表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイブマン・イレギュラーズ  作者: 尾沖泣栗
7/25

オペレーション・アルトゥーイズム

誤字脱字そのうち、投稿ペースやばい

俺の名前はフレデリック。王都フレスタットと孤城レアルタリアの狭間にある小さな農村生まれの男だ。

産まれつき目の良さと身軽さが売りで野盗や獣退治で村を守って生計をたてていた。

そんなかでも武勇伝といやよく分かんねぇ尻尾が蛇になったライオン?を倒した事だ。見かけねぇもんだったけど、ありゃぁ死闘だったぜ。

そんなわけで左右二つ隣の村まで名前が売れてる結構な有名人にもなってな。

実際、王都の騎士団からスカウトを受けたこともあるんだ。

……まぁ、断ったがな。え?なんでかって?そりゃ、ホンモノと出会っちまったからよ。

ソイツらはボロボロの男とヤケに気品のある少女の二人組だった。ある日村に来た怪しいソイツらを怖いものなしだった俺は監視気分でつけて回った。それも朝から晩までな。

変なことはしてないか?しても格好良く防いでやるぜって。そんなお気楽な尾行の、何気ない瞬間だった。

飯を食う時に少女がスプーンを手からこぼした。咄嗟に落ちたスプーンを拾おうとしたんだろうな、少女は身を捩ったがソレが裏目に出て、弾かれたスプーンは逃げるように跳んで行った。

座ってる男じゃ間に合わねぇ、かくいう俺も走り出して間に合うかどうか。飛び込むような形で地面を滑って、運が良けりゃ指に触れるかもなんて手を伸ばしながら考えた。そして、滑りきって目をあけた頃……手の中にゃスプーンはなかった。そんで、地面にも。止まってたんだ。弾かれたスプーンは空中で、二本の指に挟まれながら。顔を上げた先でボロボロの男が嬉しそうに口元を歪めてこっちを見ていた。


「安心いたしましたぁ。お兄様、善いお方だったのでございますねぇ〜。」


褒められたんだか貶されたんだか……どちらにせよ、その顔を見て悟ったんだ。俺は所詮大海どころか空の青ささえ知らない井のなかの蛙だったんだと。

すっかり自信を砕かれた俺は騎士団のスカウトも蹴って、逃げるように村をあとに……めっきり腐っちまって今じゃ賭博場でお山の大将を張ってる。何処で間違えたんだと思う夜もあるが、ちっぽけな自尊心を守れるのは自分より弱いやつがいるところしかねぇんだよ。


って思ってたのによぉ!!!


「紹介します。こちら、当賭博場で最も強い出場者。フレデリックです。」


「ふむ、コヤツがか。」


何やら変な空気がすると思っていた矢先に扉が叩かれ、オーナーと共に入ってきたのは長身の……なんだ?亜人なんだろうがかなり人に近い。腕が四本ある種族なんざきいたこともねぇ。


「ヒバナだ、よろしく頼む。」


「っぉ、ふ、フレデリック、だ。よっ、よろしく。」


差し出された分厚い手に手を重ねる。成人して曲がりなりにも鍛えている手がまるで子どもの手のように包まれた。


「ヒバナ様はお前と戦いたいと願っている。……わかってるな?」


いつにもまして不気味な右目が圧をかけてくるが、首を縦に振れるわけねぇ!!


「っあー……いや、その……旦那。」


あの日感じた感覚を、向かい合っただけで突きつけられた。此方の理屈に当てはまらない強大さが冷や汗となって、感じ取れなかったものが感じ取れるようになる、末端に染められていく感覚。そして、例外なくソレは絶対零度を思わせる寒気を含み冷徹に弱者を切り捨てる。


「フレデリックといったか。」


「ッ!は、はいっ!」


圧倒的な強者。もはやそこに個はなく、悠然とした山々を前にしたような自然的な恐怖に包まれる。ただ眼下に収まっているだけで、近づけば近づくだけ身を覆い尽くす神秘的な威圧。相対するのではなく、ただ飲み込まれるだけ。


「手合わせを、願えるか?」


生物としての核が違う。


「……そっれは、その。」


しかし、そんな山々を登りきれたらと思わない訳もない。夜、眠る前に考えるのは何処で間違えたか。そして、いつも辿り着くのはあの場で男と戦わなかったこと。あそこで、あの時に恐怖を飲み込んで触れていれば、違った何かがあったかもしれないと。


