第十一話「ルート探索者」
道は薄暗い・・・が、こんなこともあろうかと、ライトを持って来ていたため、そんなに気にならない。
ここがどこか・・・は、『協力者』のおかげで、大体分かる。
化物に会ったら・・・さっきから会っているが、片っ端から掃除している。
正直俺たちの探索は安定していた。
まぁ、俺たちが安定していても、ユウナがアウトだったら元も子もないのだが。
そもそも、なぜわざわざユウナを地下に行かせたりなんだりメンドクサイことをしたかというと。
本来なら地上に待機させるのが大体安全なのだが、ゴッドの強襲からは、化物たちが活性化するらしく、単純に地上にいるだけじゃ、完全に安全とは言えない。
一番の安全の確保の仕方は、誰か護衛を立てること、そして、護衛として一番の適任は、人類最強のムクだった。
だから、俺はムクにだけ『協力者』などの話をして、協力を仰いだのだ。
しかし、ムクの性能が一般以上であることは、他の団員にも知られている。
だとしたら、最初の突入のときにムクをわざと抜けば、他の団員から不況を買うどころか、場合によっては先陣部隊作戦が出来ない可能性がある。
そして、全員で突入した場合、最初の大群から確実にユウナを守れる自信は無い。
そのため、俺たちが立てた作戦は、最初の三つの通路の内の一つ、先が二つに分かれている道の両方に護衛をすることの出来る人物を置くことだった。
左側は俺とリーフ、そして右はムクだ。
そしてさらに俺の『誘導』が上手く利いたらしく、ユウナたちは『最も安全』であるムクのほうに向かったのだ。
などなど、水面下の動きなどさまざまなことがあり、足枷もいなく、さらに動き回るのに申し分ないレベルの人間がそろっているこの二人ならば、次にすることは決まっている。
探索だ
ここの地形などは大体知っているが、ここがどんなところなのか、一体何をやっていたのか、そのほかゴッドの正体や撃退法など、必要な情報がいくつもあるのだ。
『協力者』は、確かに強大な存在ではあるが、そうであるためにいろいろな縛りがあり、詳しい情報はここで調べろといわれた。
特に、『協力者』が昔使っていた研究室を詳しく探せといわれていた。
そして、今俺たちがいるのは、個人研究室密集地帯という名前のところだった。
名前のとおり、扉がそこそこの間隔で廊下の両サイドに並べられており、その扉の上のほうに、名前の書かれたプレートがつけられている。
恐らく『協力者』の研究室もここにあるだろう、俺はプレートの名前を注意深く見ながら次々と歩みを進めていった。
「その『協力者』とやらは信用できるの?」
この作業に飽きたのか、リーフがそんな言葉を言っていきた。
「『協力者』から教えられた情報に今のところ一切の間違いは無い、それに、信用しなければ俺たちがやれることも無くなる」
「そんなので良いの?」
「『そんなの』ぐらいしか頼れるものがないんだよな」
「そもそもイシカたちは何をしようとしているの?」
「企業秘密だ」
「どこの企業よ」
「じゃあ個人秘密だ」
そんなことを言ってるうちに、俺は『協力者』の名前が書かれているプレートが付けられている扉を見つけた。
「ここだ」
「どうする?二人で中を調べる?」
「いや、お前はここで見張りを頼んでも良いか?」
「元々探索とかは苦手だから良いよ、ちゃんと探してきてよね」
「当たり前だ」
俺はそこまで言うと、扉を開け中に入っていった。
扉の中、要するに研究室には、普通な大きさのベッドと、机の上においてあるパソコン、そして本棚程度しかなかった。
俺は迷いなくパソコンを点けてた、電力がまだ通ってるのだろうか?パソコンは問題なく起動した。
少しだけ待つと、パソコンはパスワード入力画面を映した。
『協力者』の言葉を思い出し、パスワードを打ち込んでいく。
パスワード
1245678
数字の1~9を、3と9を抜かした数字、それがこのパソコンのパスワードだった。
なぜこんなものを選んだのか本人に聞いたが、はぐらかされてしまった。
パソコンの中にあるデータを探って行く・・・
「これか・・・」
そのうち、自分が知らない、知っておきたい情報が書かれたところを発見した。
地下研究所について
主に公に出来ない研究を扱う研究施設。
誤って入ってきたもの、その他スパイと思わしきもの、外の人間に情報を漏らしたものは、牢獄に監禁後その処分を決める。
本研究所の管理人は107社最重要機密研究である、GBウイルス発見者であり、GBウイルス最終責任者である、エルク氏です。
GBウイルス
生物の力を爆発的に上昇させることが出来る新種のウイルス
しかし、その一方で元の段階で一定以上の力を持っていない場合、ウイルスの力に耐え切れずに死んでしまいます。
【人体実験の結果】
ウイルスを人間に投与した場合、成人男性の8割以上が死亡、女性・子供は全て死亡、生き残った成人男性は総じて普通の成人男性より高い身体能力を持つ人の遺伝子で作ったクローンでした。
結果から言って恐らく単純な筋力などで変わるようです。
生き残った被験体は強力な再生能力を持ったいる上に、人間としての知能を有しておらず、さらに人の形を取らぬ化物となっており、四肢のうち二つ以上を吹き飛ばすこと以外に対処の仕方はありません。
