度後ろに身を乗り出す、そこにはガトリングガンを撃ってるセンコウさんとスナイパーライフルを撃ってるリーフさん、そしてその奥に撃たれまくってるヤツの姿があった。
さっきまでは一歩ごとに車に迫っていたヤツは、今は追いつくのがやっと見たいな感じになっていた。
「おお!」
思わず口から声が漏れていた、さらにイシカが話しかけてくる。
「見えてきた、あれが俺たちのアジとだ」
その言葉に導かれるように、今度は前を見る。
そこは少なくとも世間一般的に言われるようなアジトではなかった。
まず、すぐに見えてくるのはさまざまな店のようなもの、さらに奥に行くにつれて、だんだんと巨大な建物や、ガスボンベのようなもの、さらにそれらの中心には、巨大な塔のようなものが立っていた。
ついさっきまで砂に埋もれて殺されそうだったとは思えない、そこに見えたのは紛れも無く生存への希望だった。
再び後ろを向く、ヤツはやっぱり近づけていない、このままだったら生き残れる。
それは彼女だけではなく、サハラの人たちにも希望が迫ってくる瞬間だった。
確かに彼女は過去から来た人物で、ほかに人がいるわけではない、しかし新たなる住民は確実に彼らに希望を見たらしてくれるだろう・・・
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
この世界が、優しく完全な希望を許せる世界だったのなら。
ガツッ!!
と、センコウの近くから音がしたのは彼女たちが希望を見出していたところだった。
「!?ッ・・何が」
「どうしたのセンコウ?」
「リーフはとりあえず撃ってて!こっちはどうにかするから」
「どうしたんだセンコウ?」
「たぶんさっきの砂が詰まったんじゃないかな?まったく動かない」
「ヤツのほうは?」
その言葉と共に、リーフ以外の人間がゴッドの方向を向く。
そこには猛然と、さっきまでの鬱憤を晴らすように走ってくる、ゴッドの姿があった。
「ヤバイ・・」
車の中の彼女はヤバイと本日何回言われたか数えるほど思考がショートしていた。
※※※※※
再びアイツが車に迫ってくる、真横にいるイシカに話しかける。
「まっ間に合うの?」
「ギリギリ・・てか余裕だぜ!!」
「本当に!!」
「ああ!間に合わないほうに全力でBETする!!」
「何でそんなに自信満々なの!?」
「じいちゃんにやばいときは笑えといわれているんだ」
「ほんとに?」
「大嘘」
「もうヤダ・・・」
頭を抱えたくなるが、今はそんな場合ではない、後ろを振り向く。
「センコウさんどうにかなりませんか?」
「エーとね~確かここら辺に・・・あったあった」
「それはなんですか?」
「RPG」
「うわーい、それで大丈夫なんですか?」
「当てれれば、何とかなるかも」
センコウさんがRPGを構える、緊張が再び車の中を包む。
心臓が壊れそうなほど激しく鼓動する、横にいるイシカもかなり神妙な顔をしている。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
緊張で手がしびれる、のどが暑く悲鳴をなげかける。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
時間間隔が極限まで引き伸ばされる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
ゴッドの手があとちょっと伸ばせば届く距離まで近づいてくる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
センコウさんの指が、静かに、確かに、着実に動く。
ドンッ!!!
RPGの弾頭が飛び出す。
暗闇の中に、炎を吐き出しながら、それは・・・・・
確実にゴッドのわき腹に突き刺さった!!
「やった!!」
「ふぅー疲れた」
「さすがセンコウ!!」
「よしこれで・・・」
ゴッドが苦しみながらこっちに走ってくる。
しかしもはやあの速さでは私たちに追いつけないのは明らかだった。
車の中を安堵が包む、後ろの二人がこっちを向いている。
その中、私だけが後ろを・・ゴッドを見ている中で。
ゴッドは・・その足に力を込め・・凄まじい勢いで・・・・・・
飛び出してきた
「危ない!!」
反射的に叫ぶ、後ろの二人が、いっせいに後ろを見る。
「センコ・・」
まず動いてのはリーフさんだった、リーフさんは自分より後ろにいるセンコウさんに向かって手を伸ばすが・・・
トンッ
優しく、それをセンコウさんが突き飛ばした。
リーフさんの顔が驚愕に変わる、そして・・・
「頼んだよ・・・」
その言葉にどこまでの感情が込められていたかは分からない。
しかし、センコウさんはそれだけを言うと・・・
次の瞬間には姿を消していた。
ゴウッ!!という音さえどこか遠い世界のものに聞こえていた。
センコウさんに突き飛ばされしりもちをついているリーフさん、その奥には最後に力を使って疲れてしまったのか、ぐったりと倒れているゴッドの姿。
それだけが、私の視界に納まっている。
リーフさんが虚空に向かって手を伸ばす。
「セ、ン・・コウ?」
口からは暗闇に消えそうなほどか細く呟く・・そして
「センコオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
深夜の砂漠、そして車の中、さらに私の頭の中を声が鳴り響く・・・・・・・・
という訳でセンコウさんクランクアップお疲れ様でした~
セ「え!?ホントにもう終わりなの?」
嘘ですよ嘘
セ「だよね、よかった~」
あなたには死者としてこれから次回予告担当になってもらいます。
セ「・・・嘘だよね?」
本当です
セ「・・・異論は?」
許せません
セ「・・・・・台本は?」
ここに つ台本
セ「次回、秘密基地 ドウカヨロシクオネガイシマス」
お読みくださった皆さんありがとうございました。
今回は個人的にいろいろできてとても楽しかったです。




