終章:ツグナイ
俺の言葉を聞いた桜花は、目を丸くした。
「え……?」
「俺も桜花も、罪を重ねすぎた。これ以上罪を重ねてどうなる?」
俺は真っ直ぐに彼女の目を見据える。
その目からは先程までの輝きはすっかり失われていた。
「こんなつまらない世界はぶち壊したほうが面白いじゃない、そうでしょう?」
桜花が必死に説得を始める。
以前の俺だったらこの言葉で彼女と同じ道を歩んだかもしれない。
だけど、俺は変わった。
彼女と契約したあの日から。
俺は彼女に向かって、こう吐き捨てた。
「そんな面白半分で世界は壊されていいものじゃない。日常はそんな簡単に壊されていいものじゃない!」
「隼……」
「俺が能力を得た後も変わりたいと願ったのは何でかわかるか? たしかに、最初はもっと日常を変えたいと思っていた。だけどな、もう違う……俺は、日常に帰りたかったんだ。こんな狂った人生を変えたかったんだ!」
勝手に目から涙が滴り落ちる。
「親友を殺して、間違った方法でその恋人を自分のものにして……だけど、その恋人も死んだ。間違った方法で得られた結果に意味はない。この今の俺達の関係だってそうだし、桜花が言うように世界を壊したって、それは偽りの結果だ! 間違ってる!」
「でも、この世界じゃ私は生きられないの……狙われるから——」
「桜花が狙われるようなことをしたんだろ」
俺は冷たく言い放つ。
「ただちょっと特別な力をもって生まれたからって調子に乗って……大人しくしていれば普通の少女として人生を送っていけたのに、それを自分でぶち壊したんだろ? 結局は自分の欲望に負けた結果がこうなってるんだよ!」
桜花は……何も言えなくなっていた。
もううつむいてしまって目を見ることもできない。
「だけどさ……」
俺はそんな桜花の頭を優しく撫でながら続ける。
「同じなんだよな、俺もお前も。たくさんの人を殺してきた……欲望に身を任せて」
手の平に感じる髪の毛のサラサラとした感覚。
ああ、あの“取引”に応じた時点で俺も桜花と同じだ。桜花のことを1方的に責める権利なんて俺にはない。だから——
「桜花を独りになんかしないさ」
「え……?」
桜花はパッと顔を上げる。
だが、その顔はすぐに曇った。
これが俺の、罪滅ぼしだ。
「俺たち、共犯者……だろ?」
ほんの数秒前まで髪の毛の感触を感じていた俺の手の平には、冷たく硬い、栓の抜かれた手榴弾が握られていた。
大和、遥奈……俺も今、そっちに逝くよ。
俺のこと、許してくれるかな……?
全身に桜花の温もりを感じながら、俺は爆音と爆風に包まれた。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
少し読みづらかったかとは思いますが、自分なりに精一杯頑張ったつもりです。
そこで、今後の参考とするために皆様から批評を頂きたいのです。
なんでもいいので具体的に書いてくださると嬉しいです。
では、今後も頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。
えむ