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第三話「学校」

「寝てるやつらはさっさと起きろー退屈なビデオが終わったぞー」


その一言で私の意識は覚醒した。

普通の木の椅子と木の机、前にはしまわれた映写機の光を映すやつ←名前知らない、さらに黒板。


地面を見ても普通にタイルが張ってあった。

「・・・?」


「起立」

「ちょ・・」

何がなんだか分からない中で、今までの条件反射をほぼ頼りに私は立った。

「きをつけ、礼」

「「「ありがとうございましたー」」」

私が混乱してるうちに話はどんどん進んでいく。

号令と共に、みんながご飯を食べるためにそれぞれ散開していく中、私だけ一人、席にゆっくりと着いた。



・・・考えてみたらおかしいのはあっちのほうだ。

バイオウィルスで地球が砂漠化?千年後の世界?サハラの放浪者?

そっちのほうが明らかにおかしい、ただの夢、ちょっと妄想がすぎるだけのちょっとした夢。


しかし、私の脳裏にこびりつくのは砂漠の暑さ、ほかの人たちの笑い声、トランプの結果、食べたご飯、そして快適とはいえない睡眠。

どれほど否定しようとしても、それらが頭にずっとちらついていく。

あそこで合ったことのすべてを、私は一切否定できないのだ。

どん詰まりの思考、それこそ砂漠の中を何の当てもなく歩いていくような・・・


考えるより確かめてみたほうがいい、私はそう思うと机に突っ伏した。

こうやって寝てそして何も見なければただの夢、もしそうじゃなければ・・・


ごんっ!!


「いっ・・たい!」

「痛いじゃねえよ、なに昼休みにさらに人が呼んでるのに寝ようとしてんだよ」

私は殴られた頭を抑えながら、声がした方向を見る。

「なんだ三十路か」

「三十路いうな」

ベシッ

もう一回たたかれた、今度はチョップ。

「あんたはさっきから何回たたいてんのよ!馬鹿になったらどうするの!!」

「逆ギレしてんじゃねえよ!だいいち補習常連者が何をいまさら言ってんだよ!!」

お互いににらみ合う、そして激しい言いあいが始まりそうになったそのとき。


「はいはいそこまで、飯食いながら話なせ」

私と三十路野郎が声がした方向を向く、そこには私のさんに・・いや二人いる友達のうちの一人が立っていた。

「おい、今さり気に失礼なこといってなかったか?」

失礼とは失敬な、お前のことなど友達の頭数には入れない。

てかどうやって心を読んだ?

「そうだよ、仲が良いことはいいけど、それで昼休みを潰しちゃダメだよ?」

さらにもう一人の声がする、今ここに居るやつらが私の高校内での、というか私の人生単位での唯一の友達だ。


「俺たちは先行ってるから、早く来いよなー」

そういって二人たちはすぐに行ってしまった。

あの二人は、私たちとは別のクラスで、いつも教室の前で待ってるが、今日は私が来なかったから、ここまで来たのだろう、悪いことをしてしまった。


二人のうちの一人、先に声をかけてきた男子はフレイム。

性格は最近の男子高校生、みたいな感じで私たちの中では一番友達がいる。


そして次に話しかけてきたのがゆきひな。

性格は基本明るめだが、人見知りが激しく、私たちの前以外ではあまり喋らないので、私と同じくぼっち系女子。

しかし、この二人に関しては一つだけ言わなければいけない事がある、それはこの二人が絶賛リア充カップルなことだ。

まぁ、昔から四人とも長い付き合いだから驚くことではない。

幼馴染と彼氏彼女の関係になるなんてリアルではそうそうないが、はたから見て悪い気はしない。


そして最後に、私の真横に居る男子、私をいきなり叩いてきたやつだ。

名前はヤマト、今言った三人の中でも最も古い付き合いで、非リアの帝王、類は友を呼ぶとはいうが私は関係ない、ほかの二人はリア充で私は非リアでヤマトも非リアだが関係ない。


