俺のアパートに、凄腕の除霊師がいるらしいんだってよ〜ほのぼのコメディ〜
数ある中から作品を選んでいただきありがとうございます!ほのぼのコメディです。
ゔぉおぉ〜}(「`・ω・)「
ドアの呼び鈴が鳴る。
客が来たことを知らせた。
昭和レトロな重厚感のある木製調度品に囲まれた喫茶店。
今では珍しい木枠に収まった彩色豊かなステンドグラス。
大崎賢二は、友人を見つけると真っ直ぐ向かっていった。
「史郎、久しぶり」
そう声をかけられた黒川史郎は、振り向いた。
艶のある黒髪は、薄水色のネルシャツの襟にかかるくらい。
初対面では“大人しい”印象。今では“冷静”。
(二年ぶりに会うけど、史郎は全然変わってねぇなぁ)
目線を素早く動かす史郎。
「やぁ、賢二⋯⋯随分、変わったね」
言葉を少し詰まらせた。
それもそのはず。
黒地のTシャツには大きな髑髏、それに棘のようなスタッズ。
黄色の短髪に、黒いボタンみたいなピアスの賢二。
「髑髏についているの羽?」
「翼! パンクで格好良いだろ?」
満足そうに鼻の穴を広げている賢二は、パンクロックバンドに入ったばかり。
いつもの調子の史郎を見て感心する。
(やっぱり史郎は腰が据わってるな。こんなに俺が変わっても、いつもの態度なんだな)
肩の力が抜けた賢二と史郎は、それぞれの身の上話に花を咲かせる。
賢二は最近イメチェンをして今の格好に。
バンドではギターを弾いている。
「お前の魂はギターを弾いていれば十分伝わる」らしい。
だが、最近皆に内緒で、“ある事”をしている。
史郎は大学でオカルトサークルに熱心に誘われているらしい。
二年間、熱心な誘いを断られているのにそれでも諦めないようだ。
「史郎は幽霊が見えるんだろう? それなら向こうも熱心に誘うだろ」
「違う、僕は声が聞こえるだけ」
そうだった。
史郎は昔からの幽霊の声が聞こえるらしい。
冷静沈着な雰囲気の史郎は、幽霊にモテるらしい。
何でも、メンヘラっぽいことを言う幽霊が絶えないらしいのだ。しかし、本人はあまり気にしていない様子。
「ここらへんはどうなの?」
賢二も住み始めて数ヶ月、この場所に興味を持つ。
史郎は誰かと話しているのか、賢二とは違う方向に顔を向けて相槌を打っている。
「えっそうなの?」「大変だね」と世間話をしている雰囲気。
賢二は、ソフトクリームの乗ったコーヒーゼリーをスプーンでつついている。
ソフトクリームをスプーンで口にいれると、史郎と目が合った。
「最近、ここらへんの幽霊が減っているみたい」
意外な言葉だった。
口の中にひんやりと広がる甘さに相槌が遅れる。
「除霊師かな、夜な夜な何か唱えているんだって。“うるさい音”というか⋯⋯幽霊でも怖い声らしいよ」
その言葉に、口から噴き出す前にソフトクリームを飲み込んだ。
「なんだそれ。それを話した幽霊はなんで成仏していないんだよ」
「⋯⋯いろんな幽霊の話を総合すると、そうらしい。この近くにいる幽霊たちも一部除霊に遭ったのか、腕がないやつが増えたらしいよ」
「こえー!」
「しかも独特な音程がついているみたいで、高度な除霊なのかな?」
その話を聞いて、賢二は“ある事”を思い出す。
(そういえば、家でこっそり作っている曲にもそんな歌詞があったな。
『魂を引き裂け♪
腕が千切れようとも〜♪
残った指先だけでも魂を伝えろ♪』
この身が無くなっても、ハートに残る魂を伝え続けろ〜♪
ゔぉおぉ〜。
おっいいな。後で歌詞に加えよう。
デスボイスで早く叫びたいぜ)
賢二は上の空だった。
「じゃぁ、ここらへんの幽霊は、その凄腕除霊師に除霊させられているわけだ」
「うん、なんかこの近くのアパートの方なんだって。⋯⋯“緑荘”って知ってる?」
テーブルのスプーンとグラスが甲高い音を立てた。
考えるよりも先に賢二の体は、テーブルを叩いていた。
「緑荘!? 俺が住んでるアパートだよ。ボロアパート」
長年の使用により階段も手すりも塗装が大きく剥げて錆びついている。
二階建てのボロアパート。
史郎の目が大きくなった。
動揺しているように見える。
「じゃぁそこにいるんじゃない? 賢二は知らないの?」
ソフトクリームを食べる手が止まる賢二。
「いや、あのアパート、俺しか住んでないよ」
「えっ?」
一瞬、寒気がした気がした。
幽霊が体を通り抜けたらこんな感覚になるのかもしれない。
居心地悪そうに首筋を搔く賢二は、薄っぺらい笑顔を張り付けた。
「最近、越してきたのかも」
(やべ、俺、うるさくしすぎたかな。早くバンド仲間に作った曲を聴かせたくて、毎晩のようにギターで弾き語りしてるからなぁ)
「なんだぁ、賢二はうっかり屋さんだね」
史郎は肩の力を抜いて、アイスコーヒーのストローに口をつけた。
(俺の言葉もこんなにすんなり信じてくれる⋯⋯懐の広さというか⋯⋯それが幽霊にもモテるのかな?)
「なぁ、この後、俺のアパート来いよ。
凄腕の除霊師に会いに行こうぜ。
それからよぉ、俺バンド始めてから曲作ってるんだ。良かったら聴いてくれよ」
「僕も会ってみたいかも。
それに賢二の歌なんて初めて聴くなぁ」
賢二は、残ったコーヒーゼリーを乱暴にかき込んだ。
「酒、奢ってやるから、この後コンビニ行こうぜ」
「僕お酒飲んだことない」
「二十歳になったばっかだろ? 俺は数ヶ月前にもう解禁してるんだ。先輩が飲み方を教えてあげよう」
「えー、飲みやすいのがいいなぁ」
大学生らしい話をしながら会計を済まして店を出ていく。
マスターは渋い声でお礼を言った。
「マスター、またな」
「ありがとうございましたー」
二人の背中を見送るマスター。
「あらら、今日は賑わっていると思ったら全員幽霊だったのか。二人に付いてっちゃってるけど、夜中によく聞くデスボイス、あいつだったのか?
⋯⋯また客が減っちゃうよ」
お読みいただきありがとうございました!
今夜は大変なことになりそうですね。
賢二のデスボイス、近所迷惑で通報されないといいですが(^_^;)
ゔぉおぉ〜}(「`・ω・)「




