1/13
序章:マジョ
ほんの若干ですが、残酷な表現と、性的な表現を含んでいる場面があります。
本当に苦手な方はお気をつけください。
「まったく……役に立たないわね」
私は目の前に倒れていた青年に吐き捨てる。
連絡が取れなくなったから様子を見に来てみれば、この様だ。
「これじゃ全然楽しめないじゃない」
鮮血を垂れ流しているその青年に思い切り蹴りを入れる。
骨の折れる音が聞こえる。
だが、その肉体は衝撃で吹き飛び壁に叩きつけられても、ただそこにあるだけだった。
よく見ると、顔面はグチャグチャに潰され、腕は1本しかなく、心臓があった場所にはポッカリと穴が開いている。
私は今いるこの狭いアパートの1室を見渡す。
元は白かったと思われる壁は飛び散った血で赤く染まっており、この部屋に1つしかない窓は割られていた。
「……ったく。ターゲットには逃げられるし、最悪ゥ……」
私はつぶやきながら部屋を後にした。
その時、遠くからパトカーのサイレンと思われる音が近づいてくるのが聞こえた。
「もっとマシな男、いないかしら……」
私は、鼻歌交じりにその場を離れた。