なぜか頭の中でそんな友達紹介をしていると、ヤマトが話しかけてきた。

「はぁ、ほら行くぞ、お前もさっさと弁当もってこい」

「そうだね、あの二人を待たせても悪いし・・・」

私はそういうと席を立ち、弁当を取ってきた。

途中ヤマトが「お前のせいで遅れてるんだろ!!」と言った気がするが無視。


私とヤマトは二人でいつもの食事場所に向かうために廊下を歩いていた。

するとヤマトのほうから話しかけてきた。

「さっきの授業は退屈の極みだったな、脱落者が何人も出てた」

「私も脱落したよ、てかあんたはしなかったの?」

「ん?ああ、いや、オレモネテタゼ」

分かりやすくヤマトの口調が変になる、ここまで長い付き合いだとこいつが嘘をつくときの特徴さえ覚えてしまった。

私はため息をつきながらヤマトの制服のポケットに手を当てた。

「おまっ、やめっ!」

予想通りの感触が帰ってくる、この硬さは・・・

私は制服の上から手をどかす、ヤマトはヤマトで観念したように、頭をかいていた。

そんなヤマトに対して私は・・・


「またアイフォン持ってきたのかお前は、また一緒に補習に行くか?」

と言った。

「うるせえよ、いちいち授業なんか聞いてられるか、ノートだけ書いてあとで復習すれば良いんだろ?」

「どうせ復習なんかしないくせに何言ってんのよ」

「お前だって寝てたじゃねえか、とやかく言われる筋合いはねえよ」

「あのときだけ寝てただけです、ほかの授業は聞いてますー」

「それなら俺だってあのときしか聞いてねえし、ほかの授業は聞いてるし」

「それならって・・・」


私たちはそんな言い合いをしながらいつもの昼食場所である、中庭についた。

少しあたりを見渡すと、木陰にフレイムとゆきひなが座っていた。


「よっす、遅れてスマン・・ってかなんで俺が謝ってるんだ?」

「今日は日陰なんだねー」

「お前は謝れよ!!」

「ああ、まだ暑いからなぁ、弁当中ぐらい涼しくなりたい」

「お前も無視かよ!!」

「二人とも早く一緒に食べよー」

「ありがとーじゃあ私はここら辺に」

「なんだ、これは新手のいじめなのか?・・・」


私たちはそんなことを言いながら、二人の対面に座った、しかし・・・

「フレイムこれ食べるー?」

「おお!食べる食べる」

「はい、あーん」

「おう、あー・・・」

ギシッ!

箸が軋む音をたてた、前言撤回、やっぱり見てて良いものではない、先日まで同じぼっち系女子だったのにいつの間にかゆきひなはリア充になっている。

そういえばゆきひながフレイムに告白するためになんかいろいろおせっかいをしてた馬鹿がいなかったっけ?まったく何をやりたいんだ、私へのあてつけか?一体私に何の恨みがあるんだ