現在はウイルスを人間が耐え切れるものに改良するようにしています。
「ん?」
俺はとりあえずそこまで読み終わり、この項目を閉じようとした・・・が。
「分かりやすいようで分かりにくいな・・・」
画面をさらに下にやっていくと、しばらくの空白の後、さらに文章が続けられていた。
【私見】
あのウイルスは人間が持ってはいけないレベルのものだ。
そもそもあれを発見してしまったのは俺達なのだ、その償いは俺たちがしなければならないだろう。
しかし、なぜかは分からないが、最近のエルクは焦っている。
今の状態でウイルスを売ったりするようなことをすれば、最悪本当に現代でバイオハザードが起きる。
ウイルスから生まれる化物たちの爪によって殺されたものは、ウイルスに侵食され、化物になる。
対抗手段が必要だ、二重にも三重にも作戦が必要だ。
そこで【私見】は終わられていた。
いろいろ試したが、これ以上は何も書かれていないようだ。
さらに何かないかと探していく。
すると、データの最下層の辺りに、一つデータがあった。
VSウイルス
GBウイルスを破壊できるウイルス。
実験は、研究のためと言って貰ったGBウイルスを使用している。
研究メンバーは、『GBウイルスを抑えるためや、もしものときの特効薬として』と言う名目で集めている。
【生成方法など】
GBウイルスは特殊な性質を持っている。
それは、生物に寄生していない状態のGBならば、ある一定の音波を当てることによって、お互いを共食いさせることが出来るのだ。
そして共食いをさせあった結果生き残ったGBウイルスは、硬化し、見た目だけなら鉄のようなものになる。
さらにその破片同士を近づけると、お互いが融合し、三万匹ほど融合させたら、手のひらサイズの鉄針になる。
この硬化したGBウイルスをVSウイルスであり、このVSウイルスはGBウイルス、およびGBウイルス感染者に突き刺した場合、その体をずたずたに食い破り、組織を崩壊させる。
人間レベルの感染者ならば三万匹ほどで足りる。
そこで『VSウイルス』に対する記述は終わっていた。
まだ何かないかとひたすら探ってみたが、これ以上は見つけることが出来なかった。
「はぁ、撃退方法は見つからないか・・・まぁ、ウイルスのことが知れただけでも良かったとしよう」
そうやって俺はパソコンをシャットダウンしようとした。
瞬間
「!?」
画面がイキナリ真っ暗になった。
電源でも切れたのか?気になって俺はパソコンのコードを目で追っていった。
そこで俺は衝撃的なものを見た。
コードが・・・切れていたのだ、途中で。
慌てて銃を持ち臨戦態勢をとる。
しかし、どこにも生き物の気配はなく、もちろん扉が開いたりすればすぐに分かる。
今度は上を見上げる、しかし、化物が入ってきたような跡はない。
と、すればだ・・・
俺は再びパソコンを見る。
それはノートパソコンのように充電できるパソコンではなく、デスクトップ型の、常に電気が必要なものだ。
パソコンのコードは切れていた、しかし、俺がここに来てから切れたものではない。
要するに、このパソコンは既に電気が無い状態で動き続けていたと言うことだ。
多少のことでは揺るがないと思っていたが、ここに来て明らかな物理法則とかからかけ離れた異常を目の当たりにすると、さすがに怖気が走る。
どうするべきかと悩みながら、パソコンを眺めていると、ふいに真っ暗な画面に白い文字が浮かび上がった。
「これは?」
次々と浮かび上がっていく白い文字を目で追っていく。
『現在の状況、その他いろいろなことは把握している。
ゴッドを倒すためには、生前自分が最後の手段として設置した、タワー最上部にある電波受信用の鉄 針と偽って設置した、VSウイルスを1千万匹使ったものを使用する必要がある。
鉄針自体は質量すらほぼ存在しないと言う異常な状態になっているが、タワーから引き剥がすため に、特殊な装置を使って鉄針を途中で切り取る必要がある。
その装置は、この机の引き出しにしまってある。
ロックはもう解除してある、しかし、もし盗られた時のために、施設自体に細工をしてある。
それは、装置が取られた場合、施設自体を超強力な壁で閉じるものだ、本来なら取られた直後に閉まる ものだが、施設自体が衰えていることもあり、全力で走れば間に合う程度に調整してある。
準備はよくなったら、装置を取れ。』
その文字は全体を表示してから数秒後に消えていった。
「・・・リーフ」
「どうした?」
「話すことがある、入ってくれ」
「分かった」
俺はリーフに何があったかを話した。
「いいか?」
「ええ、終わらせましょう」
俺は、机の引き出しを開け、その中にあるアタッシュケースを眺めた。
「これか」
「たぶん、中にまだ何か入ってるのかな?」
「恐らく・・・」
アタッシュケースに手を伸ばす。
最後のミッション、これが最後、全てを終わらせる。
俺はアタッシュケースを掴んだ。
今回は少し少なかったですね。
夏休みということもあり、今まで異常に頑張ろうとしているものの、自分が思ったのの八倍以上自由な時間が無い・・・
まぁ、そこらへんは置いといて、今回はこれからの行動を示す、みたいな感じです。
サハラ編もとうとう大詰め、どうか、見守ってやってください。