「いっ、良いぜ、受けてやるよ。」


燻った自尊心が危険信号を淘汰した。


「感謝する。」


なんで、アンタが嬉しそうな顔してんだよ。


「もしもし?シディっち、聞こえる?」


「聞こえているであります。」


羽に声をかければ間髪入れずにシディの声が帰ってくる。


「ヒバナっちがオーナーを連れて別の部屋に向かったんだけど、ウチからじゃよく見えなくって今見える場所の捜索中。何か気をつけることある?」


両翼を使い、空をとんでしまっているから羽の通信が少しやりづらい。


「報告ありがとうございます。引き続きヒバナの動向が追える場所を探してください。見つけたら早急にマップと照らし合わせてヘカーテに指示を。」


「りょ!試合は?」


「ローディアスが2回賭け、2回とも当てているであります。かえって容疑者の候補が増えるので、捜査の撹乱を期待できます。」


脇見飛行のため、注意がそれて言葉が足らなかったみたいだ。


「じゃなくて、シディっちのほう!大丈夫?」


「はい、予め伝えている通り是は最も適した戦闘スタイルを使用できます。成功率は揺るぐことなく、寧ろ皆のサポートのおかげで成功率はじわじわと上昇しているであります。」


「オッケー!!上手く言ったら皆で美味しいご飯たべようね!」


「返済と馬車の用意が再優先であります。」


明るい声と無機質な声が宵闇で交差する。


「噛み合ってんだかねぇんだか。」


けど、触れ合っちゃいる……か。


「おぅ、聞こえるな?ヘカーテ。」


「あっルーシフェルさん。はい、聞こえてますよ。」


「ヒバナとオーナーが部屋を移動した。どうにも元々の部屋じゃ試合会場が見えてたらしい。」


「だから連絡が来なかったんですね……。どうしましょう?移動したほうがいいですか?」


目をつむり、思考を巡らせる。最も良い形を現状に落とし込むため。


「……いや、作戦変更だ。」


椅子から腰を上げて、なけなしの硬貨を机に置いて立ち去る。


「まず、ヒバナをローディアスの送迎に回すプランから変更だ。ローディアスの迎えをヘカーテに頼みたい。」


「ヒバナさんの時間稼ぎをいっぱいに使うってことですか?」


「ザッツラ〜イト!ヒバナには存分に楽しんでて貰う。可能なら、俺達が撤収するまでな。」


闇が濃くなる住宅街に背を向けて、酒の匂いが強まる街路へ歩を進める。


「シディさんの参加報告は妨害しましたけど、流石に参戦のときにオーナーからの指示がないと怪しまれませんか?」


「そこでオレだ。」


「え!?まさか向かってきてるんですか?」


飲んだくれを尻目に、千鳥足の肩を透かして目に見えてくるのは宵闇を裂く熱と金の匂い。


「ヘカーテが倒した奴らの服をかっぱらって、偽のシナリオを流す。」


光りに包まれた石仕立ての建物を回るように歩き、明かりが少ない所から茂みに足を入れる。


「なるほど……。でもそうしたら通信はどうするんですか?」


「羽をそっちに飛ばした。悪いが、俺の仕事が終わるまではヘカーテが通信を維持してくれ。」


「うぇぇ!?わっ、私指示なんてだせませんよ!?」


暗闇で横立っていた男達から服を剥ぎ取って、上から纏う。あくまで体裁だけありゃ十分。


「ノープロブレムだぜ、ヘカーテ。絶対なのはチヨコからの報告だけだ。チヨコにはシディが最低でも3試合終えるまでは見張らせておいてくれ。3試合終わったあとはすぐにシディの回収のスタンバイだ。イージーだろ?」


「チヨコさんに、三回……。ソレは分かりましたけど、私は何時ごろにローディアスさんのもとへ向かえばいいんですか?」


ゴーグルを胸ポケットにしまい込んで、髪をかき上げる。


「今すぐに、だ。ローディアスと一緒にシディの試合を見届けてくれ。」


「いっ今すぐ!?そっ、その逃走用の妨害工作はどうするんですか?ローディアスさんと合流しちゃうと難しいと思うんですけど。」


鏡はないが、まぁきまっているだろう。


「シディはチヨコと、ヒバナは一人で。俺ぁチヨコ達が飛んでった後に逃げる。ヘカーテはローディアスと一緒に逃げろ。工作は要らない、曲がりなりにも義勇兵だしな、俺ら。」


「とっ、当初の作戦とだいぶ代わりましたけど……できるでしょうか?」


「問題ねぇよ。なにせ、オペレーション・仲間優先(アルトゥーイズム)だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