もちろんこのおせっかいな女子は私である。


横をちらりと見るとヤマトが箸を握りつぶさんばかりに手を握り締めていた。

そしてヤマトが私のほうを向く、大丈夫だこんなこといつものこと、二人がこうなってから一体何日が立っている、もちろん打開策もある。

私はヤマトと軽くアイコンタクトをすると、二人のほうを見た

「そういえば二人ってさっきの授業なんだったー?」

「ん?私たち?さっきは物理、途中で何回も寝そうになっちゃった」

この二人は基本何もなければ二人の世界だが、こっちが話しかければこうやって話を聞いてくれる。

これを使って、この二人の世界を強制的に断ち切る、無慈悲なようだが、私たちが生き残るためにはこれしかない。


「俺は物理どっちかって言うと好きだから大丈夫だったけど、ゆきひななんて授業中ずっと寝そうにしてたねぇ」

「あれ?ばれちゃってた?」

「ああ、どうしてるのかなー?って思って」

やばい、また二人からリア充オーラが・・・

箸が再びいやな音をたてる、再びヤマトとアイコンタクト。

作戦は簡単、一気にこっちに引きずり込む、私たちが食べ終わるまで二人にはあっちの世界には行かせてやらない。


「俺たちの授業なんだけどさ!すごく暇な授業だったんだよ」

強引な言い方、しかしこれぐらいしないと二人はまたあっちに行ってしまう。

「私なんかすぐに寝ちゃってさー、それで・・・」

それでヤマトが寝てないぽかったからおかしいなーと思ったら、こいつまたアレを持ってきてたんだよ。


そう続けようとした私の口が、止まった。

頭の中にあのときの砂の光景が強く思い出された。

ヤマトが何をやっている?というような目で見てくる、ほかの二人も疑問符を浮かべる。

それらを受けて私は・・・


「それでそのとき不思議な夢を見たんだよ」

少しでも胸のもやもやが消えればと思い、三人に素直に話すことにした。




「へー面白い夢だねー」

「お前は授業中にどんな夢を見てるんだ」

「一日分まるまるの夢かぁ、少し羨ましいかもなぁ」


三人がそれぞれの反応を返してくる。

普通の世間話としては上出来だろう、しかしそれとは別の私の思惑は一切解消されなかった。

むしろ、話していくたびに次から次へと思い返されていき、むしろ胸のもやもやは深くなっていた。


私が話してる間に私たちは昼食を食べ終わり、それからも少し時間がたっていた。

私がここに来るまでもそこそこ時間があったのでもうそろそろ、昼休みも終わりだろう。


みんなもそれを考えたのか、誰からともなく立ち上がっていった。

「うーーん、それにしても今日は面白い話しを聞けてよかったー、ありがとうねー」

ゆきひなが伸びをしながら私にそういってくる。

「いやいや、ただの夢の話だから、それと今日は遅れてごめんで、前の授業があんなのだったから眠くって」

「そんなのぜんぜん気にしないよ?どうせ昨日も遅くまで起きてたんでしょ?」

「アハハハ・・4時に寝ました」

「お前は生活リズムをちゃんとしろよ」

「ハハ、今度から気をつけるよ」

「そのセリフこの前も聞いた覚えがあるぞ?」

「ヤマトがアレを持ってくるのをやめたらちゃんとするよー」

「うっ、それは関係ないだろ!」

「さっさと帰るぞー、授業に遅れたくないだろー」

ふと時計を見ると授業が始まる直前だった。

「やっば!急ぐぞお前ら!!」

「遅れたのはヤマトたちのせいだぞ?」


そんなことを言いながら、私たちはそれぞれの教室に戻っていった。




ホームルーム中、これが終われば部活に所属していない私は家に帰れる。

しかし、いつもだったらハイテンションで帰宅後なにをしようか考えてる頭は、今日はまったく別のこと考えている。

もちろん、あの砂漠の光景だ、やはりどうやっても離れないのだ、まるで頭に直接貼り付けられてるかのように、何かを考えるたびに思い出してしまう。


私が再び深い思考の渦にもぐろうとした直前、ヤマトが話しかけてきた。

「よくあんな話を考えたなお前は」

「あんな話?」

「ああ、昼休みの話だよ、ほんとにあんな夢を見たのか?」

「・・・なるほどそういうことか・・」

どうやらヤマトは昼休みにしたこの話をほんとかどうか疑っているらしい。

まぁしょうがないことではあるだろう、夢にしてはあの話は具体的すぎた、イシカたちとの会話やトランプで何をやったか、果てはその結果まで細々と話したのだ。

嘘だと思われてもしょうがないだろう。


「本当だよ?本当にあの時そんな夢を見たんだ、ヤマトも寝てたら何か見られるかもよ?」

「別に見たかねえよ、暑さでぶっ倒れる夢なんて」

そうやって話していると、前からプリントが来た、お互い最後尾なので後ろに配ることはない、なんとなくで私はそのプリントを眺めた。


「社会科見学?」

「変わってるよな、高校生にもなって社会科見学って」

「だねぇ、そういえば小学校のころってバスの中でヤマトは吐いてなかったっけ?」

「っな!!そんなことねえよ!乗り物チョウツヨイシ!!」

だから私に対してお前の嘘は八割見抜ける。

私たちはそんなことを話しながら、暇なホームルームを過ごした。




午前一時、私はベッドの上で横になっていた。

いつもだったらこの時間でも、十分起きているが今日はいつもとは違う。

あの夢が気になるのだ、逃げるようにPCで遊んでいたからこの時間まで持ったが、やっぱりどうやってもあの砂の光景からは逃げられず、こうやって早くに寝ることになってしまった。


思い出す、というのは間違いだろう、ほかにやることもなくはっきりと考え始めたというのが正しい。

笑い声、トランプのシャッフルする音、イシカの寝顔・・・


いずれか意識は深い深い眠りに落ちていった・・・

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